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『岸辺露伴は動かない』を見た

※内容のネタバレを含みます。



大学生の頃に『ジョジョの奇妙な冒険』に出会い、例に漏れずどっぷりとハマりこんだ。
個人的には4部が最も好みで、次点が2部。勿論どの部もそれぞれに魅力的で非常に良い。バオーや魔少年ビーティーのような初期の作品も含めて、荒木先生の作品は何度見ても面白いと思う。

そのジョジョ4部の中でも高い人気を誇る『岸辺露伴』を主人公としたスピンオフシリーズ『岸辺露伴は動かない』。なんと2020年の年末にて、これが3夜連日の実写ドラマ化に至った。
漫画の実写化と言われて全く身構えない方ではないのだけれど、興味がないと言っても嘘になる。今回は好奇心が勝った。ただ、放送時間は娘の寝かしつけの時間帯だったので、あくまで録画に留めた。
それを、ようやく消化したのでこのnoteを書いている。えっ、話題が今更すぎる?もう2021年の1月も終わろうとしている?そんなことは私も分かっている。子どもの面倒を見ながら、1時間の録画番組を消化することがこんなに大変だとは、出産するまで知らなかった。尚、2歳まではテレビは見せない方がいいとかなんとか聞く点は、最近はかなり無視の方向に入っている。やってられっか。
目的もなく、無意味にぼーっとテレビをつけることまでは、流石にしないけどさぁ。

余談ながら、丁度出産でバタバタしてた頃に金ローでやってて録画だけした『名探偵ピカチュウ』、あれも今だに消化できずにいる。
産んだら観ようって、楽しみにしてたんだけどなぁ。んぐぅ。


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『岸辺露伴は動かない』シリーズは漫画は勿論、小説も発売中だ。
今回のドラマに使われた話は3作。
第1話『富豪村』は漫画の1巻から、
第2話『くしゃがら』は小説から、
第3話『D.N.A』は漫画の2巻から、といったストーリー構成のようだ。

私は漫画の1巻は購入済みだったので、『富豪村』のみ内容を知っているなぁといったところ。とはいえ、読んだのが随分前だったので、結構うろ覚えになってきたところも多かった。
良い機会なので、漫画はもう一度読み返した。面白い。


『富豪村』
漫画家・岸辺露伴(高橋一生)の担当編集・泉京香(飯豊まりえ)が謎に包まれた別荘を買いに行く話。
原作では京香はこのストーリーのみのキャラクターだが、ドラマでは3話連続での露伴の相棒(※役には立たない)となる。

その他いくつか原作から変えてきた展開を見せるが、あくまで原作をリスペクトした上での改変を感じさせる範囲だったので、あまり気にはならなかった。(あれっ、この展開先に使っちゃうの?そしたらこの後どうする?)というワクワク感は、私のように漫画の内容を先に知っているファンへの配慮だと思っても良いだろう。
あの場面、絶対「だが断る」使うと思った。脚本の人も絶対どこかにねじこんでやろうと思ったんだろうな(笑)。

「その場でマナーを指摘するなんてマナー違反」は、それ言っちゃうとこの富豪村の解説役がいなくなっちゃうし、この試験自体が成り立たなくなるのではとも思うけど、よしよく言った感もあるので及第点。

泉京香、いい感じに頭ゆるめの若いお嬢さん感が出てて良かった。あれで、原作のキャラビジュアルをちゃんと踏襲して作られてるんだから凄い。門番の子ども役も、漫画を知ってる上でドラマを見ても違和感がない。ジョジョワールドのキャラデザって結構特殊な造りや衣装なことが多いのに、よくもまぁあれだけきっちり仕上げてきたなと感心する。
見事見事。



『くしゃがら』。
漫画家仲間(というと、多分露伴先生は露骨に嫌な顔をするけど)の志士十五(森山未來)が、ある日ひょんなことから『禁止ワードリスト』を手に入れる。その中にあった『くしゃがら』という単語に、段々と十五は取り憑かれていく。

個人的に、この『くしゃがら』は一番面白かったし、怖かった。番組終了後にEDクレジットで小説版が原作であることを知り、購入を検討した程度にはぞくぞくした。
まず、森山未來の怪演が大変良い。ちょっと(うわ、いるわこういう感じの先輩)とか思い出す程度には現実にいそうな感じなのに、ジョジョらしい動きというか、漫画に登場する様子がそのまま想像出来るような演技をしてくれている。露伴が見た目にクール(中身は案外熱い)で傲慢なキャラクターなのに対して、十五は見た目も中身も暑苦しく、自由で素直なキャラクターであるという対比もいい(尚、どちらもそこそこ迷惑な傲慢さ・自由さを持っているので、実は共通点も多い)。
『禁止ワード』という、露伴の『本』という能力との相性の悪さも最悪で良かった。荒木先生は作品作りをする際、「主人公をピンチに陥らせて、それを乗り切る為の行動をし、その結果かえってもっとヤバイことになって……を繰り返して、最終的になんとか乗り越える」といったことをされるとおっしゃっていた(昔、大学の文化祭に講師として招かれていた時にお話しされていた。残念ながら直接お目にかかることはできなかったが、あまりにも人気の講師として呼ばれてしまった為、複数の教室を開放してスピーカーで流していたのに参加することが出来たのだ。あれは至福の時間だった)。
この物語はその意味で、すごくその荒木流の物語作りに沿っていたと思う。この後どうなるのか、どうすれば乗り越えられるのか、そんなハラハラドキドキがずっと続いていた。

後でもっかい見たいなこれ。
映像としてもとても良かったし、やっぱり小説後でポチろうかな。
番組が終わった後も、しばらく尾を引いてぞわぞわした。最高。



『D.N.A』
2話の出来の良さに対して、3話はなんというか、実はイマイチ腑に落ちていない。

全話を通して出てくる、平井太郎(中村倫也)というキャラクター。泉京香の恋人役なので、多分完全オリジナルの役だ。事故で記憶を失い、露伴先生の言葉をそのまま借りれば「ちょっと頭がふんわりした」青年。中村倫也が演じることで、「ミステリアスなイケメン」枠として物語に君臨する。

この不思議ボーイが一体どういう意図をもって全話に出演し、何故視聴者にそのキャラを植え付けてきたんだろうとワクワクしながら見てきたんだけれど、なんというか、脚本家はこの3話目をやる為だけに1話2話を作ったんじゃなかろうか、引いては脚本家は岸部露伴の物語が描きたかったのではなく、『中村倫也というイケメンを推し出したかった』がゆえに今回の3日間を作っていたんじゃなかろうかと疑わしくなってくる。
1話・2話の中で見えてくる「おっ、これはちゃんとお好きな人が作りましたねw」がなかったら、多分そう断定してた。危ないところだった。

ストーリーとしては、事故で夫を亡くした片平真依(瀧内公美)と、5歳の娘・真央(北平妃璃愛)の物語。
真央は生まれつきのオッドアイ・言葉を何故か逆さまに話す・積み上げられた布の部屋の中に潜り込むなど、異常を感じさせるところが多く、真依は真央をなるべく人目に付かせないように、隠すようにしてびくびくと生きている。
その真央が太郎と接触し、物語は展開されていく。

……のだけれど、『子どもが布の中に潜り込みたがる』って、割と普通じゃないかしら。母親が心配するような異常ポイントとしては正直弱いのではと思ってしまうし、人目に付かせたくないならあんなフリフリの衣装着せてやるなよとも思う(ただし荒木作品として漫画のキャラに落とし込んで想像すれば全然違和感はない。周囲の人の衣装が割と普通なだけに、あの衣装めちゃめちゃ目立つんだよなぁ)。
疑問に思ってちょっとネタバレ検索をかけたんだけど、どうやら原作では5cmくらいのしっぽが生えてるとか、常に足元が濡れてるとか、もっと不可解ポイントが多いらしい。逆にオッドアイではなさそう。ふーん?

そんで、この話、イマイチ解説が足りない気がする。
「オッドアイ?逆さ言葉?遺伝だね、普通の子だよ」でバッサリされても「えっ」って感じだし、結局途中で真央ちゃんが消えたのはなんだったんだろう。スタンド能力?真央ちゃんの?お母さんの?『お母さんが真央ちゃんを隠したがった』を『お母さんが無意識にスタンドを発動させてた』という説明だと認識していいのかなぁと思ったけど、どうも原作ではあくまで真央ちゃんのスタンド能力で出たものらしい。ちょっとわかりづらい。
わざわざ「ギフト」と言い換えたのは、スタンドを知らない京香に聞かれても大丈夫なように的な考慮なんだろうか。あれ、独り言だっけ、心の声だっけな。心の声だったらちゃんとスタンドって言ってほしかったけど。どっちか忘れちゃったけど、やっぱり違和感あったなぁあれ。
そんで本同士のおててを繋いでみんな仲良くなりましたハッピーエンド、もどうなんだろう。あのスタンド、そんな能力あったっけ。内容的には原作の方もそんな感じのエンドには近そう?なんだけど……うーん、こっちもちゃんと原作買わなきゃダメかな。1巻しか買ってないんだよ、私。

多分3話でやりたかったのは、『中村倫也イケメェン……』と『立体絵本のギミック』の2つだったんだろうなと思ってる。
後、先の2話に対してあんまりハラハラドキドキサスペンスっていう感じでもなかったので、あまり刺さらなかったというのもある。1話はVS神、2話はVS言葉そのものという『やばい相手』だったのに対して、突然のキズナ物語はちょっと拍子抜けしてしまう。露伴の役どころが『ゲスト3人を本にして立体絵本として繋げました』だけで、その能力以外であまり露伴の必要性を感じさせなかったのも悲しい。あの立体絵本をやりたいがゆえだろうけれど、ぽんと1冊の本に変えられてしまったのも、なんだか安っぽくて嫌だ(ただ、京香の本だけ異様にペラかったのはふふっとなった)。1話2話でやったみたいに、人のままパラパラっと本として読める形の方が絶対に良かった。「人目につく場所だから一気に本化したのでは」とか「予算の関係では」とか色々言われてるけども。あんな場所でつなげる絵本出してる時点で目立つは目立つんだよな……うーんうーん。
Twitterで言ってた人いたけど、2話で十五先生を本にして読む時の露伴先生、世界一セクシーな読書ポーズで最高だったな……。



3話はやや納得いかなかったという点はさておき、全体的にはとても面白かった。『漫画を描く前の準備運動』もちゃんと取り入れてくれたの、めっちゃ評価したい。後、EDのクレジットに必ず櫻井孝宏を放り込んでるの、中の人のこだわりが強すぎて笑ってしまった。物凄く目立たないところにそっと潜り込ませてくるんじゃない。
(※櫻井孝宏さんは、アニメ『ジョジョの奇妙な冒険第4部』での岸辺露伴役の声優さんです)

そんで高橋一生がめっちゃ露伴。マジで露伴。
元々荒木先生の画風はリアル寄りだけど、それはそれとして「うわー、露伴先生が生きとる……」っていうしっくり感。2.5次元は色々言われやすいと思うけれど、私的にはキャスト大正解でした。有難う高橋一生、めちゃめちゃ良かった。


またやってほしいなー。
録画、一旦見たら消そうと思ってたんだけど、2話の『くしゃがら』がマジで良すぎて消せなくなってしまった。1つ残すなら、全部残しておきたい。
またひとつ、録画機のHDDの残り時間が短くなってしまった。

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