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それは鮮やかに『かわいい』を詰め込んだ

そんな、ピンク色だった。


朝、ベビーカーを押しながらふと、目に止まったのだ。圧倒的存在感を持つ、鮮やかなショッキングピンク。
彼女は、そんな靴を履いていた。

黒髪がきちっとまとめられて、後頭部で揺れている。
中学生か、高校生か。着崩した様子のない紺色の制服と眼鏡、化粧っ気のなさそうな、でも綺麗な肌のお嬢さん。車道を挟んだ向こう側を歩く様子を、斜め後ろから見ただけなので、真正面から見たら実は全然印象が違う可能性もあるんだけど。
ここから見る限りは、『さわやか女子中学生イメージ代表』とでも言うべき、健康的な存在がそこにあった。
大きなカバンを背負っていたから、部活動用のカバンとかなのかもしれない。うーん、健全。

ただ、そんな彼女の、履いていたスニーカー。
それが、ヘッダー画像のような、鮮やかなピンク色だった。


中高生が学校に履いていく靴って、あんな派手でよかったっけ?
私は彼女がどこの学校かも知らないし、正直自分の学生時代の靴規定がどうだったかもうろ覚えだ。高校の入学式で革靴を用意したら痛すぎて泣いた記憶はあるんだけど(その後ローファーに変えて事なきを得た)。中学校ってどうだっけな。でもあんな目を惹く色の靴、履いてる子いなかった気がするんだよなぁ……。

別に、ただ履き間違えただけかもしれない。
部活っぽいカバン(何の部活かは不明)を背負っていたから、部活の時はみんなこれ!的なものがあるのかもしれない。
校則的に問題なくて、『靴だけは可愛く!』という、彼女の意思表示やこだわりなのかもしれない。あるいは校則的には問題があるけど、学校の前でこっそり履き替える為の靴が、実はあるのかもしれない。

正解がわからないから、勝手に色んなストーリーが頭に浮かんできて、申し訳ないけどすごくそれが楽しくて。
色んな想像を掻き立てる。それくらい、目を惹いた。それくらい、『制服』に対してちぐはぐで、違和感ですらあって、それがものすごく魅力的で、可愛かった。


私は、今も昔も、あまり自分のオシャレに自信がある方ではなくて。興味自体が薄いのも、まぁそうなんだけど。
だからかなぁ、そういうのは、凄く良いなぁって。『どこの学校の子かすぐわかるように』とか色々理由もあるだろうから、ある程度『制服』の基本形はあるべきだと思うんだけど、社会に出たらその『オシャレ』というスキルは結構役立つわけだし。『ココとココを守ってくれれば、こっちは自由でいいよ』みたいのがあるといいなーなんて、チラと思ってしまう。
なんとなく、『キッチリ制服!』か『私服OK』みたいな、0か100みたいな学校が多いイメージはあるのよね。いやまぁ、それぞれメリットデメリットがあるだろうけども。


あの靴は、本当にしみじみと素敵だった。
朝日の中で、『わたし可愛いでしょ!』って、堂々と輝いていた。
絶対noteにしようって、強く思った。

あの子が、あの靴を先生から咎められたりしていませんように。
友達に、めちゃめちゃに「かわいー!!」って、言ってもらえていますように。

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