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しくじり商品研究室:cado cuauraヘアドライヤー

今日もご覧いただきありがとうございます。
商品を企画する際に、ヒットに導くのは難しいのですが、反対に失敗要素を極力減らしていくことなら比較的実行しやすいです。
ここでは、失敗した商品の原因を知ることで、失敗要素を減らす参考になればと思います。
(トップ画像引用元:https://item.rakuten.co.jp/roomy/ecl18nov27h01/

cado cuauraヘアドライヤーの例

cado cuaura ヘアドライヤー。ドライヤーの"鼻"にあたる部分がないのが特徴。
(画像引用元:https://cado.com/pages/cadocuaura_bd-e2)

cuaura(クオーラ)ヘアドライヤーは、デザイン家電メーカーのcado(カドー)が2018年に発売したドライヤーです。最大の特徴は、ドライヤーの"鼻"にあたる部分がなく、前後に短く、軽量で取り回しがしやすいことです。また、前後に短いので、収納性にも優れています。しかし、2018年の発売後、2021年に一度モデルチェンジ、吹き出し口の部品追加とヒーターの加工で、遠赤外線が放出されるように進化を重ねましたが、なかなか市民権を得ているようには見えません。
今日はこのcadoのcuauraヘアドライヤーを見ていきます。

しくじり理由

cadoのcuauraヘアドライヤーの伸び悩みの理由として、二つ考えられます。まずは、価格に対して、ケア要素の訴求が弱い点です。販売データを見たと事があるのですが、1万円以上の価格帯では、パナソニックのナノケアドライヤーが高いシェアを持っています。パナソニック独自の「ナノイー」を使ったヘアケア訴求が強く、過去モデルのレビューの蓄積や、マスメディアや電車内での販促など大規模なイメージ作りもあり、各社この牙城を切り崩していない現状があります。結果、ナノケアはモデルチェンジの度に少しづつ値上げする事ができる=市場の強者として価格コントロールができるくらい高いシェアを持っています。

パナソニックのナノケアドライヤー。独自技術のナノイーを搭載し、ECサイトでの評価も高い。
(画像引用元:https://www.den-mart.com/shopdetail/000000003993/)

このナノケアドライヤーは2018年のモデルでおおよそ23,000円、2021年にモデルチェンジした後継モデルで33,000円です。対して、cadoのcuauraヘアドライヤーは、29,700円と近い価格帯で展開しており、ナノケアドライヤーとの比較は避けられません。
cadoのcuauraヘアドライヤーは、温風温度の低さと遠赤によるヘアケア効果を謳っていますが、前者はコイズミやテスコムといったメーカーの5,000円前後のドライヤーでも同様の機能(スカルプ機能)を持つ商品があります。

スカルプ機能を持つドライヤーの一例(コイズミKHD-9140)。ヨドバシ.comでは4,300円ほどで販売されている。
(画像引用元:https://www.koizumiseiki.jp/products/detail/1291)

また、遠赤の訴求も、ヴィダルサスーンのドライヤーが6,000円前後の商品で謳っています。仮にこの二つを合わせて、11,000円程度の価格になるので、製品の価格に対して割高感は否めません。この割高感を埋め合わせるのが、売り方やブランディングになりますが、すでに存在するパナソニックの価格と同様のレベルまでイメージを高め、レビュー蓄積するには、費用面・時間面ともに簡単ではありません。
2つ目として、既存のドライヤーと大きくことなる特異なデザインも、市場に受け入れられない理由になっている可能性があります。消費者は新しい商品を見たときに、自分の中にある思考の枠組みにはめて捉えようとします。この時、枠組みにはまれば、「これまでに見たことがあるもの」と判断され、枠組みから外れると「初めて見るもの=新しい商品」と判断されます。しかし、あまりにも既存枠組みから外れていると「全く違うもの」と判断され、例えば商品を購入するときに、同じカテゴリーの商品と認識されず、候補に入らないことがあります。
cadoのcuauraヘアドライヤーは通常のドライヤーの筒状の前部分、”鼻”にあたる部分が存在しません。既存のドライヤーと形状が異なることから、消費者の中で候補に入っていない可能性があります。

cado cuaura ヘアドライヤー。既存のドライヤーとは異なるデザイン。
(画像引用元:https://cado.com/pages/cadocuaura_bd-e2)

なお、既存のドライヤーと異なる形状の商品の例として、ダイソンのドライヤーがありますが、こちらは同社の「羽根のない扇風機」と原理が同じで形状・カラーリングが似ていること(既存の枠組みと適度な不一致に収まっている)、ダイソン自体が掃除機から「革新的なデザインの製品」を展開するブランドイメージを構築しており、状況は異なります。

4Pの総合力が結果を分ける

マーケティングの基本として4P/マーケティング・ミックスの考え方があります。4PはProduct(製品)/Price(価格)/Place(販路)/Promotion(販促)の頭文字で、これが商品レベルでのマーケティングの基本要素となります。商品が売れている、売れていない、勝っている、勝っていないを考えるときに、ついつい商品そのもののスペックや、機能に目が行きがちですが、実際には、4Pの総合力で勝負が行われています。今回のcado cuauraヘアドライヤーも、認知施策やブランディング、レビューの蓄積など、特にPromotion(販促)が課題になることがわかる例だと思います。
逆に言えば、販促に力を入れれば、今後伸びてくる可能性もあるわけです。
ヘアアイロンで大きなシェアを占めるサロニアはバス停の広告から始まり、10年以上の期間をかけてブランド・認知を構築しています。
商品レベルでの現状や、競合の分析は4Pの観点で行い、弱い点に対して対策を行うことで、しくじり商品も成功商品に転換していく可能性があるのです。

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