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ヒットの種:マーケティング入門⑭-4・製品ライフサイクル/成熟期

今日もご覧いただきありがとうございます。
ヒット商品研究所では、ヒット商品のヒット理由を法則として分析していますが、様々な理由の中から、特に重要なものを抜き出しているのが実情です。法則の再現だけでは、ヒットに繋げるのは難しく、マーケティング戦略を組み立てなければなりません。
ここでは、マーケティングの初心者向けに、マーケティングの基礎を解説していきたいと思います。
さて、前回まで製品ライフサイクルの導入期・成長期について説明しました。

今回は三番目のステップ、「成熟期」になります。

成熟期のマーケティング戦略

成熟期では売上・利益とも減少し始める。

成熟期では市場の成長が鈍くなり、売上も伸びなくなります。これは、商品の普及率が高まっていき、新規の購入から段々と買替え需要に変わっていくためです。新規購入の顧客層も、キャズムを超え、前期追随者や後期追随者に変わることで、普及率が高まります。

成熟期では前期追随者、後期追随者による、普及~買替え段階になる。

また、普及率が高い=市場自体は大きいため、市場には多数のライバルが存在し、価格競争も起こりやすく、売上の鈍化と併せて、利益も出にくくなっています。
成長が望めない成熟期では、企業間で顧客を奪い合うことになります。つまり、自社の売上を伸ばすために、自社の顧客は維持しながら、他社の顧客を奪うかがカギになります。成熟期の大きな戦略は、顧客の維持と競合にあわせた戦いを行うことになります。

①ロイヤルティの確立

顧客があるブランドやメーカーの商品を気に入り、繰り返し買いたい思う気持ちを「ロイヤルティ」と言います。
顧客のロイヤルティが高いと、次回商品を購入する際に、他社商品との比較が起こりにくく、購入される確立が高まります。ファンになってもらう、と考えるとわかりやすいですね。
ロイヤルティを高める方法としては、ブランドの認知やイメージを高めるブランディングを行うことや、ポイントカードやマイレージのように繰り返し使うことで報酬が得られるシステムなどがあります。前者の方が他社にマネされにくく効果が高いのですが、費用と特に時間が掛かります。実際には成熟期に入る前から自社商品のイメージを上げておくのが重要と言えるでしょう。

②自社・他社の立ち位置にあわせた戦いを行う

成長期までは新規顧客の獲得をメインで考えてきましたが、成熟期では、企業間のシェア争いになります。成長した市場には様々な企業がそれぞれのやり方で市場に参入しており、それぞれ立ち位置が違っています。つまり、自社の立場や、相手に応じて戦い方を変える必要があるのです。
各企業の立ち位置は、市場のシェアによって、大きくリーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャーの4つに分けられます。この時点である程度勝敗がついており、その中で、どう戦うかを考えることになります。その戦い方は市場地位別の競争戦略になりますが、過去に解説しておりますので、ここでは省略します。

市場地位によってやるべきことが変わる、と少し乱暴な結論になってしまいましたが、その一方で、市場の地位に関わらずやっておきたいことがあります。「市場の修正」「製品の修正」「マーケティングミックスの修正」です。
まず、「市場の修正」では未使用者や潜在顧客にアプローチすることで、顧客を増やしたり、新しい用途を提案することで、購入頻度を高めます。前者では、通常の購入に加えて、ギフトととしての購入を謳う、といった方法があります。最近の例ではKINUJOというメーカーのドライヤーがギフト向けの販促をしています。後者では、季節性がある物を、年間通して使ってもらうなどが挙げられます。永谷園は売上の落ちる夏場に、水と氷で冷たいお茶漬けを提案しています。

永谷園では自社サイトで冷たいお茶漬けのレシピを公開している。
(画像引用元:https://www.nagatanien.co.jp/recipe/1126/detail.html)

次に、「製品の修正」では品質の改良や、機能の改良、デザインの改良によって、買替えを促進したり、場合によってはライフサイクルの延命を図ります。例としては、バルミューダの「The Toaster」が挙げられます。スチーム機能を付け、トーストのおいしさを強く謳うことで買替えを促進、平均単価を上げることで市場自体を成長市場に変えることに成功しました。
最後に、「マーケティングミックス」の修正では、価格を下げたり、新しい販路で商品展開することで買替えや、新規顧客を獲得します。例えば、アマゾンや楽天といったネット通販で商品を展開してるのであれば、店頭での販売に乗り出すといった方法があります。例えば、SALONIAの美容家電やANKERのスマホ周辺機器などは、ネットでの実績を武器として、量販店に進出してきています。逆に、店頭での展開を中心に行っているのであれば、直販やネット通販により、価格を下げることができるかもしれません。
ただし、過度な値下げはブランドイメージの低下にもつながり、①のロイヤルティの確立に反します。粗利の維持はもちろんですが、高機能商品を安売りするようなことはしない方がよいでしょう。

今日はここまで!


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