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しくじり商品研究室:エニーロール エッグマエストロ

今日もご覧いただきありがとうございます。
商品を企画する際に、ヒットに導くのは難しいのですが、反対に失敗要素を極力減らしていくことなら比較的実行しやすいです。
ここでは、失敗した商品の原因を知ることで、失敗要素を減らす参考になればと思います。
(トップ画像引用元:https://www.yodobashi.com/product/100000001001870552/

エニーロール エッグマエストロの例


「エニーロール エッグマエストロ」は、通販会社のCJプライムショッピングが、2013年に発売した調理家電です。筒状の本体に、油を吹きかけ、卵を割り入れると、加熱されてエッグロールになった卵がせりあがってくる、という商品です。

卵を本体内で加熱調理して、エッグロールをつくる
(画像引用元:https://www.atpress.ne.jp/news/44028  プレス資料より)

当時、ビックカメラの量販店の店頭で小さなサイネージがつけられ、販促動画が流れていた覚えがあります。また、ZIP!やヒルナンデスでも取り上げられており、これをきっかけに購入したという商品レビューも見受けられます。
しかし、このエニーロール エッグマエストロはそのまま一代限りで終了、販売元のCJプライムショッピングも2017年には倒産しています。今回は、このエニーロール エッグマエストロについて見ていきたいと思います。

しくじり理由

エニーロール エッグマエストロの失敗理由は、"ギミック"商品だったことが理由です。
ここでは、エニーロール エッグマエストロを「アイデアの独自性」「アイデアの便益」の二軸で評価していきます。アイデアに独自性があり、便益もそろっていれば、他社にない、消費者が欲しいと思える独自商品です。一方で、アイデアに独自性もなく、便益もないのであれば、消費者が購入する意味はないものとなります。
なお、このアイデアの分類については西口一希氏の「顧客起点マーケティング」の内容を参考にしています。


①アイデアの独自性

マーケター 西口一希氏によるアイデアの分類

エニーロールは前述の通り、卵を割り入れるだけで、エッグロールが出来上がるという商品です。調理家電を見渡しても、エッグロールが出来上がるような商品はありません。卵の調理に特化した商品を敷いてあげると、エッグスチーマーがありますが、こちらはゆで卵ができる家電であり、目的が異なります。また、調理されたエッグロールがせりあがってくる、という特徴も他にはありません。この点で、商品のアイデアとしては独自性があったと言えます。

たまごを入れてエッグロールが出来上がるとニョキニョキとせりあがってくる
(画像引用元:https://www.atpress.ne.jp/news/44028)

②アイデアの便益

朝食やお弁当での使用を訴求している
(画像引用元:https://www.yodobashi.com/product/100000001001870552/)

独自性に続き、便益です。エニーロール エッグマエストロの便益としては、エッグロールが調理できることから、以下のような内容が考えられるでしょう。
・朝の忙しい時間に、お任せでおかずができている
・お弁当の一品を考えないでよい
・残っている卵の消費が進む などなど・・・

これらを一つ一つ検証すると、代替手段が存在していることに気づきます。まず、朝食のおかずは、納豆やミートボールのような開けるだけで食べられるものがありますし、お弁当の一品も冷凍食品を使うことができます。残っている卵の消費も、エッグロールに限定する必要はなく、目玉焼きやスクランブルエッグ、ゆで卵にするといった代替手段があります。最後の卵の調理に対しては、調理の手間が省けるという利点はあるかもしれませんが、起こり得る頻度としては、前者の二つに比べて低いでしょう。
つまり、エニーロール エッグマエストロはゼロとは言いませんが、本質的な便益がそれほどなかった商品と言えるでしょう。この便益がなかったことが、エニーロール エッグマエストロの失敗要因です。

ギミック商品は一過性に終わる

便益よりも製品としての面白さを伝える言葉が並ぶ
(画像引用元:https://www.murauchi.com/MCJ-front-web/CoD/0000014078417/)

アイデアに独自性があるものの、便益のない商品は、もの珍しいだけの謂わば”ギミック”商品となります。このギミック商品は、もの珍しいことから、販促やPRで話題を作ることはできます。しかし、便益がないことから、製品として長く必要とされることがありません。結果、どんなにプロモーションに力を入れても一過性に終わります。
このエニーロール エッグマエストロも、店頭で販促を流すなど積極的な販促を行っています。しかし商品は一時の話題になったのみで、長続きしませんでした。このような”ギミック”商品の例は多々ありますが、エニーロール エッグマエストロは特にわかりやすい例でしょう。

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