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しくじり商品研究室:ヒューロム スロージューサー

今日もご覧いただきありがとうございます。
商品を企画する際に、ヒットに導くのは難しいのですが、反対に失敗要素を極力減らしていくことなら比較的実行しやすいです。
ここでは、失敗した商品の原因を知ることで、失敗要素を減らす参考になればと思います。
(トップ画像引用元:https://hurom.jp/products/h-aa

ヒューロム・スロージューサーの例

ヒューロム・スロージューサーについて

ヒューロムは韓国の家電メーカーで、特にジューサーが有名です。
ヒューロムのジューサーは「スロージューサー」と呼ばれる商品で、回転する刃で食材を切り刻んで混ぜるミキサーとは異なり、回転する臼で食材をつぶし、水分を絞り出します。野菜や果物といった食材の温度が上がらず、栄養素(特に酵素)を壊さずに、ジュースが作れる点と、繊維質を分離して液体飲み絞ることで、市販のジュースのようなサラッとした口当たりのジュースが作れることが特徴です。

手で押しつぶして絞るのを電動化したものがジューサーと言える
(画像引用元:https://amzn.asia/d/7Qfro7l)

そんなジューサーですが、最近は市場が冷え込み、非常に小さくなっています。ヒューロムのスロージューサーは、ブーム時には売れており、決して失敗した商品とは言えないのですが、一つの市場が小さくなっていく姿が顕著な市場なので、代表例として取り上げました。

しくじり理由

消費者意識の変化

さて、スロージューサーの市場の最大の衰退理由は、健康に対する意識の変化です。
例えば「ダイエット」というと、かつては「野菜を食べる」「カロリーの摂取を抑える」という考え方が主流でした。しかし、最近では「たんぱく質をしっかり摂る」「糖質の摂取を抑える」というボディ・メイク的な考え方が主流になっています。この考え方の変化には、「ライザップ」に代表される食事指導法が広まったことが大きく影響しています。
ジューサーがミキサーに対して、栄養素が残りより健康ですよ、と小さなメリットを比較しているのに対して、「結果にコミットする」という非常に強く、ユーザーが実際に求めている「痩せる」そのものを実現する訴求となれば、消費者の心理も大きく傾きます。

ダイエットのお供は野菜ジュースからプロテインへと変化している。

ジューサーや、ミキサーは、健康面へのアプローチでは「野菜を摂る必要があるけど、そのままだと大変だから液体にしよう」という側面が強い商品です。そもそも野菜を摂る必要性が低くなれば、当然、需要は落ちていきます。

代替品の存在

ジューサーの代替品というと、当然市販の果物ジュースや野菜ジュースになります。かつては熱処理がされているものが一般的でしたが、最近は熱処理がされていない「生ジュース」と呼ばれるものがインターネットでも手に入ります。さらには、近年では「生絞りジュース自販機」も出ており、手入れの手間もなく、すぐに手に入ると、利便性が高まっています。

生絞りジュース自販機の例
(画像引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000121322.html)

消費者の意識変化による需要減少と併せ、代替手段が増えてきたことも、市場の縮小につながっています。

購買のきっかけを広くする

ここまで「スロージューサー」を中心に市場縮小の理由を見てきましたが、この市場の縮小理由は「ミキサー」にも当てはまり、やはりミキサーも市場が縮小しています。しかし、ジューサーほどではありません。

ミキサーは購入のきっかけになる用途がジューサーよりも多い。

この違いが生まれるは、消費者の購買のきっかけの広さが理由となりそうです。ジューサーは主に健康を前面に押し出してブームを作った商品であり、健康意識がきっかけとなり購入されていました。ミキサーも同様に健康志向は強いものの「子供にバナナジュースを作ってあげる」「料理でドレッシングを作るのに使う」といった、健康目的以外の用途があり、その分商品購入のきっかけが多くなります。このため、ミキサーは消費者の健康意識が変わっても、一定の需要があり、市場が残っていると考えられます。
商品の購買のきっかけが、一つに偏っていると世の中の変化で一気に需要がなくなるリスクが高くなります。市場に商品を出すことができたら、購買のきっかけの幅を広げえるような用途提案をして、リスクを減らすのが良いでしょう。

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