見出し画像

しくじり商品研究室:アクア・ラクーン

今日もご覧いただきありがとうございます。

商品を企画する際に、ヒットに導くのは難しいのですが、反対に失敗要素を極力減らしていくことなら比較的実行しやすいです。
ここでは、失敗した商品の原因を知ることで、失敗要素を減らす参考になればと思います。
(トップ画像引用元:https://news.kakaku.com/prdnews/cd=kaden/ctcd=2110/id=48250/)

アクア・ラクーンの例

アクア・ラクーンについて

ラクーンはオゾンの力で衣類を除菌・消臭する。
(画像引用元:https://store.shopping.yahoo.co.jp/ciz/ahw-sr1.html#)

「ラクーン」は家電メーカーのハイアールがアクアブランドで2015年に発売した「衣類エアウォッシャー」という商品です。そもそも「衣類エアウォッシャー」に馴染みがないという方がほとんどかと思います(しくじり商品ですし)。これは、洋服を入れた袋の内部にオゾンを放出、オゾンの力で衣類のにおいを消し、除菌をする、という商品で、スーツやコート、ダウンなど、自宅の洗濯機ではなかなか洗えない衣類を、自宅でケアできます。コンセプトは「水を使わず空気で洗う洗濯機」。当時、伊藤嘉明社長により、目新しい家電や「スターウォーズ」とのコラボ家電で話題になっていたアクアでしたが、「ラクーン」はそれほど普及することもなく、モデルチェンジせず一代限りで消えていきました。その背景を今日は見ていきたいと思います。

しくじり理由

メリットが近い商品の存在

「ラクーン」の最大の特徴は「衣類を水を使わずに消臭・除菌する」になりますが、これにコンセプトの近い商品が、すでに存在していますね。
一つ目が、P&Gの「ファブリーズ」に代表される、衣類消臭剤です。

ファブリーズなどの衣類消臭剤。当時は「洗たく」といった言葉を訴求に使っていた。
(画像引用元:https://www.matsukiyococokara-online.com/news/140)

スプレーで手軽に消臭・除菌できる「ファブリーズ」は、皆さんご存じかと思います。現在では洗濯効果があるような訴求を行ってはいませんが、当時は「瞬間お洗たく」や「新!ファブリーズで洗おう」といったCMが流れていました。松岡修三さんを起用したCMは2012年から流れており、「ラクーン」発売時にはすでに「ファブリーズ」も市民権を得ています。
次に、二つ目はパナソニックの「衣類スチーマー」です。

パナソニックの衣類スチーマー。スーツなど男性の衣類向けの商品も後から追加されている。
(画像引用元:https://aimcube.com/?pid=89758337)

衣類スチーマーはスチームでシワを伸ばすのがメインの使い方ですが、スチームには消臭効果があり、「ラクーン」とメリットが近い商品と言えます。発売は「ラクーン」と同じ2015年ですが、綾瀬はるかさんを起用したCMで認知を高めていました。アイロンからかけ面を省き、軽量で手持ちで使える手軽さが受け、現在も定期的に新商品が出ています。
さて、これらに対して「ラクーン」のデメリットは据え置き型となり、場所を取ることです。効果は近く、服をセットすれば後は自動ですので、手軽とも言えますが、そもそも家庭に導入する際には場所が大きなハードルとなります。

高すぎる価格


「ラクーン」は8万5,000円くらいの価格から販売がスタートしたようです。価格比較の対象として、ここではクリーニングと比較してみます。
さて、一年あたりの家庭の洗濯代(クリーニングに掛ける費用)は減少しており、総務省「家計調査年報」によると、1992年には19,243円から、2015年には6,601円まで減少してます。背景としてはクールビズでスーツを着る機会が減ったり、ウォッシャブルスーツなど衣類側の進化、ファストファッションの浸透などが挙げられます。
少し乱暴ですが、スーツをクリーニングに出さず、代わりに「ラクーン」で済ますと考え、8万5,000円をクリーニング代で元をとろうとすると、約13年かかることになります。ちょっと感覚としては長いかな・・・
また、根本的に洗濯をしていない以上は、クリーニングも併用せざるを得ないでしょうから、あまりメリットは感じなくなります。この点でもより安価なファブリーズや衣類スチーマーに軍配が上がるでしょう。

そもそも誰が使うのか?

(画像引用元:https://news.kakaku.com/prdnews/cd=kaden/ctcd=2110/id=48250/)

「ラクーン」は価格や設置に必要なスペースを考えると、比較的年齢が高く、収入の多いエグゼクティブ層をターゲットにしているのではないかと思います。会食や、その席でのたばこなど、スーツに臭いが着くシーンも想像されます。
ホテル日航成田で、スイートルーム8室に設置、ラクーンを気軽に体験できる宿泊プラン「スイート・エクスペリエンス」といったプロモーションを実施していることからも、ターゲットが伺えます。

しかし、購入者はエグゼクティブな男性でも、使用者はその奥様というケースも多いのではないかと思います。女性目線では「ラクーン」よりももっと省スペースで、簡単に使える「ファブリーズ」や「衣類スチーマー」の方が便利に感じるのではないでしょうか。もし、商品が本当に良いものであれば、口コミで広がりが期待できますが、当然購入者ではなく、使った人が好さを感じるかがポイントになります。
ターゲットの設定時に、購入者と使用者想定して、開発を進めてたら、もっと違ったものが生まれていたかもしれません(何も生まれなかった可能性もありますが・・・)。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?