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ダーティハリー五番勝負

ものの弾みで(笑)こんなものを買ってしまいました。

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ダーティハリー・シリーズ5枚組の「ダーティハリー コレクション スペシャル・バリューパック」だそうです。お値段はお買い得価格(笑)

1971年の第1作から1988年の第5作まで、都合5作品を一挙収録。もちろん映画館で全部見ているシリーズですが、考えてみたらVHSで第1作を持っているくらいで、なぜか私の映画コレクションに揃っていなかったんですね。で、ついついふらっとポチを(笑)

せっかく買ったんで、連日鑑賞のハリー祭りを開催してみました。ヒマですねぇ。

実をいうと、私は昔からこのシリーズをそんなに気に入っていないのです。なんとなく暗いのが、微妙に好みと違うせいかな。ま、そのへんは個人の好みなんですが、ここまでDVDとかを買っていなかったのも、そのせいでしょうか。

さあ、その私の偏見(笑)をくつがえせるか、ハリー祭りの顛末やいかに?

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すべてはここから始まった。「ダーティハリー」(1971年) ああ、もう50年近く前の映画なんだね。そのせいで古臭さは否めないものの、その緊張感は色褪せていない。ただひさしぶりで見返してみて気づいたんですけど、この映画のアクション、そう大したことはないんですね。ドンパチは(当時としては)派手なものの、大部分は地道な追っかけシーンのみ。まぁそのへんがリアリティ重視ということなのか。当時も今もこの「ダーティハリー」を指して「ポリスアクション映画の元祖」みたいなことを言いますが、買いかぶり過ぎなのではないかな。ちなみにストーリーの中核を成す連続殺人鬼スコーピオが、当時まだ進行中の実際の事件を基にしていることは、前に書きましたっけね。

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「ダーティハリー」のヒットを受けて1973年に公開された「ダーティハリー2」 これも前にも書きましたが、続編の邦題にポンと算用数字をくっつけたのは、たぶんこのシリーズが初めて。法で裁けない犯罪者を私的に処刑する警官集団という、このシリーズでは最もフィクションっぽいストーリーですが、最後に「意外な犯人」が現われる点でも異色。このシリーズはけっこうリアリティを重視しているので、こうした仕掛けがあるのは本作くらいなのですよ。「刑事スタスキー&ハッチ」でブレイクする前のデビッド・ソウルが出ていたのは当時から記憶に残っていたんですが、いま見るとそう大した役じゃないな。

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1976年の「ダーティハリー3」 このへんからリアルタイムで劇場公開を見ているかな。日本のポスターではバズーカ砲を構えたハリーの雄姿がデザインされていて大仕掛けなアクションへの期待が高まったんですが、そんな映画ではなかったですね。ラストは監獄で知られるアルカトラズ島での対決とか煽られたけど、それも肩透かしっぽい。なによりも悪役が、思い込みの激しい若者たちの過激派集団と、凄みに欠けることこのうえない。どうしてもハリーの楽勝に見えてしまうのですよ。ストーリーの都合上からか前作を欠席していた、名傍役ハリー・ガーディノが演じる上司が復活したいっぽうで、ここまでハリーの元相棒である太めの同僚刑事を演じてきたジョン・ミッチャムが退場となるシーンは、泣かせましたね。

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「3」からこの「ダーティハリー4」が公開された1983年までは7年の間隔が開いているんですね。当時は、もう作らないんだろうなと思っていたので、製作が決まり、しかもイーストウッドの愛人といわれたソンドラ・ロックが共演すると聞いて胸を躍らせたものですが、かなりのガッカリ映画だった記憶があることは、これも前に書いたっけ【こちらを参照】 それでもラストでハリーが出現するあのシーンは、今回も鳥肌ものでした(ただしハリーが携えていたのはマグナム44ではなく、もっと大型のオートマグだった。これは私の記憶違い)

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そして1988年の「ダーティハリー5」 いまのところ、これがシリーズ最終作。なのに、私はまったく内容を覚えていなかった。見直していて断片的な記憶は甦ったけど、ホントにこの映画見たのかなと思うくらい覚えていなかったよ。それくらいピンとこない映画だったんですね。今回初めて気づいたのは、ガンズ・アンド・ローゼズの名曲「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」が冒頭とクライマックスでフィーチャーされていたこと。ご存知のように(そうでもないか)全日本プロレスの名タッグチームであるカンナム・エクスプレス(ダニー・クロファット&ダグ・ファーナス)の入場テーマ曲として私の脳には刻み込まれている曲だけど、この映画に使われていたんだっけ? カンナムの初登場はこの映画を見たあとの1989年なんだけど、リングサイドで耳にしたときにピンとこなかったのは、この映画の印象があまりにも薄かったせいだろうな。

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今回続けざまに5作を見てなんとなくわかったのは、このシリーズがけっしてアクション映画ではなかったということ。中核となる事件も、それを描くストーリー展開も、およそミステリ的には「弱い」のですよ。

なのにけっこう人気があったのは、それを補って余りある魅力があったから。その魅力とは、クリント・イーストウッド演じるハリー・キャラハン刑事のキャラクターだろう。強い正義感を持ち、妥協をせず、しかし斜に構えて熱くなり過ぎないハリーのキャラクターは、たしかに強い。

仮にこの役をイーストウッドが演じず、あるいは別のキャラクターになっていたとしたら、どの作品もB級映画、いやヘタしたら500円映画になっていたかもね(関係ないけどハリーはINSPECTORだから警部なんだよね、字幕なんかでは「刑事」になっていたけど。でもあれだけ上層部と仲が悪くて揉め事も起こしていて、よくまぁ降格されないもんだね)

そうなると、私がこのシリーズに魅力を感じきれなかったあの暗さも、なんとなく納得いくものがありますね。とくにシリーズ終了から30年が過ぎた今から振り返って、その後のイーストウッドの歩みと作品歴を見ると、ああ、なるほどと思いますよね。

ちなみに「1」の冒頭のハリー初登場の銀行強盗シーンで、例の「弾丸が残ってるか考えているな」という名セリフをぶつけられる黒人の強盗犯を演じたアルバート・ポップウェルって俳優さん、「2」では殺されるポン引き役もやってるよね。そのうえ「3」では黒人組織の親玉役、そして「4」ではなんとハリーの相棒の刑事を演じてる。なぜか「5」には出ていないんだけど、どうしてまたここまでチョコチョコ顔を出していたんだろうか。最初からの3作に連続出演したジョン・ミッチャムは同一の役を演じたんだからわかるんだよ。でも毎回役柄を変えて連続出演てのは、なんか面白いね。よっぽどクリント親分に気に入られていたんだろうか。そのわりにはヒドイ目にあう役ばかりなんだけどね(笑)

じつはシリーズ終了の2年後に作られた「ルーキー」(1990年)という映画があるんですが、なんでこれが「ダーティハリー6」じゃないんだろうというのが長年の疑問なんです。ベテラン刑事(イーストウッド)が新人刑事(チャーリー・シーン)と組まされてというお話しだが、毎回ハリー刑事が苦労してきたことの繰り返しじゃないか。同じワーナーの製作で、監督もイーストウッド本人。なんでこれが「ダーティハリー」シリーズじゃないのか、私にはいまだに謎であります。

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実をいうと、アカデミー監督賞を獲ったりしたあとのクリント・イーストウッドはすっかり偉くなってしまって、シンネリした堅苦しい映画ばかり作るようになったので(個人の偏見です)、ここんとこご無沙汰してるんです。まあこれを機に、最近の作品も見てみようかな(といったって、もう十年以上みていないんですが)

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