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一発芸の映画

今までたくさんの映画を見てきたが、そのすべてが面白かったわけでは、もちろん、ない。いやそれどころか、完璧に面白かった映画など、ほとんどなかったといえよう。

しかし、面白くなかった映画でも、それが強烈な印象を残すことはある。いや、あまりのつまらなさが印象に残ったとかではなく。

映画というのは、1シーン、1カットの積み重ね。その積み重ねがストーリーを紡ぎ、映画として成立してゆく。

ならば逆に、その「部品」であるカットのうちのひとつだけでも、それが強烈ならば、映画全体がアレでも、それだけで満足させることもあり得るわけだ。

たとえば「ダーティハリー4」という映画がある。

クリント・イーストウッドがハミダシ刑事ハリー・キャラハンを演じた「ダーティハリー」はまぎれもない傑作アクション映画だが、その続編群(5まであるんだよ、これが)は、正直言って、それほどの傑作ではない。なかでもこの「4」は、当時イーストウッドの恋人だか愛人だったソンドラ・ロックが共演したので期待大だったが、ハズレだった。

ところがこの中に、私に強烈な印象を残した1カットがある。

そんな映画だったので細かな状況は忘れたが、ラスト近くで、悪漢たちに捕まったソンドラ・ロックが、あわやというシーン。夜の遊園地だったと思う。いきなり強烈な照明が点き、悪漢の一人が目を向けてつぶやく。

「出やがった」

そこには、照明の逆光の中、シルエットになったハリー・キャラハンがすっくと立っていた! もちろんその手には、トレードマークともいうべき長銃身の44マグナムが!

いやぁ、このシルエットのキャラハン刑事、全シリーズ中でもっともかっこよかった! 見た瞬間、鳥肌が立ったよ。

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角川さんから出たノヴェライズの表紙がこれだった。ナイス・セレクト!

おかげで、正直アレな映画だった「ダーティハリー4」は、私の中では「記憶に残る映画」になったのだった。

他にも、ゴダイゴの主題曲が流れるエンドクレジットだけで充分ヒートした「銀河鉄道999」(美形の鉄郎が不評だった最初の劇場版)とか、ラストでブラック・サバスの曲を使った反則攻撃を繰り出してプロレス好きの私をKOした「アイアンマン」とかが、こうした「一発芸」で勝利した映画として思い出される。

ただ、そう言っておいてなんだが、こうした映画たち、しょせんは「一発芸」だというのも、また哀しい真実ではある。現に私はこの映画たち、一度も再見してないんだよね。

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