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令和5年・名古屋場所雑記

場所前の焦点といえば
1 横綱・照ノ富士の連覇なるか
2 新大関・霧島(霧馬山改め)の活躍は
3 豊昇龍、大栄翔、若元春の関脇陣の大関昇進なるか
4 初土俵から4場所目で新入幕の伯桜鵬の成績は

まぁこんなところだったでしょうか。

初日から新大関が休場、横綱も途中休場になりましたが、3関脇が土俵を引っ張り、新入幕の怪物も優勝争いに食い込むなど、場所前の期待から外れた点と、期待に応えた面が微妙に交錯。

しかし、思わぬ伏兵が登場して、場所を盛り上げてくれました。

前頭筆頭の錦木がその伏兵。初日に新大関・霧島に不戦勝という、弾みがつくんだかつかないんだかわからないスタートながら、二日目に横綱を撃破して波に乗り、大関盗りレースをくりひろげる関脇陣もことごとく突破。11日目まで1敗のみで単独トップに立ち、もはや初優勝は目前と思いました。どっしりした重い腰、ブルドーザーのような前への圧力、相手の動きにも動じない安定感と、相撲内容も抜群。いったい誰が止めるんだといわんばかりの出来でした。

結果的にはそこから4連敗で終わりましたが、殊勲賞と新三役の座を手にして、場所の主役といっていい働きを見せてくれました。終盤の崩れはあったものの、内容から見て来場所以降も期待できそうです。苦労人・錦木がさらなる花を咲かせそうな予感がします。

さて三賞に関して、本欄では毎度毎度、その出し渋りを批判してきました。もっと大盤振る舞いをすべきだと。

その声が届いたのか(?)今場所はドカンと7人が三賞を獲得しました。殊勲賞が錦木、技能賞が伯桜鵬、そして敢闘賞が、豊昇龍琴ノ若北勝富士豪ノ山湘南乃海伯桜鵬(ダブル受賞) 文句あるかといわんばかりの大盤振る舞い。史上最多の受賞者数で、大変けっこうでした。

ただ、錦木と伯桜鵬以外は例によって「千秋楽に勝てば」の条件付き。結果的には条件付きになった5人がいずれも勝ったのでよかったのですが、逆に転んだら、三役で二ケタ勝った豊昇龍、琴ノ若、最後まで優勝を争った北勝富士、新入幕で大いに奮闘した豪ノ山、湘南乃海がいずれも無冠に終わったかも知れなかったんですよ。このへん、もう一歩踏み出していただきたかったですね。

さて今場所で目についたというか、気になった点をひとつ。

それは、休場→再出場の多さです。

初日から休場(初日は不戦敗)した大関・霧島が4日目から、8日目から休場した朝乃山が12日目から、そして十両の一山本も5日目から休場しながら8日目から再出場。それぞれに事情があるのはわかります。とくに横綱・照ノ富士ともう一方の大関・貴景勝が休んでしまって看板不在となる危機を回避した霧島の奮闘は評価できます。

とはいえ、好ましいことではありません。負傷が完治しないでの再出場は、その後の力士生活に響くかもしれないし、やはり無理はよろしくないのですが、それ以上に、観客に失礼だと思うのですよ。

不戦敗の日も含めての数日間だけ休場したわけですが、その間に来場していた観客は、やはり「損をした」ことになるでしょう。お金を払った観客に、その対価たる相撲を見せられなかったのですからね。まして、その力士のファンだったりしたら、ガッカリ感は拭えないでしょうし、自分が来場した翌日からその力士が出場したりしたら、どうでしょうか?

もちろん負傷や病気は不可抗力だし、番付降下の幅を少しでも小さくしたい気持ちはわからないではないですから、ここで解決策を提案もできないのですが、いまひとつスッキリしないですねぇ。

さてさて、場所前から注目されていた3関脇による大関盗りレースは、結果的に明暗を分けました。

12勝を挙げて優勝決定戦を勝ち抜き初優勝までモノにした豊昇龍が、どうやら大関の座を手にした一方で、10日目で勝ち越しながらそこから3連敗してしまった大栄翔、11日目で勝ち越したあと1勝しか上積みできなかった若元春の2人は9勝どまりで大関盗りは足踏みです。2人とも終盤は相撲内容もよくなく、印象的にも悪くなってしまいました。

ただし、今場所後の昇進はなくなったとはいえ、大栄翔、若元春ともに夏場所と今場所で合計19勝を挙げているんですから、秋場所で11勝すれば3場所合計30勝ラインに乗ります。3場所合計33勝? そんなの内規で目安に過ぎないんだから、いいから昇進させちゃおうよ、もう。

直近3場所の成績を見るのもいいけど、もっと長期的に安定した成績を上げているかとか、将来性あるかとか、いくらでも他に評価できる要素はあると思いますよ。

今場所小結で11勝して2人と同じく2場所で19勝を挙げた琴ノ若(来場所は関脇昇進でしょうね)もあわせて、秋場所も大関盗りレースは白熱させてほしいですね。

その3関脇の競り合い以上に盛り上がったのが、新入幕トリオ。千秋楽まで優勝争いをした伯桜鵬が目立ったものの、豪ノ山湘南乃海もけっきょくは伯桜鵬と1勝しか違わない10勝を挙げたんですから大したもんです。新入幕力士が3人揃って三賞を受賞したのも、大いに評価できます。3人とも将来性は抜群。来場所以降の活躍が楽しみです。

優勝決定戦を戦った北勝富士、幕尻とはいえ10勝を挙げた遠藤、場所中に10連勝して驚かせた竜電といったベテラン勢も存在感を見せてくれました。

横綱不在、大関も苦戦という場所でしたが、最終的には壮絶な星の潰しあいもあって、十分以上に盛り上がった場所でした。

ところで、この令和5年はちょっと異変が起きています。まだ平幕優勝がないのです。初場所から順に大関・貴景勝、関脇・霧馬山、横綱・照ノ富士、そして関脇・豊昇龍。

いや本来ならばきわめて正常なことなんですが、じつは令和では初。その前の平成30年初場所の栃ノ心を皮切りに、令和元年は朝乃山、2年には徳勝龍と照ノ富士、3年には大栄翔、そして昨年令和4年には逸ノ城、玉鷲、阿炎が3場所連続と、毎年誰かが平幕優勝を飾っています。5年連続平幕優勝って、これは大相撲史上に例を見ないほどの椿事なのです。なのに、今年はまだナシ。なので私は今場所も錦木か北勝富士か伯桜鵬が平幕優勝を飾ると見ていたんですが、外れましたね。秋場所、九州場所で誰かが大穴優勝を果たすのか。期待しちゃいますね。

ついでに、はやばやと来場所への期待を書いておきましょう。横綱の再起、新大関の活躍、カド番となる現・大関の2人の成績、大関盗りレースの続行とそこに割り込む新顔の有無、といったところでしょうか。

そして、来場所は幕下から新十両に昇進する顔ぶれにも期待が持てそうです。

夏巡業を経ての秋場所、誰がわれわれを驚かせてくれるのか、いまから楽しみでなりません。

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