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500円映画劇場「カウントダウン/合衆国滅亡の時」

前にも書いたが、ホームセンターのヤスモノDVDのワゴンは、玉石混交(いやほとんどは石なんだが)

大半はテレビ用映画、オリジナルビデオ、最近はネット配信のみの映画なのだが、中には本国ではちゃんと劇場公開されていながら、このヤスモノDVDワゴンに身を落とした連中も散見する。

今回のこの「カウントダウン/合衆国滅亡の時」(原題「JERUSALEM COUNTDOWN」)も、アメリカではちゃんと劇場公開された2011年の作品だとか。

その証拠に、リー・メジャース(「600万ドルの男」)やステイシー・キーチ(「ドク・ホリディ」)といったちゃんとした俳優も出演している。ちょっとだけだけど。

原題は「Jerusalem Countdown」

しかも、恐ろしいことに、この映画、どうもけっこうな予算がかかっているらしい。

俳優の演技はわりとちゃんとしているし、アクションもそれなりに出来ている。爆発シーンもショボいCGでなく、ちゃんと特効使ってるし。そこらの500円映画にはない迫力がある……気がする。

アメリカ国内に、某国で開発された携帯型の小型原爆が7個持ち込まれる。大規模なテロ計画だ。国内で核攻撃がなされれば、合衆国の法と秩序は崩壊する。密輸を請け負った売人のタレコミで情報をつかんだFBI捜査官と、CIAから情報を得た彼の元恋人の捜査官が、ほとんど二人だけでこのテロ組織に挑む。計画実行までに、7個の核爆弾を発見できるのか? しかしこのテロ計画の背後には、なぜかまったく別の思惑を持つ闇の組織が……

よくある筋立てではあるものの、なかなか面白くなりそうな設定でしょ。

ところが、これがまったく面白くない。

意外にスケールが小さいのだ。舞台は、アメリカ東海岸のごく一部だけ。なんかそこらの地方都市だけでバタバタしているようにしか見えないうえ、事件を追う捜査官もたったの二人だけってどうなんだよ。

さらにネタを割ってしまえば、敵方のテロ集団も小規模すぎて、強敵感皆無。まあ実際のテロ組織なんて、別にスペクターやショッカーみたいな強大な組織でなく、ごく内輪の集団な場合がほとんどなんだろうが、せっかくフィクションなんだから、もうちょっと迫力を出してほしいよな。

おまけにこいつら、せっかく7個もある核爆弾を全部自分の家に置きっぱなしにしてる。おまえら、ほんとにプロのテロリストなのか?

おまけに向かいの家に住んでる場末の記者が、ほんの思いつきでこの「テロリストの家」に家宅侵入して証拠を発見したりと、なんとも底が浅い。防犯装置もないんだぞ。ごていねいに爆弾設置予定個所の地図までわかりやすく置きっぱなしだし、防犯意識が低すぎるテロ集団だな。

おかげで盛り上がるべきサスペンスも、さっぱり盛り上がらない。なんかモヤモヤしたままお話は進み、けっきょくバンバンと小規模な銃撃戦でテロ集団壊滅して万事解決という、B級アクション映画風味丸出しで大団円。

というような欠陥は、実はたいした問題ではない。この映画には、もっと根本的な問題があるのだ。そしてその問題こそが、この映画がヤスモノ映画になり果てた理由そのものなのだ。

それは、大団円のそのあとに、唐突に、まったく唐突に訪れる。

ネタバレになるので詳しくは書けないが、キーワードは「携挙」

そう、この映画、サスペンスアクションでも、パニック大作でもなくて、じつは強大な宗教映画だったんですね。

道理で、途中で「なんで信じないの」とか「魂を開いて受け入れる」とかいうアヤシゲなセリフがちょろちょろ出てきたわけだ。

豊富な予算も、ちゃんとした俳優も、アメリカでの劇場公開も、そしてそれが日本でまったく相手にされずにヤスモノ映画になったのも、すべてはそのおかげだったんだね。

だから、そもそも私のような不信心な異教徒には関係ない映画だったわけだ(笑)

見た目は宗教っぽさゼロですね

というわけで、映画は予算が豊富でも面白くなるとは限らないといういいお手本でした。

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