見出し画像

ロックぶらり

以前に「ロックに行こう」で書いたように、ヒマだった大学生時代に浅草六区の映画街(通称・ロック)にせっせと映画を見に行っていた。毎週とはいかなかったが、月に二、三回は行っていたのではないか。

その後、社会人になってからはそんなヒマもなくなってすっかり足が遠のいていたのだが、「ロックに行こう」を書いたせいで、ちょっと懐かしくなって、ついでもあったので、ひさびさに足を運んでみた。

私がロックへ行くときは、いつもこのメトロ(当時は営団)銀座線の田原町駅から向かったものだ。駅もすっかりきれいに生まれ変わっている。

上映開始時間が迫っているときは、このアーケード歩道を駆け抜けていったものだ。若かったからね。ここはまだちょっと当時の雰囲気が残っていたが、あたりにたくさんあった焼きそば屋はほぼ消滅している。

この雷門一丁目交差点から雷門通りをちょっと行き、左側にある短いアーケード商店街のすしや通りを抜けると、その先がロック映画街。

私がいちばん多く通ったのが、すしや通りを出てすぐ右側にあった洋画3本立ての東京クラブ。その東京クラブや常盤座浅草ロキシーなどが入っていた旧・金龍館あたりは、現在はこんなきれいなショッピングビルになっていて、いまや映画館の跡形もない。この向かい側にも日本館なるピンク映画館があったものだが。

その点、電気館は名前だけでも残っているのだからマシなほうか。もっとも私が通っていたころはすでに電気館はなかったので、入ったことはない。

もちろん浅草演芸ホールは健在なのだが、そのならびにあったはずの大勝館などがあった場所あたりは、量販店のドンキホーテになってる。今昔の感あり。

道の反対側の浅草東宝会館のあとは、こんなきれいなビルに変身していた。もちろん、映画館は入っていない。

嬉しかったのは、その向かいあたりにあった「ヌードの殿堂」ロック座が健在だったこと。ちょっときれいになったような気がするが、たたずまいの妖艶さは変わらずだ。もっとも小心だった私はここに入ったことはない。

そして、中映会館のあった場所は、このとおり、空っぽになっていた。白い長いフェンスの向こうが、その跡地。東京クラブの次くらいに多くの映画を見た映画館・浅草中映があったのだが。

この先の突きあたりのパチンコ店の向こうには、たしか東映の映画館があったな。もちろん、今はもうない。

ロックのはずれにあった案内板だけが、往時の様子を残しているのは皮肉な感じ。長いあいだ更新されていないのか、現存しない映画館の名前が書かれているのだ(タイトル写真参照

驚いたことに、まだいくつか、私が映画街に通っていたころの雰囲気をしのばせるものが残っていた。もう40年ちかくも前のことなのに。

映画街への入り口になっていたすしや通りの店の多くには、当時の雰囲気が色濃く残っていた。この店なんか、当時からあったんじゃないかな。

田原町駅付近のアーケード歩道には、ソースだけで具の少ない焼きそば屋が何軒もあったんだが、そのほとんどがなくなって……と思ったら、一軒だけ健在だった。店頭で調理してるスタイルもそのまま。懐かしい匂いが漂っていたよ。

最大の驚きは、これ。この「大人のオモチャ」の看板と店は、間違いなく当時もあった。こういうものにいちばん興味がある年ごろだったから、よく覚えているね。もちろん貧乏学生は資金不足だったので、利用したことはないです。ほんとだよ。

そしてもちろん、当時はこんなものは見えなかった(笑)

今でも、たまにロックへ映画を見に行く夢を見ることがある。そのたび、なんか懐かしい気持ちになる。自分の原点のひとつなのかもしれないな。そして、私の頭のなかに残っているロックは、もはや記憶と再構成された夢がごっちゃになっているのだろうが。

今はそれも、完全な幻影であることを再認識した「ぶらり」でございました。

  ロックに行こう

雑日誌 目次

映画つれづれ 目次

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?