探偵はそのへんにいる
もう通り過ぎてしまいましたが、5月21日は「探偵の日」だそうです。
なんでも、1891年(明治24年)のこの日に、日本で初めて新聞紙上に「帝國探明會」という探偵社の広告が出た日だそうで、それがふさわしいのかどうかわかりませんが、社団法人探偵協会が制定したものだそうです(ただ、現在もこの日でいいかどうかは議論中なんだとか)
これがその広告(社団法人探偵協会HPより)
そういえば、もともとはミステリ小説のことを「探偵小説」と呼んでいました。ところが、「探偵」の「偵」の字が新聞等で使えないことから「推理小説」や「ミステリ」という呼び方に変化したんだとか。へえ。
ついでにいえば、この「探偵」という語、いまでは主に私立探偵のことを指すようになっていますが、もともとは警官や刑事をも含めたものでした。英語の「detective」の訳語ですからね。
警察モノ映画の古典、ウィリアム・ワイラー監督、カーク・ダグラス主演(刑事役です)「DETECTIVE STORY」の邦題が「探偵物語」(1951年)なのがそのひとつの証拠ですね。
ちなみに、ハードボイルドっぽいイメージの「私立探偵」、トレンチコートに中折れ帽みたいな、ハンフリー・ボガート風のやつは、英語では「private investigator」 これを略して「PI」ということが多いですね。
じゃあ、シャーロック・ホームズやエルキュール・ポアロみたいな名探偵たちはなんと呼ぶんでしょうか。ホームズは「顧問探偵(consulting detective)」を自称してますが、ポアロなんかはやっぱり単なる「detective」ですかね。
「探偵の日」のツイッターでのつぶやきなんか見てみると、やはり人気のある、知名度の浸透した「探偵」というと、日本ではシャーロック・ホームズ、名探偵コナン、明智小五郎あたりで、私の世代ではテレビドラマ「探偵物語」(1979年)で松田優作が演じた工藤ちゃんと、薬師丸ひろ子の映画「探偵物語」(1983年)ですかね。
もちろん私もそのへんは好きですが、やはりここはもっとマニアックな「探偵」に行ってみたいところ。
私が好きなのは「ハーフボイルド探偵」
ハードボイルドが「堅ゆで卵」のことですから、さしずめ「半熟卵」 つまり、ガチガチのハードボイルド探偵よりも、もうちょっとユルくてファンキーな探偵のことです。命名は、たしか双葉十三郎先生。
以前にジェームズ・ガーナーが亡くなったさいに追悼で書いたように、この代表格が彼の代表作ともいえるTV「ロックフォードの事件メモ」 ひょうひょうとしたLAの私立探偵ジム・ロックフォードは、私のあこがれの存在であります。
もう一方の雄ともいえるハーフボイルドは、アメリカの反対側のフロリダ州マイアミにいます。
1967年の「トニー・ローム/殺しの追跡」でフランク・シナトラが演じた私立探偵トニー・ローム。なんの財産があるのか、あまり真剣に働いておらず、悠然とマリーナにつないだボートで暮らしている「遊び人探偵」
本領はこの続編ともいうべき「セメントの女」(1968年)
ヒューゴ・モンテネグロの軽快過ぎるテーマ曲に乗って、マイアミ沖の美しくも青い海。そこで探偵トニー・ロームが励んでいるのは事件捜査ではなくて、海底に沈んだ沈没船の宝探し。遊び人め。もちろんその最中に、海底で足をセメント漬けにされた金髪美女の死体を発見するのだけど。
ロックフォードもそうですが、こうした連中、事件にぶつかってもあまり騒がず、真剣なのか遊び半分なのか、サラッと事件を解決する印象がありますね。ああ、こういうふうに生きたいもんだ。
ほかにも、「エース・ベンチュラ」(1994年)のペット探偵(ジム・キャリー) 「フォード・フェアレーンの冒険」(1990年)の史上初のロックンロール探偵(アンドリュー・ダイス・クレイ) 「ロジャー・ラビット」(1988年)のロジャーに振り回される中年探偵エディ(ボブ・ホスキンス)らも、この手の「ハーフボイルド探偵」だろう。日本では大泉洋が「探偵はBARにいる」(2011年)などで演じた名無しの探偵「ススキノの俺」がこのカテゴリかな。
どうですか、真剣に、漢気や騎士道、使命感などに命を懸けるハードな探偵たちも面白いんですが、こうしたちょっと斜に構えた探偵さんも捨てがたいものでしょう。
人生気楽にのほほんと生きたいもの。
オレはハーフボイルドで行くぜ(笑)
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