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外出自粛映画野郎「恐怖のエアポート」

以前に未発売映画劇場で取り上げた「恐怖のエアポート」が国内発売になっていました。むかしむかしにNHKで放送したとき以来の再見です(あの時は「大空の恐怖」というタイトルでした)

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しばしば書いてきたように、映画界には「エアポート一族」とも呼ばれる(呼んでいるのは私だけですが)航空パニック映画群があります。

この「恐怖のエアポート」は、そのような一族の元祖みたいな言われ方をよくします。

でもちょっと待った

エアポート一族の開祖である「大空港」は1970年の作品。

この「恐怖のエアポート」は1971年9月にアメリカで初放映されたTVムービー。

なんだ「大空港」のほうが先じゃないか。

と、いいたいところですが、ここでまた待った。

「恐怖のエアポート」には原作小説があって、その原作『0-8滑走路』は1958年の作品。ほーら「大空港」よりも前でしょ。著者のアーサー・ヘイリーは、じつは「大空港」の原作者でもあるのだが、『0-8滑走路』は原作の『大空港』よりも前の作品なのです(1968年発表)

どうでしょう、これでこの「恐怖のエアポート」がエアポート一族の元祖といってもいいんじゃないでしょうか。

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ストーリーは以前に書いたように、機内の食中毒で操縦士を失った旅客機を乗客のひとりであった元ヘリパイロットが着陸させるというもの。

さすがにいま観ると、航空関係のテクノロジーは古いですが、それを補って余りある緊迫感があります。シンプルゆえの迫力でしょうか。なにしろ72分しかないので、余計なものは一切なし。

そして、むかし観たときには全然気づかなかったのがキャストの豪華さ。なにしろ私が日本初放送でこの映画を観たころは、まだ駆け出しの映画ファンでしたから、要は私が知らなかっただけなんですが。

元ヘリパイロットの乗客はダグ・マクルーア。1960年代からTVで人気の出た人で、私はこのあとの「恐竜の島」とか「アトランティス/7つの海底都市」とかいったB級SF映画でよく観たおなじみの顔。そうか、彼が主役だったのか。

問題の機に乗り合わせた医師がロディ・マクドウォール「猿の惑星」「ヘルハウス」といった映画でこれまたおなじみの顔ですが、当時はまだ知らなかったなぁ。でもその後はホラー映画に多く出ていたし、怪しげな人物を演じることが多かったので、今回もどこかで裏切るんじゃないかと心配になりました。

ほかに、文句を言う乗客(エアポートものでは必ず出てくるような奴)を演じたのが名優キーナン・ウィンだったのも、今回あらためて気づいた次第。

ああ、あの頃は私も若かったんだな。

ちなみに1974年にNHKで初放送された際のタイトルが「大空の恐怖」だったことは前に書いた通りですが、その後の1985年にテレビ東京で放送された際のタイトルが「恐怖のエアポート」

この二度の放送のあいだの11年に、「エアポート’75」から「エアポート’80」にいたる本家エアポート・シリーズの公開がすっぽり収まっているわけです。それでタイトルが「大空の恐怖」から「恐怖のエアポート」に変更されたんでしょうね。歴史を感じるなぁ

さて「未発売映画劇場」でこの作品を取り上げたときに、同時に紹介してソフト化を待望した、TV航空パニックのもう一方の雄「夜空の大空港」ですが、なんとこの「恐怖のエアポート」とセットでDVD化されました。ナイスなチョイスですね。

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この2本ならば、マジでお買い得ですので、お勧めしときましょう。「夜空の大空港」のほうも、この外出自粛中に観ることにしましょうか。【画像のリンク先はamazon.co.jp】

今回これを書くんで調べたら、原作の『0-8滑走路』は現在は品切れのようですね。古書でも見かけたら、これもおススメですので、ぜひ。

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さらにもうひとつ追加しておけば、『0-8滑走路』は、じつは1957年にすでに劇場用に映画化されています。

タイトルは「Zero Hour ! 」 おお、これは日本未公開なので、ぜひとも「未発売映画劇場」で観てみなければ、とDVDを発注。

え? ちょっと待った(またかよ)

『0-8滑走路』は1958年の作品で、「Zero Hour ! 」は1957年の映画。

あれ、順番が逆じゃないか。じゃあ、『0-8滑走路』は「Zero Hour ! 」のノヴェライゼーションなのか?

で、さらに調べてみると、今度は「Zero Hour ! 」が1956年のカナダのテレビドラマ「Flight Into Danger」のリメイクだということが判明したのです。

そして、その「Flight Into Danger」の脚本を書いたのが、当時カナダのテレビ界で活躍していたアーサー・ヘイリーでした。

なるほど、そうすると「Flight Into Danger」→「Zero Hour ! 」→『0-8滑走路』→「恐怖のエアポート」という順番なのか。

まあどちらにせよ、このコンテンツがアーサー・ヘイリーの手になるものであることは間違いないし、やはりこれが航空パニックものの元祖という結論は揺るがないものなのでした。

「恐怖のエアポート」(「大空の恐怖」) 1971年/監督バーナード・コワルスキー/脚本スティーヴン・カーフ、エリノア・カーフ、ディック・ネルソン/原作アーサー・ヘイリー/主演ダグ・マクルーア、ロディ・マクドウォール、ロイス・ネトルトンほか/72分

『0-8滑走路』アーサー・ヘイリー&ジョン・キャッスル著/清水政二訳/ハヤカワ文庫

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