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500円映画劇場「メガ・ピラニア」

ヤスモノ映画に確固たる地位を築いている動物パニックものですが、そのうち最多登場生物は何なんでしょうか? 数えてはいませんが、たぶんサメでしょうね。「なんとかジョーズ」とか「なんとかシャーク」とか、地球上に生存しているサメの種類よりも映画のほうが多いんじゃないか(笑)

で、そのサメに次いでヤスモノ映画界に生息数が多そうな魚類が、今回のお題であるピラニア。南米アマゾンの恐怖の肉食魚として、昔はけっこう怪物あつかいされていたもんですが、近年はテレビの旅番組などでも空揚げにされて逆に喰われたりしていて、現実世界ではその恐怖感を失いつつあります。でも相変わらずヤスモノ映画では重宝されているようですね。

さてこの「メガ・ピラニア」は、そんなピラニア映画の決定版……なわけはないよね。

ベネズエラのオリノコ川で、アメリカ大使とベネズエラの外務大臣が謎の襲撃を受けて死亡する。事態を重視したアメリカ国務長官は特殊部隊隊員のフィッチを現地へ派遣。テロリストの襲撃で片づけようとするベネズエラ軍。いっぽうで現地で研究しているアメリカ人女性科学者から恐るべき情報がもたらされ、未曾有のパニックを防ぐためにフィッチは重大な決意をする。

もう、凡百としか言いようのないストーリーですね。キーワードは「遺伝子操作」「隠蔽」「増殖」「特殊部隊」「核兵器」 これだけ見れば、あとの展開はだいたいおわかりですね。まあストーリーはいいんですよ、べつに凡百でも。誰もそんなとこに期待してないから。

で、登場する怪物ピラニアですが、もうよくわからない設定。科学が生み出した怪物なんですが、とにかく無敵。通常兵器の攻撃はもちろん、核爆弾もものともせず、軍艦や原子力潜水艦、はては飛行中の攻撃ヘリまで食い散らすんだから大したもんだ。その怪物ピラニアを、ナイフやキック一発で撃退する主人公の特殊部隊くんも、いいかげん凄いですが。あ、ヤスモノCGで出来た怪物ですから、見ていてそんなに違和感はないですがね。

もちろん誇大表現満載なイラスト

文句をいいたいのは、このヤッスイCG

ヤスモノ映画ではもう見慣れているかも知れない(私だけ?)ヤスモノCGですが、さすがにこの映画のは酷い。

これもヤスモノ映画にはつきものの「怪獣(とか宇宙人とか怪生物とか殺人鬼とか)が、画面に出過ぎだろ」があるんですが、ご多聞にもれず、この怪物ピラニアくんたちも出過ぎ とくに映画の後半では頭数も大きさもドカドカとエスカレートして、出現場面が急増し、それにつれてどんどんCGの不出来具合が目につく仕組み。ちっとは考えろよな。

なにしろ、怪物ピラニアの大きさが、カットごとに変わる。ビルを倒壊させるくらいデカかったり、逆に蹴っ飛ばせば吹っ飛ぶくらいの軽量だったり。まあ数が多いので、個体ごとにばらつきがあるってことなんでしょうが、遠近感もゼロなので、今映ってるコイツはどのくらいのサイズなのか、はなはだ不明瞭なのです。立体感もいまひとつで、2次元アニメーションみたいだしね。

おまけにピラニア映画では不可欠の、喰われて大流血シーンも、画面に赤いマスク処理をかけただけみたいな薄味で、手抜き感充分

ディティールの甘さもバッチリです。「食料不足解消のために魚の遺伝子操作をする」って研究をしていたそうで、その結果怪物ピラニアが誕生したそうなんですが、なんでそこでピラニア? そりゃあ確かにアマゾンあたりではピラニア喰いますが、もっと美味い魚がいっぱいいるだろうに

主人公の特殊部隊くんがワシントンの長官と携帯電話で会話するシーンがあるんですが、こちらは昼間なのに長官がいるワシントンはすっかり夜。ん? ベネズエラとアメリカ東海岸って、そんなに時差ないだろ。だいたい、アメリカ大使が殺されてテロの可能性があるってのに、特殊部隊くんを単身で現地へ送りこむって、事態を軽く見すぎでしょ。こうした細部って、ちゃんとした方がいいと思うよ、そんなに手間がかかることじゃないんだからさぁ。

ほかにも、そこらの倉庫か物置を「軍の施設」とか「研究所」と言い張ったりするのもお約束通りだし、むかしの初代ゲームボーイみたいな携帯機器で、長大なオリノコ川(延長2060キロメートル)の流域全部探査できる魚群探知機とか、どんな奥地にいてもすぐに通じる携帯電話(そのうえ肝心なところで電池切れ)とか、ベネズエラからフロリダまで一気に飛べるヘリコプタ―(飛行距離およそ2600キロメートル!)とか、ツッコミどころ満載なので、まあしょうがねえやと肩の力を抜いて楽しみましょう。それ以外に打つ手なし。

ただ、声を大にして文句言いたいのは、ヒロインですよヒロイン

せめてビキニのお色気美女が露出満点で出てきてくれれば救いもあったのに。

「メガ・ピラニア」のヒロインはアメリカ人の女性科学者。おまけにさしたる美女でもないし、スタイルもふっくら気味というか中年太り。いや彼女のビキニ姿はご辞退申し上げます

でも、この女性科学者を演じたのがティファニーだといえば、ある年代の方なら膝を乗り出すかも。

はい、1980年代後半に世界的に人気のあったアイドル歌手なんですね。日本でも「ふたりの世界」とか「思い出に抱かれて」とか、けっこうヒットしました。懐かしいって人もいるでしょ。私は知りませんでしたが。もちろん彼女は歌手なので、演技とか期待しちゃいけないんですよ。

そうか、往年の人気アイドル歌手がVシネマとかに出てたのと同じパターンなのか。私はなんとなく天地真理を連想したぞ

それにしても、出るならもうちょっとどうにかした映画に出てほしいものだ。往年のファンが間違って見たら、ガッカリすること請け合いだろうに。いや、本人の容姿の変化はともかくとして(かつてはスレンダー系の美少女だったとか)

見るからにムリのあるジャケットデザイン

いろいろガッカリ感ヤマ盛りのこの映画の原題は「Mega Piranha」 2010年のアメリカ製テレビ映画であります。 

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