500円映画劇場「プレデターD4」
1987年にアーノルド・シュワルツネガ―主演で作られた「プレデター」がヒットし、その後に続編やら亜流やらマネ映画を山ほど生みだしたのはご存知のとおりだが、これもそんな感じの一作。もちろん元祖には遠くおよばない出来栄えだ。ちなみに、原題は「D4」だけ。
大富豪から、謎の医療機関にさらわれた息子の救出を依頼された傭兵チームが、山中に残された遺棄施設「D4」に潜入する。だがそこでは極秘実験が行なわれていて、予想もしなかった不死身の怪物が彼らに襲いかかった……
とまあ、新味も何もないストーリーに、ショボい特撮を組み合わせて「プレデター」の域に迫ろうという、安易きわまりない作品。べつに脚本や演出や演技に文句をつけるつもりはないが(技術的には、このジャンルにしてはわりとちゃんとしている)大した作品になっていないのは厳然たる事実だ。
思えば、「プレデター」がレジェンドとなったのは「ジャングルに潜入した特殊部隊が未知の怪物と遭遇する」というアイデアに、誰も文句のつけようがないオリジナリティがあったからだ。
その後にこの「軍人対怪獣」という形を単純にマネしただけの作品群が輝かなかったのは、そのアイデアを上回るインパクトを生みだせなかったから。まぁ、そのへんはハナッから柳の下のドジョウを狙った企画では、そもそも求められていなかっただろうが。
にもかかわらず、この亜流ジャンルの作品が多いのは「安く作れて、そこそこ面白そうに見せられるから」だろう。
怪獣映画+戦争映画だもの、そりゃ男の子には抵抗できない魅力があるよねえ。実際に見たらがっかりするのはわかり切っていても。
もちろん、怪獣と軍人が闘う映画は、めずらしくもなんともない。元祖「キングコング」「ゴジラ」のむかしから、怪獣が出現すると、必ずと言っていいほど軍隊が出動するのだから(そしてたいていは怪獣に蹴散らされる)
にもかかわらず「プレデター」が斬新に感じられたのは、従来の怪獣映画では主人公(特技を持って怪獣を倒す)科学者(怪獣を分析説明し打倒法を考案する)軍人(通常兵力で怪獣と対決し敗北することによって怪獣の凄みを見せつける)という必須の三要素がそれぞれ分離していたのを、ひとつのユニットにまとめ得る特殊部隊という仕掛けを考案したことだ。【こちらを参照】
ただし、その形を踏襲しさえすればオモシロイ映画が作れるかというと、そう簡単にはいかないのが、映画という芸術の面白い所だ。
なんか話が広がってしまったが、この「プレデターD4」が失敗に終わったのは、じつはそんな高級な問題ではない。もっと基本的な部分のせいだ。
傭兵たちに襲いかかる「怪獣」があまりにもショボいのだ。
そう思った日本の業者が製作した上記のジャケットを見れば、ご覧のとおり、その点を懸命に隠蔽しているのだが、あちらの製作陣はそんなことは考えなかったようだ。
あらら、もろに出しちゃってるよ。
プロレスラーをちょっと粉飾しただけみたいな、このアンちゃんが「怪獣」役なのだ。正直にいおう。ガッカリだぜ。
もうネタバレでもかまわないだろうから書いちゃうが、なんか怪しげな人体実験の結果で誕生した改造人間が、その正体なのだ。あーあ、もうちょっと外見だけでも飾れないもんだったのか。
もうちょっと頑張れば、それなりのドラマも作れそうな気がする設定なのに、そんなことは考えずに、ひたすら「プレデター」路線だけを突っ走ったようだ。
ま、それはそれで潔いのかもしれないが。
でもけっきょく成功してない。ラストもドンデン返しっぽい捻りが三重くらいに用意されているが、まったく機能していないぞ。
監督・脚本・主演をつとめたダリン・ディッカーソンのワンマン映画なのだが、この映画を見る限りでは大した技術も持ち合わせず、他に大した実績もないこの男が、いったいどうやってこの映画を作り上げられたのかが最大の謎だよ。
2011年の作品で、いちおうアメリカでは劇場公開もしたらしい。
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