大怪獣を倒す人々

怪獣映画の作り方、パート2(笑)

怪獣の作り方は、前回「大怪獣はどこから来る?」で講義(?)しましたが、怪獣が出さえすれば怪獣映画になるかというと、そうはいきません。

そう、出てきた怪獣を倒さないと、怪獣映画は終わりません。そして、その怪獣を倒すのは? そう、怪獣を倒すのは人類の役目なんです。

というところで、怪獣映画の登場人物には、必須の三要素があります。ここでご教授しましょう。

 1 主人公

 2 科学者

 3 軍人

まあこのほかにも、ヒロインとかお調子モノとか憎まれ役とかいろいろ付け加えてもいいんですが、この3つだけは欠かしてはいけません。逆に、この3つを押さえておけば、ほかはいらないくらいです。

説明しましょう。

まずは1の「主人公」。これは物語の主役ってだけじゃありません。基本的にはスーパーマンでもないし、大天才でもない普通の人間なのが望ましい。人知を超えた存在である怪獣を倒すには、兵器や科学技術だけじゃダメなんです。最終的に怪獣を倒すには、主人公の「特技」や「くふう」が必要とされます。それでこそ、怪獣を倒す存在である人間に、ほとんどは普通の人間である観客が感情移入できるわけです。「ゴジラ」で宝田明が演じた潜水夫・尾形秀人がお手本。次の「ゴジラの逆襲」ではパイロット、「キングコング対ゴジラ」ではテレビ屋さんという具合に、シンプルな初期怪獣映画では、わかりやすい形で存在してますね、主人公。

2の「科学者」の役割は、ただ一つ。怪獣の存在を「科学的に」説明することです。どんな怪獣なのか、なぜ現われたのか、どんな対策が立てられるのか、そしてその対策が失敗したときの理由とか、怪獣映画で説明することはたくさんあります。はい、「ゴジラ」の古生物学者・山根恭平博士(志村喬)を思い浮べてください。

そして、3の「軍人」。これは必ずしも制服着た軍人さんである必要はないんですが、でもたいがいは兵隊さんが出てきます。そのへん複雑な事情がある日本の怪獣映画では防衛軍とか、防衛隊とかの自衛隊もどきですね。これは要するに、怪獣相手の「やられ役」。怪獣は人知を超えた存在ですから通常兵器なんかに負けちゃいけないんですが、そのためには通常兵器が通用しないところを見せなければなりません。つまり兵器を使って怪獣を制しようとして失敗する噛ませ犬が「軍人」の仕事です。

この3つを登場人物に揃えると、怪獣映画になります。これが揃ってないと、どんな怪物が現われても、怪獣映画にはなりません。ホラー映画になっちゃうんですね。

この3種類を簡単に具現してあったのが、じつはわれわれ世代の怪獣映画の基本(映画じゃないけど)だった「ウルトラマン」の科学特捜隊なんです。隊長と紅一点をのぞいた3人が、これなんですね。アラシ隊員が「軍人」、イデ隊員が「科学者」。だから、ほら、この二人だけで怪獣を倒すことはないでしょ。怪獣を倒すのは「主人公」ハヤタ隊員のお仕事。ハヤタって、意外に取りえのないふつうのお兄さんですからね。特技? そりゃ、ウルトラマンになることですよ(笑)

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