大怪獣はどこから来る?

「トレマーズ」という映画があります。近年では最も成功した怪獣映画……と、私はずっと言っていましたが、もう25年も前の映画(1989年)になりましたね。

その中で、非常に印象に残るセリフがあります。

怪獣に追い詰められて孤立した3人の主人公が、暇つぶしに怪獣の正体を推理して、それぞれの意見を語るセリフです。だいたい、こんな感じ。

「古代生物の生き残りに違いない」

「宇宙から来た生物なんだよ」

「軍が遺伝子操作で作りだしたのよ」

これ、重要です。

なんとなれば、およそ怪獣ってのは、すべてこの3種類のどれかなんですから。

そうでしょ?

まずは「古代生物」。

あらゆる怪獣映画の原点となった「失われた世界」と「キングコング」がどちらもこれ。あのゴジラの原点とも言われる「原子怪獣あらわる」も、そう。ゴジラもラドンもモスラもバランもアンギラスも、そう。ウルトラ怪獣第1号、「ウルトラQ」の第1回に出たゴメスとリトラも、そう。実在(?)の怪獣であるネッシーやイェティも考えれば、怪獣世界における古代生物率はけっこう高いですよね。

宇宙生物」もけっして負けてはいません。

古くは「マックイーンの絶対の危機(ブロブ)」から「エイリアン」や「プレデター」まで、東宝怪獣ではキングギドラやモゲラ、ドゴラ、あるいは松竹のギララなど数知れず。ここに巨大化する宇宙人も含めてしまえば、「ウルトラマン」の最初の2回に襲来したベムラーもバルタン星人もこれ。「ウルトラセブン」の敵も、全部これ。「宇宙」に「異次元」まで含めれば、最近作の「パシフィック・リム」までもが、このジャンルです。ところで、映画における宇宙怪獣の元祖って何でしょうね?

科学怪獣」はといえば? 

元祖はフランケンシュタインの怪物でしょうか。東宝怪獣では意外に少数派だったりしますが、サンダとガイラ、ビオランテ、ちょっと毛色は違うけどヘドラあたりがそう。メカゴジラは宇宙怪獣系だけど、メカニコングはこっちなのかな。またアメリカ怪獣の主流、「放射能X」「タランチュラの襲撃」「黒い蠍」など、原水爆の放射能とか、新開発の栄養剤とか、何を考えているのかわからない実験とかによる、巨大化生物たちもここでしょう。

さあ、この3種類以外の怪獣って、ご存知ですか? 私は知りませんね。どうです、重要でしょ

が、ひとつだけ例外があります。

じつは、それが「トレマーズ」なんです。

ここに出てくる怪獣(のちにグラボイズと名前が付きました)は、この3種類のどれでもない……というか、まったく正体不明なのであります。

主人公たちが考察していたわりには、映画が終わっても、こいつらが何モノだったのかは説明されないままです。

これ、怪獣映画では完全に意表をついた作り方なんですね。それで観客に何の不満も抱かせなかったんだから、「トレマーズ」はやはり、非常にすぐれた映画だったんです。

さあ、これから怪獣映画を企画する映画屋さんたち、この3種類の怪獣の枠を超えた斬新なイマジネーションを見せてくださいね(笑)

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