500円映画劇場「悪魔のエンジェル」
ここんとこあまり見ていなかったんですが、ひさしぶりにホラー映画を見たくなったので、アマゾンビデオで目についたのを見てみました。
それにしても、自己矛盾に満ちた邦題ですね「悪魔のエンジェル」って。いったい天使なのか悪魔なのかハッキリしてほしい。
以前に書いたことがあるけど、邦題に「悪魔」がはいる映画って、じつは悪魔は出てこないものがほとんど。本物の悪魔が出てくる有名映画って「エクソシスト」も「オーメン」も、邦題には「悪魔」ってついてないでしょ。邦題に「悪魔」がつくものだと、たいがいは殺人鬼か、マッドなやつらか、あるいは超非情な悪人が主役。ありていにいえばB級クラスの映画ばかりなのかも。
今回もその法則はくつがえりませんでした。
なお、原題は「Angel」だけなんで、本国側には問題ありません。
30年以上も孤立した廃墟の町レイブンロック。そこでは異常に多くの行方不明事件が発生していた。町で娘が失踪した資産家は、テレビ取材班を雇い、元軍人のガードをつけて町へ潜入させる。一見すると無人の廃墟だったが、やがて彼らの背後には謎めいた人影が……
はい、やや超自然がかっているとはいえ、ここに登場するのは奇妙な仮面をかぶった連続殺人鬼。超タフで怪力の女性ってのがやや新味ですが、殺人鬼の背景も何も説明がないので、単なるキチ✕イなのか悪魔の化身なのか、いまいち判然といたしません。まぁそんなことはどうでもいいんですが。
舞台となるレイブンロックの風景が、この映画の最大の見もの。ガチの廃墟です。日本にも廃村とか限界集落とかありますが、結構大き目な感じの町(といってもたぶん工場かなにかだけ)が丸ごと廃墟なので、迫力あります。イメージとしては、「カメラを止めるな!」の舞台を数倍大きくした感じ。
惜しむらくは、この大きさを活かせてないです。全体像がハッキリ呈示されず、また主人公たちの現在地がしっかり描かれないので、距離感や方角がわからず、ちょっとイラっとします。このへんは演出や撮影のウデの問題。
とはいえ、映画そのものの技術レベルは悪くありません。ヤスモノ映画にありがちなPOV(一人称カメラ)頼りの稚拙な演出もなく、照明不足で何がどこにあるやらわからない、なんてこともない。
ただ、撮影側の技術で基本的な部分はキチンとしているようですが、ポストプロダクションの技術はいまいち。編集の呼吸が悪くて、ところどころカクンとしたりします。音楽も短調で盛り上がらないし。
この映画、製作・監督・脚本を担当したトリー・ジョーンズ(Tory Jones)のワンマン映画のようですが、彼は舞台となった廃墟の所在地でもあるケンタッキーのローカル映画の雄らしいです。日本ではほかに見られる作品はありませんが、そこそこ作品数のあるオッサンです。インディ映画の世界では実績もあるので、撮影技術はしっかりしていたわけです。
ただし、撮影技術が確かなのは脱・ヤスモノ映画の必要条件ですが、それだけで映画が面白くなるわけではありません。
じつはこれも毎度のことですが、この映画の最大の欠点は撮影技術とか俳優の演技とか(まぁ大したことはないですが)ではありません。そんなのは500円映画ではフツーのこと。
この映画の致命的な欠点は、ホラー映画のくせにちっとも怖くないってことです。
たぶん演出スタイルの問題なんでしょう。
登場人物の背後にぬッとあらわれたり、すーっと通りすぎたり、見えないところに潜んでいたりと、ホラー映画の基本どおりの演出をキチンとやっているんですが、あまりにも型どおりなので、容易に先が読めてしまうのです。
ここらで出るぞっでタイミングで、その期待どおりに間違いなく出る、その繰り返しばかりなんですから、そりゃあビックリもしないし、ドキドキもしない。これじゃあ怖くなりようがないでしょう。
ほかの欠点は勘弁できても、ホラー映画が怖くないのは致命的じゃないですか。このへんがこの映画の限界だったんでしょうね。
前記したようにケンタッキーのローカル映画らしく、2018年7月に地元のケンタッキー州レキシントンでプレミア公開され、2020年になってようやくインターネット配信された作品。もちろん日本でもネット配信のみで劇場公開などはありません。まぁ、そりゃあそうだろうな。
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