500円映画劇場「アバランチ・クラッシュ」

以前にこの「500円映画劇場」で取り上げた「大雪崩」という映画がありました。

巨大な自然災害を描いた大型パニック映画、に見せかけたジミーーーな文芸映画だったわけですが(しかもつまらなかった)、捲土重来、今回はタイトルも「アバランチ・クラッシュ」とぐっと派手めの雪崩映画です。原題の「Die Lawine」もズバリ「雪崩」のことなので安心ですね。2007年のドイツ製のTV映画です。

ドイツの山奥、もともとは酪農地帯ですが、いまは観光スキー場で食っている山村に、地元出身のスキーチャンピオンが帰ってきます。世界的に名声を得た彼ですが、故郷の山村に家族を残して今はカナダ在住。その妻は離婚して都会から来たエンジニアと再婚。長男は新しい父になじめず、娘のほうは継父と仲良し。さらには観光事業で失敗した元妻の実家ととか、自分自身の家族ととか、幼なじみの親友ととか、それぞれに複雑な人間関係が……

おいおい、ちょっと待てよ、ぜんぜんパニックもアクションもないじゃないか?

問題の山村は大雪に閉ざされ、道路は閉鎖中(でも最初のほうで主人公たちは平気で突破してくるが)と、ちょっとは災害パニックっぽい臭いもさせますが、当たり前ながらその後は雪に閉じ込められて鬱々と過ごすばかり。

ただでさえ理屈っぽいドイツ人(偏見ですが)が、閉鎖的環境でぶつかり合うさまは、見ていてもぜんぜん面白くない。はやい話が、愚痴のこぼしあいですからね。

それも当然で、この映画、べつにパニック映画じゃないんですよ。

あの「大雪崩」より数段上出来な部類とはいえ、やはり地味な人間ドラマを描こうとした文芸映画なのです。ああ、またダマされた

とはいえ、肝心の雪崩が来た瞬間に映画が終わったも同然の「大雪崩」にくらべると、ラスト15分くらいとはいえ、雪崩が襲撃し、埋もれた住民たちを必死に救出しなければならないタイムサスペンスがあり、そこだけは、ちょっとだけ迫力あり。ちょっとだけどね。

だから、なおさら中途半端感が漂います。この雪崩災害の部分だけで全編を作れば、それなりのパニック映画が出来たのに……

と思うでしょ? でも、そうウマくいきそうもないんですね、これが。

はい、信じがたいことですが、あの出来損ない映画「大雪崩」よりも、圧倒的に弱い部分があるのです。

それは、この映画には絶対不可欠なはずの「雪崩の映像」

実写か特撮かCGかは知りませんが、それなりに迫力ある「雪崩の映像」を見せてくれた「大雪崩」に対して、この「アバランチ・クラッシュ」では、「雪崩の映像」はほとんどナシ

ラストのクライシスになるべき雪崩は、建物の窓から押し入ってくる雪ですべて表現しています。なんて芸術的(かつ安上がり)

おまけに、村の建物が押し流され崩壊するクラッシュ場面も、直接の描写はゼロ。だって夜なんだもん。あたりは真っ暗で、つぶれた建物ひとつ見えません。

主人公周囲で悲劇はありますが、結局のところこの雪崩でどれくらいの被害が出たのかも、よくわからないまま、主人公の「ここがオレの故郷だ」という、なんか納得いくようないかないようなセリフでさっさと映画は終了してしまいます。

おいおい、カンベンしろよ。

もう、二度と雪崩の映画は買わないぞ、という決意を固くした次第です(いやたぶん買うけど)

いやわかってますよ、そもそもこの映画は、パニック映画でも災害映画でもないってことは。

でもでも、あえて言わせてもらえば、そんな映画を500円映画のワゴンに置かせるなよな(怒)

ま、毎度毎度同じ手口でだまされる私が悪いんですがね。

  500円映画劇場 目次

映画つれづれ 目次

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?