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未発売映画劇場「殺人ブルドーザー」

この未発売映画劇場でしばしば触れてきたように、1970年代ごろのアメリカのTVムービーには傑作がけっこう多い。いや、それだけ多くの作品が作られてきたってだけのことなんだが。

「暗殺/サンディエゴの熱い日」「恐怖の酷寒地獄」「アメリカを震撼させた夜」「10月のミサイル」などなど。どれも製作後50年近く経った現在の目で見ても、面白い映画ばかり。

ところがこれらの映画がことごとく日本ではソフト未発売なのだ(なかにはアメリカでも未発売のものもあるが、これは諸事情によるもの) やはり劇場公開されたものよりも圧倒的に知名度が落ちるからだろう。スティーヴン・スピルバーグ監督の「激突!」が、もともとはTVムービーだったのに、たまたま日本では劇場公開されたので、今日までポピュラーな作品になっていることの裏返しなわけ。

そんな知られざる傑作TVムービーの一本が今回取り上げる、この「殺人ブルドーザー」だ。

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原題は「KILLDOZER」 アメリカでは1974年の2月2日にABCで初放送され、日本でも数回にわたってテレビの洋画劇場枠で放送された。私は昼間の洋画劇場での再放送で見たなぁ。そもそも73分の映画だから、ほとんどノーカットだったように思う。

宇宙の彼方から飛来した隕石が大西洋の孤島に落下(すごい確率) ずっと時代が過ぎ、石油開発のために島に来た建設チームが、埋もれていたこの隕石を掘り当ててしまう。すると隕石に付着していた(たぶん)異星生物がブルドーザーに憑依し、チームに襲いかかるのだ。自らの意志を持った殺人機械と男たちの死闘!

当時のTVムービーは意外ときちんとした作品が多く、この「殺人ブルドーザー」も、原作はSFの巨匠シオドア・スタージョンの短編を原作にしている。出自は悪くないのだ。

にもかかわらず、放送当時の評判はアメリカでも日本でも高いとはいえなかった。

なにせ派手さに欠けるのだ。

舞台が孤島の建設現場なのだが、おかげで登場人物はたったの6人。しかも全員ごついオッサンだ。このへんは時代を感じる。もし今この作品をリメイクしたら、建設チームには間違いなく最低でも一人の女性が加わっているだろう。

主演はクリント・ウォーカー。地味だ。いや「特攻大作戦」などいい作品に出てるんだよ。でも大スターというわけじゃない。ほかには容貌魁偉で知られるネヴィル・ブランド(「マッドボンバー」「悪魔の沼」ほか)、カール・ベッツ、ジェームズ・ウェインライト、ジェームズ・A・ワトソン・ジュニア、ロバート・ユーリック。以上。あれ、全キャストを紹介しちゃったよ。

いやぁ男臭い、というかムサくるしい

舞台が舞台だけに派手なぶっ壊しがあるわけでもない。ブルドーザーがメリメリと車を引きつぶすくらい。ラストはパワーショベル対ブルドーザーの重機対決だが、ガツンガツンぶつかるだけ。

TVムービーゆえ、ブルドーザーが人を殺すシーンもはっきりとは写せないので、見せ場になり損ねている。劇場用ならば、飛び散る血しぶき、つぶれた死体など、特殊効果が大いに使われたであろうに。

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という具合な作品なのだ。ちなみにIMDBのレーティングでは☆10個で満点のところ平均で5.1個、オールシネマでは7.2点と、けっして高くはない。

ところがこの映画、その後じわじわと評価を高め、カルトムービーに変貌している。前記したIMDBのレーティングでも、平均は5.1個だが、満点の☆10個をつけた人間が全体の12.6パーセントもいるのだ(スキモノが多いんだよね)

おかげであちらではきちんとソフト化されていて、私も数十年ぶりで再見できたということだ。アメリカの映画マニアのパワー恐るべし。

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まぁ、作りのシンプルさが、逆に新鮮に感じられたってところだろう。実際今回見直してみたが、そう評価が高まることはなかったよ。

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というわけで、この原稿を書き上げたのだが、そこへニュースが。

この「殺人ブルドーザー」の国内発売が決定したというのだ。来年2月12日のリリースだそうだ。

いや、嬉しいような悔しいような。まあ私は15ドルほどで買ったので、かなり格安だったから、まあいいか(笑)

すでに日本のアマゾンさんでも予約が始まっているようだ。

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【画像のリンク先はamazon.co.jp】

さ、この「傑作」を買うか買わないか、あなたの決断はいかに?(笑)

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