映画は安くなっている
先日、いつも行く近所のホームセンターへ行ったときのこと。
お、ひさしぶりにヤスモノ映画DVDのワゴンが出てるぞと喜び勇んで近づいてみて、軽い衝撃を受けました。
1本100円!
この値段はちょっとショックです。100円ですよ、100円。
ここ数年、ヤスモノ映画といえば1本500円が極北となっていて、おかげでずいぶん安上がりにたくさんの映画を見させてもらったんですが【500円映画劇場をご参照ください】、いつのまにやら世間ではさらに映画のデフレが進んでいるんですね。
もちろん、いままでも100円くらいの値段で売られている映画ソフトはありました。俗にいうレンタル落ちの、要するに中古ソフトです。レンタル店でさんざん借り出され、お役目ゴメンとなった歴戦の勇士。ジャケットは日焼けで薄れ、場合によっては盤面もキズだらけだったりするやつです。
こうしたジャンルは、その昔、レンタルビデオ店が大ブームだったバブル期にも、ボロボロのVHSソフトでよく見かけたもんです。それはそれで、二度とお目にかかれない映画とかけっこうあって、じつはわが家にもひと山あったりします。
でも、今回のここで売られていたのは、いちおう新品。日焼けもしていないジャケットが、ピシッとミント状態でパックされていました。
そう、これは500円映画でも売れ残っていた、ツワモノ中のツワモノだったのであります。なかには「500円映画劇場」で取り上げた映画もちらほら。
思えば、むかしの映画は高かった。
ビデオ登場以前は、映画のコレクションはフィルムでしかできませんでした。8ミリや16ミリの、ホンモノのフィルム。
当然、非常に高価なものだし、扱いもむずかしいうえ、映写機も安価ではない。この頃は映画のコレクションは、選ばれしごくごく一部の人々の特権だったのです。
この時期のコレクターとして有名だったのが、芦屋小雁さんで、世界で唯一のノーカット版「キング・コング」を所有しているとか聞いて、すごく羨ましかったもんだ(オリジナル版および各国公開版のカット部分を集めて繋いだんだとか)
そのころは、一般にフィルムが販売されるケースはほとんどなく、しかも発売されても数十万円はするシロモノだったので、とてもとても。
この状況が変わったのは1970年代の後半から家庭用ビデオデッキが普及しはじめたこと。
いまからは考えられないだろうが、当時のビデオデッキは20万円近くもしたのだが、それまでただただ観るしかなかったテレビの画像を所有できるという魅力は凄かった。おかげで、わが家のビデオデッキ(VHS)では、多くの映画(カット&吹き替え、CM入り)やプロレス中継が録画されたもんだ。ちなみにこの時期の生テープ(そう呼んだんだよ)は一本数千円以上した。
そして、テレビからの録画でない、正式ソフトが発売されはじめて、映画コレクター市場が一気に出来上がった。前に書いたと思うが、私のコレクション第1号は「007/ゴールドフィンガー」の直輸入盤。字幕なしトリミング有りのソフトに3万円以上払った。
VHSでは映画ソフトは、当初は種類も少なく、値段も確実に1タイトルが1万円以上した。それでも映画を買えるのが、そして所有していつでも好きな時に見られるのが嬉しくて、せっせと集めた。
そして80年代になってレーザーディスクの時代が来た【こちら参照】 ソフトは劇的に安くなって1万円を切った。でも7000円から8000円くらいはしたと思う。
レーザーディスクはレンタルがなかったので、基本的にVHSと並行して流通していた。やがてレンタルビデオのバブル期が来て、全国津々浦々に貸しビデオ屋がひしめき、その一つ一つに、さまざまな映画がぎっしり詰めこまれる時代になったのだ。
そのバブルがしぼむと、店頭にあふれていたVHSは、本当に店頭からあふれ出した。中古ビデオの氾濫期だ。さっきも書いた、中古ビデオのヤマモリ時代。ジャケットがあるのはマシなほうで、生テープ並みの見てくれのソフトも多く、中には生テープとして上からテレビ番組を録画される運命になったソフトもあったそうだ。私はそんな罰当たりな所業はしなかったが。
そして映画コレクションはDVDへ、そしてブルーレイディスクの時代へ。1タイトルが1000円内外で買えるようになったのは大変ありがたい。問題はその置き場所とみる時間の不足だけなんだが、その時代も見る見るうちに消え去ろうとしている。
もはや時代は、ネット配信の時代。
さまざまなサイトから映画そのものがインターネットを通じて配信され、それをいつでもどこでも見ることができるようになった。なかには一定額を支払うと、見放題のところもある。
もはや映画1本の値段は、ゼロに近くなってしまっている。おまけに保存場所の心配もなし。ありがたいことだ。
ただ、形あるものを買い集めて積み上げてニヤニヤするコレクターとしては、なんか違うんだよなぁ。ま、しょうもない根性ではありますが(笑)
ということで、これからも映画コレクター道に精進したいと思います。
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