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500円映画劇場「ターミネーター・ソルジャー」

500円映画業界ではタイトルのパクリは、ごく常識的な手法のひとつ。まあ大ヒット映画、名作映画にあやかるというか、おこぼれにアズかるというか。

そんなコバンザメ映画にも数々のトレンドがあるのだが、「ターミネーター」はそのひとつ。本欄でも「ターミネーター・ウォー」 を見たけれど、まあSFっぽいイメージがほしいときには安易に使えていいんだろう。

ちなみにallcinemaさんのデータベースで検索してみると、邦題に「ターミネーター」を織り込んだタイトルは40本近くヒットする。安直に使ってんじゃねぇよ(笑)

とはいえ、本家本元の「ターミネーター」だって、続編だリブートだスピンアウトだテレビ版だと自己増殖しているのだから、まあいいか。

さてこの「ターミネーター・ソルジャー」は2011年のテレビ用映画(ただしIMDBではDVDオリジナルに分類されている)

原題は「FLESH WOUNDS(生傷)」だから、ターミネーターもどきは日本の業者の責任か。

で、そのストーリーはというと……

南米某国で行方を絶った科学者たちの救出ためにジャングルに潜入する特殊コマンド部隊。だが現地でゲリラを掃討した彼らを待ち受けていたのは正体不明の怪物だった。体を透明化させて周囲の風景に溶け込み、どこからともなく牙を向く怪物に隊員たちは次々に倒されていく。仲間を失った隊長は、ついに1対1の闘いを挑む。

どっかで見たような、と思った人は正解。

じつはこの「あらすじ」、ある映画のものをそのままコピペして、数文字いじっただけなのだ。

はい、その元ネタは、1987年の「プレデター」

同じシュワルツェネガーだけど、「ターミネーター」じゃないんだね。

いやじつは、こんなマネをしたくなるのもしかたないくらい、この映画は「プレデター」そのまんまなのである。

違いといえば、襲ってくるのが異星の怪物じゃなくて出来損ないのサイボーグ兵士だという点と、あちらにくらべるとスケールが小さい点、そして圧倒的にツマラナイという点くらいか。

人気のある作品やヒット作、名作を素直にマネするのは、映画作りとしてはけっして間違った手法ではない。本家の「プレデター」だって、数々の続編やリブートやスピンアウトや対エイリアンやと自己増殖しているのだから、許されるのさ。

ただし、やるなら腹を決めてしっかりやってくれないと、オリジナルに失礼というものだろう。

この「ターミネーター・ソルジャー」、貧乏くささ全開なのが致命傷。シュワルツェネガーがいないのは仕方ないが、ほかは知らない俳優ばかり。ラテンアメリカ某国とされるジャングルも、ぜったい北米の広葉樹林だろ(ルイジアナでロケしたってエンドタイトルに出てたぞ) 例によって軍の秘密実験とその隠蔽噺になるんだが、ワシントン高官の自宅やオフィスも、そのへんのレンタル物件丸出しで高級感ゼロ。特殊部隊だそうだが、装備はモデルガンっぽいし、迷彩服すら用意できてない

そうなれば結果は言うまでもない。

出来上がったのは「プレデター」の劣化コピーにすぎなかった。お粗末。

こんな劣化コピーを作り上げたのは、製作・監督・脚本をワンマンでやった、こいつもけっこうなヤスモノ・キングのダン・ガルシア。テメエの名前は覚えたからな。

それでもかつてはこうした映画にも需要があった。

本家の「プレデター」は映画館では1800円、レンタルビデオ店でも1回500円、テレビ放送もゴールデンタイム期首特番の洋画劇場待ち。

対して、こちらのような映画は、500円の名画座、1回100円のレンタル、ケーブルテレビで何回も放送。

要するに、かつては本家映画の廉価版としての価値があったわけだ。

しかし、2010年代では映画の値段は格段に安くなった。本家「プレデター」や「ターミネーター」も、いつでも好きな時に、非常な安価で見られるようになったのだ。

かくして、こうした安直映画は絶滅危惧種になりつつあるようだ。

これからますます、ヤスモノ映画には受難の時代がくるのかもね。

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