見出し画像

大相撲無観客場所

新型コロナウィルスをめぐる騒動のおかげでJリーグの試合が延期。すっかり不機嫌になっているところに、今度は大相撲春場所の初日が迫ってきました。さあどうすんだ、中止か、無観客開催か、開催強硬か?

ヤキモキしていましたが、3月1日の臨時理事会で、観客を入れずに場所を行なう無観客開催に決まりました。ただし力士などに感染者が出た場合は、場所中でも開催を中止するというので油断はできませんが、まあ相撲を見られそうなので、ホッと一息です。

じつは大相撲というのはけっこうしぶとい存在で、いまの本場所制度が定着して優勝制度が施行された明治42年(1909年)以降、延期などはあっても、ほぼ毎年予定通りに本場所を開催してきています。

本場所の開催が予定されていながら中止になったのは、昭和7年(1932年)1月場所と平成23年(2011年)3月場所の、たったの2回だけなのです。

昭和7年1月場所は初日前に春秋園事件が起こって、関取62名のうち51名が大日本相撲協会を脱退、やむなく本場所開催を中止したのです。残留関取がたったの11名では本場所など開催できませんからね。

もっとも協会側もしぶとく、幕下から大量の繰り上げ昇進力士を抜擢して番付を再編成し、1カ月遅れの2月に本場所を開催しています。この際に十両から繰り上げになった力士の中に、のちに角聖とまで呼ばれる大横綱・双葉山がいたのが歴史の皮肉です。

もうひとつの平成23年3月場所は、例の八百長事件のおりで、まだ記憶に新しいところですね。

ということは、関東大震災でも太平洋戦争中でも東日本大震災でも、本場所は中止されていないってことです。

関東大震災は大正12年(1923年)ですが、このころは年間2場所制。1月と5月に本場所を開催しましたが、震災は9月だったので影響はされていません(ただし国技館は震災で焼失)

太平洋戦争中も本場所開催は維持されていました。昭和19年(1944年)には両国国技館が軍需工場として接収され、後楽園球場での晴天興行などに移行しましたし、空襲の影響などあって昭和20年1月場所は前年の11月に繰り上げたりもしましたが、なんとか本場所そのものは開催していたのです。

東日本大震災の時? ご記憶の方はあまりいらっしゃらないかもですが、震災発生の前に八百長事件で本場所開催は中止決定済みだったんですね。

そんなわけで、史上3度目の本場所中止が危惧されていたのですが、そうならなくてよかった。

ちなみに、以前の本場所開催中止はいずれも相撲界自体の問題が噴出してのことだったので、ある意味で自業自得だったわけですが、今回は完全な外憂。そういう意味でも、中止にならずによかったです。

報道等で出ていますが、観客を入れないで非公開の本場所は、昭和20年6月場所以来。太平洋戦争の終戦直前、東京大空襲の後で焼け野原となっていた中での開催だからよくやったもんだと思います。

4横綱が揃う番付でしたが、優勝したのは、前頭筆頭の備州山、成績は7戦全勝。さすがに戦局逼迫で開催は7日間だけでした(戦前までは15日間)

ただこの場所は無観客とはいっても、傷痍軍人などの招待者を入れていたので、厳密な意味での無観客ではなかったようです。前述した平成23年3月場所の中止を受けて翌5月場所を「技量審査場所」として開催した際にも有料入場客を入れずに無料開催したのと同じような形態だったわけですね。

なので、今回のような完全無観客は史上初……

……でもないのです。

天覧相撲です。

現在では国技館に天皇陛下にお越しいただいてご観覧いただく天覧相撲ですが、明治から昭和初期までは皇居内に出向いて相撲を開催するのが通例でした。もちろん一般観客が観戦するわけもなく、そういう意味では無観客場所だったわけですね。

まあそれが本場所に当たるかどうかはともかくですが、でも天覧相撲用の専用番付を作成した例もあるそうですから、無観客場所といってもいいのではないでしょうか。ちなみに現存する天覧相撲専用の番付表では、番付中央の蒙御免(ごめんこうむる)が、賜天覧(てんらんをたまわる)になっているそうです。

さて今回の無観客場所ですが、はたしてどんなことになるんでしょうか?

観客がいないのなら、観客向けにやっている部分は全部やめるのか。たとえば、力士の紹介や決まり手の場内アナウンス、物言いのさいの場内マイク説明、櫓太鼓でのお出迎えとお見送り、製作済みのはずのグッズ類はどうなるのか、懸賞はかかるのか……

それよりなにより、観客の歓声のない大相撲って、どんな雰囲気になるんでしょうかね? 通常の幕下以下のような雰囲気が近いかもしれませんが、あれでも歓声は起こるもので、完全無音は未知の世界です。

いっそのこと、雰囲気作りのために、十両以上の取組の際には、幕下以下の力士たちを桟敷席に入れて、応援合戦でもさせるというのはいかがでしょうかね。雰囲気は盛り上がると思いますが……あ、そもそも桟敷席を組む必要もないのかな。

出来れば普段どおりの本場所が見たかったのですが、事ここに至ってはいたしかたなし。せめても、ほとんど前例のない(そして今後もないことを祈ります)無観客場所をテレビ中継で楽しみましょう。

土俵上のことをいえば、前回、戦時中の無観客本場所は前記したように備州山の平幕優勝でした。朝乃山の大関盗りが場所の中心になるかとも思いますが、波乱の予感もします。一方でこういう非常時には張りきる白鵬がハッスルすることも容易に予想できますね。優勝争いや出世争いはいつもの場所と同じように盛り上がってほしいものです。

あ、テレビ中継もネット中継もするんですよね?

大相撲/丸いジャングル 目次

スポーツ雑記帳 目次


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?