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500円映画劇場「セミマゲドン」

はい、今回は2018年の「セミマゲドン」

タイトルだけでももう500円映画臭がプンプンと漂いますね。前回の「シャーケンシュタイン」に続いてのダジャレというかモジりというかのB級路線。そして、その期待をまったく裏切らない三文映画です。

原題は「CICADA!」 もうそのまんまですね。

ポスターも、そのまんま

なにやら問題ありげな栄養剤が公園の芝生に散布されます。散布していた人間が副作用かなんかで次々と頓死しますが、沁み込んだ薬剤は地中のセミの幼虫に作用し、17年後に突然変異を起こした殺人ゼミが大量発生。大群で押し寄せてロスアンジェルスの町を壊滅させるという趣向。

いわゆる「動物パニック映画」ですね。

動物パニックものは大別すると、単独で襲ってきても充分怖い大型動物(クマとか大蛇とか、言わずもがなのサメとか)ものと、タイマン勝負ならひとひねりで勝てるような小動物(ネズミとか小鳥とかムシとかですね)が群れで襲ってくるものがありますね。もちろんそこに無数のバリエーションが存在するわけですが。

「セミマゲドン」では突然変異で大型化してパワーアップした殺人ゼミが主役ですが、単独ではそう無敵というわけではなく、バットでブッ叩くだけでも死にますし、拳銃で撃てば爆発して吹っ飛びます。けっこう弱いぞ。でも、何匹いるのかわからないくらいの巨大な群れが大発生するので侮れません。そういう意味では小動物モノの王道ですね。

なにしろ大群で出現するので、正面のセミに対処しているうちに背後を取られてやられてしまうパターンがほとんど。なんとなく説得力あります。首の後ろから吻を突き刺されて惨死です。体液を吸われのですが、それでなんでか吸われた人間の頭が破裂したりします。サービスですかね。

そのうえ、映画が進むにつれてこのセミども、なぜかさらにパワーアップして体のサイズも大きくなり、人間の首やら胴やら手足やらを簡単に引きちぎったりします。派手さが足りないと思ってさらにサービスしたつもりなんかね。なんか設定がいいかげんだよねぇ。

胴体はぬいぐるみ(ハリボテ) 羽だけはCGというチープさ

こんなふうに紹介すると、ちょっとは迫力ありそうですが、ご覧のとおりのチープさなんで、ちょっとも怖くありません。さらに言うならば、人々がセミにやられるシーンも、安っぽいヤル気ゼロのCGなので、悪趣味ですが怖さは低レベルですね。

俳優陣も、ヤル気ゼロなのかそもそも演技力がないのか、まったく下手クソな演技のオンパレードで、まったく盛り上がりません。落ちぶれた元メジャーリーガー、その恋人のストリッパー、友人のバーテンダー、そして昆虫研究の大学生の4人が中心で、いちおうそれぞれにドラマっぽい設定はあり、なんとなくパニック映画っぽい雰囲気だけは出そうとしているんですが、このメンバーでは無理でしたね。

けっきょくのところ、安物CGをただただ呆然と眺めるだけの映画に成り果てましたとさ。

ただこんな映画なんですが、じつはリアルな部分もあることはあります。

じつは、映画の背景になるセミの大量発生は、実際にアメリカで起きることなんです。

日本では毎年のように夏になると地中から現われるセミですが、北アメリカに生息するセミは17年に一度だけ、まとめて発生するものがあるのです。これを周期ゼミと呼ぶんだそうで、地域ごとに発生するサイクルが違うので北米全体ではどこかで毎年セミは発生するんですが、ある地域に限れば17年に一度しかセミの成虫は見られないんですね。だから、生まれてからハイスクールを卒業するまで一度もセミを見ない子供もいるわけです。知らなかったね。

この映画を見なければ、たぶんそんなことは一生のあいだ知らないままで終わったかもしれません。いや、知らなかったら知らなかったで全然かまわない知識ですがね。

毎度のことですが、ジャケットのほうが100倍カッコイイ

あ、念のために言っておきますが、演技陣はマジメに演じようとしていますが、演出班、そしてなかでもCG班を筆頭にした製作陣は(たぶん途中で)シリアスなパニック映画路線は放棄して、コメディ方向に舵を切ったようです。

だから、amazonなどの配信サイトでも、IMDBやオールシネマをはじめとする映画データベースでも、この映画のジャンルは「コメディ」に分類されていますね。

まあそうするしかないんでしょうけど、笑えないぞ

日本版も精いっぱい盛ってます

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