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500円映画劇場「地球が凍りつく日」

1970年代に大流行した『ノストラダムスの大予言』(映画にまでなった)の「1999年7の月に人類は滅亡する」を例に引くまでもなく、人類は人類が滅亡する話が大好きである。

なので、人類最後の日を描いたり、(微妙な言い回しだが)人類滅亡後の人類を描いたりする映画は、それこそ数えきれないくらいある。当「500円映画劇場」でも何本かにぶち当たってきた。

とはいっても、「地球が凍りつく日」というこのタイトルを見て、おお人類滅亡ものかと思うのは、まだまだこの世界に優しいひとだけだろう。原題の「THE LAST WINTER」を見ても、なおそう思えるが。

もちろん人類滅亡ものの大部分は、超大作スペクタクルSF映画なんかではなく、エキストラの人数を極端に減らしただけのサバイバル映画だったりするし、ヤスモノ映画でもけっこうあつかわれる題材なので、私はだまされないぞ。

しかし、「地球が凍りつく」というのはなかなか上手い邦題で、誰しもやはり「とつじょ襲来した氷河期が」みたいな映画を思い浮かべるだろう。DVDジャケットも,そこはかとなくそんなイメージを出しているし、売りやすさを第一に考えるヤスモノ映画商売としては、じゅうぶんである。

いうまでもなく、この映画の中味はそんなものではない

石油採掘のための調査でアラスカ北部の野生動物保護区に入った調査隊の8人。問題の場所は1986年に同じような調査隊が入った地点だったが、なぜかその結果は極秘となっていた。やがて隊員の一人が奇妙な幻視を見たことから、次々と奇怪な事件が調査隊を襲う……

地球が凍りつくなんてことはなく、最初から凍ってる場所じゃないか。しかもその氷が溶けはじめたから起きた事件じゃないか。タイトルと中身とが、まるで逆。

どちらかといえば、極限の限定状況で展開するサスペンス・ホラー。「遊星からの物体X」あたりを思い浮かべておけばいいと思う。

いいんだよ、そもそもタイトルと映画の中身が無関係なことも多い業界なんだから。

この映画の問題点は、だからそういった些末なことではなく、もっと根本的なことだ。

つまらないのだ。

じつはちゃんとした劇場公開用の映画のくせに、そこらのヤスモノ映画も顔負けのつまらなさなのだ。

映画の予算規模はきちんとしている。主演はロン・パールマン。あの「パシフィック・リム」でも強い印象を残した、ちゃんと名の通った俳優だし、ちゃんとアラスカやアイスランドの大雪原でロケを敢行している。空撮も豊富だし、ちゃんとした映画なのだ。

褒めるべきところは褒めておこう。舞台のほとんどを占める大氷原の撮影はじつに見事だ。ちゃんと雪と氷に閉ざされてる感が味わえる。この点は、数多くある極地サスペンス映画と比しても、けっして見劣りしていない。

多くのヤスモノ映画が、このへんの課題をクリアできていない(そもそもクリアしようとしない)のに対して、さすがは劇場用映画、きちんとすべきことはしている。

にもかかわらず、つまらないのだ。

映画のテンポが悪い。脚本が破たんしている。人物のキャラクターが不明瞭。説明が不足などなど欠点を挙げたらキリがないが……

結局のところなにをやりたい映画だったのかはっきりしない。極地サスペンスなのか、SFホラーなのか、地球環境問題アピールなのか。

課題以前の問題をクリアできていないのだ。

これでは、あまたの志の低いヤスモノ映画よりも、ある意味ダメな映画ではないか。

前記したように、この映画、それなりの陣容を整え、予算も確保した映画らしい。なのに、アメリカではもちろん世界各国でついに商業的な劇場にはかからず、映画祭などの上映で終わっている。そして日本では500円ワゴン入り

という結果が、すべて。

もう、ラスト付近でようやく現われる「脅威」の正体やそのビジュアルとか、やらずもがなのラストの落ちとか、もうそのへんまでツッコむ気には、なれなかったな。

2006年のアメリカ/アイスランド合作映画

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