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大西部ドロボー列伝

ドロボー映画の記事で、古今のドロボー映画リストをご紹介して、そこに抜けてる作品についてうだうだ書きましたね【こちら参照】

で、そのリストを見返していて、タイヘンなことに気づきました。

ああっ、あの重要作品が抜けてるじゃないか!(大げさですね)

それはこの作品。

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はい、映画史上最初の劇映画ともいわれる、1903年の「大列車強盗(THE GREAT TRAIN ROBBERY)」

西部の無法者が列車を襲うだけの12分の作品ですが、タイトルが示すとおり、これぞ映画史上最初のドロボー映画ですね。こんな重要作品を落としてはいけないでしょう、ウィキぺディアさん。

で、そう思ったら、もうひとつ気づきました。

このリスト、西部劇映画がまったく入ってないぞ。これは由々しきことだ。

そこで、西部劇といえばこの人、ジョン・ウェイン主演のドロボー映画をお送りしましょう。

そもそもヒーロー役をもっぱらとするジョン・ウェインとドロボー映画って噛み合わない気がしますが、意外とあるもんです。

まずは、ジョン・ウェインとカーク・ダグラスのビッグスター共演による1967年の「戦う幌馬車(THE WAR WAGON)」

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警戒厳重な輸送馬車を襲って金塊を奪おうという、真っ向ドロボー映画。そのためにいろいろな特技を持った男たちを集めるくだりなど、きっちりこのジャンルの条件を満たしています。

職人監督バート・ケネディの腕も見どころのひとつ。全体に歯切れもよく、見逃せないドロボー映画です。

見逃せないんですが、肝心の馬車襲撃の作戦が、意外とシンプルなのがちょっと残念。予想もしなかったトリックとか、大胆不敵な作戦とかがあまりなく、ただワーッと襲って分捕るだけなのが物足りないですね。

もっともそれがジョン・ウェインらしいといえばそうなんですが。

その点、けっこう良く出来た強盗計画が登場するのがこちら。

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ジョン・ウェインと巨匠ハワード・ホークス監督が手を組んだ「リオ・ロボ(RIO LOBO)」(1970年)

「リオ・ブラボー」「エル・ドラド」とならぶ三部作のラストを飾る大型ウェスタン。監督の遺作でもあります。

映画そのものはドロボー映画ではないのですが、冒頭に出てくる、南北戦争下での南軍ゲリラによる北軍の輸送列車襲撃計画はなかなか見事な手際。

線路に障害物を置いて列車をストップさせ、護衛付きの装甲貨車には「あるモノ」を投げ込んで無力化するという頭脳プレー。いかにも西部劇らしい、なかなか良く出来た強盗計画です。

ちなみに、この襲撃をリードする南軍の大尉を演じるのは、メキシコの俳優ホルヘ・リベロなのですが、この男、もうじき「サント映画完全チェック」でお目にかかるはず。覚えておこう。

この大尉殿に襲撃される列車の指揮を執っていたのが輸送部隊のジョン・ウェイン大佐で、戦争終了後にこの二人が手を組んで列車襲撃の黒幕を追うというのがメインストーリー。

まぁこちらはそこそこ意外な展開がある程度で、冒頭の襲撃場面ほど出来が良くないのはマイナスでした。

もう一本、ジョン・ウェイン最後期の西部劇である1972年の「大列車強盗(THE TRAIN ROBBERS)」 最初の「大列車強盗」とは原題が違いますね。

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このあとのジョン・ウェインの西部劇は「ビッグケーヒル」「オレゴン魂」そして「ラスト・シューティスト」の3本だけ。正統派ウェスタンの最末期の作品なのです。

といっても、タイトルにもなっている列車強盗は数年前の出来事で、映画では直接は描かれません。その事件の首謀者の男は、莫大な金塊を独り占めにし、人知れずどこかに隠したまま死亡。

ただ一人その隠し場所を知る未亡人を助けて、強盗の仲間たちと金塊の争奪戦を繰り広げるのが、ウェイン率いるプロフェッショナルたち。だから、ドロボー映画というよりは「誰かをガードして目的地まで連れて行く」なのですが……ストーリーの中核にあるのが強盗事件なのは間違いないし、ラストの鮮やかなドンデン返しはドロボー映画の醍醐味に近いものがあります。

監督は「戦う幌馬車」と同じバート・ケネディ、ここでも軽快かつ快調な腕を見せてくれています。さすがに職人ですねぇ。

そもそもウェスタン映画の描く時代は、開拓期の無法の時代。列車強盗、銀行強盗をはじめ、略奪や襲撃は日常茶飯事(映画のなかではね) 

だから、これ以外にもドロボー西部劇はたくさんあるのですが、それも当たり前ですかね。

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