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500円映画劇場「マンモス VS サーベルタイガー/氷河期大戦争」

前から何度も書いているように、500円映画の世界は「玉石混交」どころか「石石混交」なわけだが、なかにはもっと油断がならないモノもあるというお話し。

「マンモス VS サーベルタイガー/氷河期大戦争」(The Mammoth:Titans of the Ice Age)2010年の作品。このタイトルとジャケットのイラストを見て……

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あとを絶たぬ核実験のため北極の氷が解け、そこから放射能の影響で巨大化した古代生物のサーベルタイガーが出現。いっぽう地球温暖化でアラスカの凍土からよみがえった巨大マンモスの群れが食糧を求めて北米大陸を南下。両者は引かれあうように、ニューヨークを目指す。軍隊も警察も巨獣たちの進撃を止められない。依頼を受けた古生物学者たちは奇想天外な作戦を立案するが……

すみません、ウソです。そんな映画じゃないです。

生まれてすぐ、サーベルタイガーに襲われながらも、奇跡的に生き残った子マンモス、マンムーを主人公に、氷河期の荒々しい自然の中、つぎつぎ現れる敵や困難に、強い家族の絆で立ち向かってゆくマンモス・ファミリーの姿を描いた、大氷河期アドベンチャー!

おわかりだろう。CGを駆使したほぼアニメ作品だが、真面目な教育目的で作られたようなドキュメンタリーみたいなものなのである。韓国TVの教育チャンネルEBSが製作したもので、いちおう劇場用の映画らしい。

いやいや、このDVD、絶対そんなジャンルに見えないでしょ

「自然科学ドキュメンタリー」というのはたしかに確立されたジャンル。TVでも古くは「野生の王国」とか「わくわく動物ランド」、現在も放送中の「ダーウィンが来た!」とかあるし、専門のチャンネルである「ナショナル・ジオグラフィック・チャンネル」や「ヒストリーチャンネル」にはその手の番組がたくさんある。劇場映画でも、私が初めて見たシネラマ映画「巨象の大陸」(1971年)がそうだったし、「砂漠は生きている」(1953年)「沈黙の世界」(1956年)といった名作が思い浮かぶ。

もっとも本作は、正確にはドキュメンタリーではない。

なにしろ舞台はマンモスが闊歩していた氷河期なのだから、事実を記録撮影できるはずもない。もちろん、マンモスの子どもに名前がついてるワケがないし、マンモス・ファミリーって「超大家族」かよとツッコみたくなる。

私は古生物学マニアではないので、ここに出てくるマンモスやサーベルタイガーの形状や生態が正確がどうかはわからないが、それにしてもこんなふうに擬人化されてしまうと、ウサン臭さが増しているように感じる。まぁよくできた作り物だよな。

そのへんは製作サイドも承知の上だろう。いやそもそもは素直な子供やファミリー層を観客に想定しているのだろうから、マニアックな500円映画ファンのクレームなど気にしてないよな。

要するにジャンル違い。阪神タイガーズがBリーグに出てくるようなものだ。

だから問題は、こんな500円映画風の邦題をつけ、怪獣映画ばりのイラストジャケットをまとわせ、あまつさえ「エイリアン」とか「メガシャーク」とか「プレデター」とかが並ぶワゴン棚にまぎれこませた日本サイドにあるんだろう。

そして、ロクにジャケットのあらすじすら読まずに買いこんで、ほのかな期待を抱いて再生し、唖然としたあげくにスジ違いの文句をいう私こそが、最大の問題なのは言うまでもない。反省します(笑)

困ったもんだ

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ちなみにアメリカでも英語版が発売されているようだが、このとおり、ぐっとまともなイメージで、わりとキチンと内容が伝わってくる。サーベルタイガーどこにもいないし。

でもこれだったら、私は買わなかっただろうな(笑)

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