500円映画劇場「エイリアン オリジン」

500円映画でやたらと数があるのが「エイリアン」パクリ企画。第1回の「エイリアンVSアバター」に続いて、そうしたエイリアン一族の一員をご紹介しよう。

エイリアン オリジン」は2012年のオリジナル・ビデオ作品。原題はALIEN ORIGINだから、少なくとも邦題に嘘はないが、多大な期待を持ってはいけないのは当然のこと。

とはいえ、じつはこの作品、出だしは悪くない

任務を帯びて中米ベリーズのジャングルに潜入した特殊部隊と、それを取材するテレビクルーが怪事件に遭遇するのだが、最初に発見するのが、密林の真ん中に遺棄されているクルーザー。なにせ海岸線から250キロも離れている場所なので、腕利きの特殊部隊員たちもうろたえる。やがて、近くのマヤ遺跡を調査中のアメリカの考古学者が行方不明との知らせが入り、彼らは捜索と救出に向かうのだが……ちょっとドキドキするぞ

映画は、取材クルーのカメラや、隊員たちのもつ電子機器の記録画像で構成される(この手法をPOV〔Point of view〕と呼ぶ)。「彼らは行方不明となり、撮影機材とデータだけが発見された」っていうやつだ。臨場感と迫力のある画像で、異様なリアリティが出る……はずだったんだよねえ。

こうしたドキュメンタリー仕立ての手法は、さほど目新しいわけでもない。ざっとあげても「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」「クローバーフィールド」「パラノーマル・アクティビティ」などがあるし、古くは「食人族」などのマカロニ式モンドムービーの常套手段だった。

もっとも、フィルムの時代にはなかなかリアリティを感じにくい手法だった。16ミリフィルムでも一巻10分あまりしか撮影できないはずのフィルムに、事件の一部始終が記録されているのもヘンな話で、いつフィルム入れ替えたんだよとか、未現像のままでよく無事だったなとか、ツッコミどころになっていたもんだ。未開のジャングルで盛大に照明があたっていたりとかね。デジタル時代になって、そのへんはかなりマシになった。

とは言っても、これ、見ていてイライラするんだよね。「発見された画像を未編集で」ってノリなんだから当然なんだが、荒れた画像が多く、手ぶれやピンボケ、誰も写っていない画面とかが平然と使われるせいだ。見づらいこと、このうえない。

おまけに状況説明がどうしても不足する。誰が何をしていて、今どこにいるのかといった情報が、極端に不足するのだ。そう思いながら見ていると、ふつうの映画のそういった「叙述」の仕組みってのが、非常に巧みに構築されたスグレモノだと、逆説的によくわかるよ。映画は100年かけてその仕組みを熟成させてきたのだ。なのにその歴史を投げ捨てるこの疑似ドキュメンタリー手法、そうそう使ってうまくいくものじゃないのが、道理だ。

ただし、この「エイリアン オリジン」の問題点は、その手法自体にあるのではない。問題なのは、まったく未整理で、つじつまの合わないストーリーラインなのだ。いくら疑似ドキュメンタリー手法とは言っても、シナリオくらいちゃんとしろよな。

冒頭に出てきた密林の真ん中に遺棄されているクルーザーの謎にしても、けっきょくは投げっぱなしで説明ゼロ。そのほかにも、映画を最後まできっちり見ても残る、数々の疑問がある。というか、何ひとつ解明されない。「彼らを襲ってきたのは何なんだ?」「あいつら、なんでここにいるんだ?」「考古学者たちの調査と奴らの襲来は関係あるのか?」全部謎のまま。

最後の最後に「説明」めいたワンカットが入っているが、遺伝子がどうとかいう話で、まるで説明になってない。知りたいの、そこじゃない。それにジャングルの真ん中でどうやって遺伝子分析したんだって、さらなるツッコミどころを増やしただけだ。

異様な迫力があるのは、認めよう。使い古された手法をうまく活かしたことも誉めていいだろう。500円映画にしては

でも見終わって残ったものは、イライラだけだった。これじゃあ、ダメだよな(笑)

だいたい、密林で異星の怪物と特殊部隊が戦うってコンセプトはあの「プレデター」そのまんまだし、ドキュメンタリー仕立ての手法も先に書いたように古くからあるもの。「エイリアン オリジン」というタイトルのわりには、オリジナルな部分はあまりない。看板に偽りありだよなぁ。

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