500円映画劇場「カンフー麻雀」

今回は、2005年の「カンフー麻雀」 原題は「雀聖」

いやちょっと待て、これ500円映画でいいのか? 確かに、500円ワゴンで売ってたし、劇場未公開作品だけどさ。

だって監督は、あのバリー・ウォン(ウォン・ジン/王晶)だぞ。主演だってジャッキー・チェンやサモ・ハンやユン・ピョウと同じ「七小福」出身の、ユン・ワー(元華)とユン・チウ(元秋)のコンビ。

そんなに上等な映画でないのは確かだが、それでも香港ではそれなりにヒットしたらしい映画なのに、なんでこんな映画の墓場みたいなワゴンに?

ただ、なんとなく納得いくのは、監督がバリー・ウォン先生だからかな。

もちろん、香港映画のヒット記録を塗り替えた「ゴッド・ギャンブラー 賭神」の監督さんで、ジャッキー・チェンの「シティハンター」も手掛けているんだから、まあ一流の監督さんなんだろうが、じつはこの人、けっこう乱作監督で、映画の出来的にはイマイチ信用おけないんだよね。

で、ジャケットとか見てみると、大ヒット作となったチャウ・シンチーの「カンフー・ハッスル」で目立っていた家主夫婦がそのまんまスライドしてきたようなキャラで、主役の二人がドーン。いくら同じ俳優さんだからってさあ。

いやいや、前年のヒット作を早くもパクったな、バリー先生。

ストーリーは、これより15年くらい前の1980年代末ごろに大流行したギャンブル映画そのまんま。バリー先生、たしかにこのブームの火付け役だったわけだから、まあ権利はあるんだろうが、それにしても15年くらい遅いぞ(笑)

超人的記憶力のある青年が、イカサマ男とコンビを組んで賭けマージャンで大儲け。ところが調子に乗って大ボスの情婦と恋仲になったことから制裁されてしまう。イカサマ男と、大ボスのあまりの仕打ちに怒った養母の後押しで立ち直った青年は、麻雀アジア選手権で見事に大ボスを倒し、復讐する。

ね、ヒネリもなんもないギャンブル映画でしょ。

この平々凡々たるストーリーに、大量のギャグをぶち込んであって、いかにもバリー先生らしい仕上がりにはなっている。

そのギャグが面白ければよかったんだけど、こちらは15年どころか、1960年代風。

そういえばバリー先生、売り出し期や全盛期のころの映画(「男たちのバッカ野郎」とか)も、その時点ですでに「古くさいなぁ」と思わせるギャグが多かったんだった。その後、進化してないぞ、先生。

いや、少しは進化してた。

ギャグに、CGを使ってるんだ。これは昔はやってなかったよなぁ(あ、まだCGがなかったからか)

ただね、カンフーママさん(青年の養母。演じるのはもちろんユン・チウ)の一撃で吹っ飛んだイカサマ男(ユン・ワー)の描写をマンガタッチでやったからって、それを「CGを駆使したギャグ」とかいわれてもなあ。第一、ちっとも面白くない。

そう、昭和の昔に日本のギャグアニメでやってたみたいなギャグを、実写+CGで今さら見せられてもねえ。

とはいえ、じつは麻雀名人だったママさんが青年に「麻雀奥義10か条」を授けるシーンなどは、このギャグがちょっとだけ効いていた。10か条の条文が次々に画面に踊るのだ(比喩じゃなくてホントに踊る) いかにもバリー先生らしいオオゲサな描写が炸裂!

でもこのシーンも中途半端なんだ。だって10か条なのに、5つしかやらない。そこ、省略しちゃダメだろ。

「香港は黄金でできているが、その地下には死体が埋まっている。見えないだけ」なんて、けっこういいセリフもあるんだけどねえ。でも、中盤の展開が、シャレにならないくらい悲惨なのもマイナス。ここ、笑えないんだよ、まったく。

というような感想の数々も、実は30年くらい前に、バリー・ウォン作品を見るたびに思っていたのと大差ない。その頃からの評価「ハマった時は面白いけど、そう滅多にハマらない」は、21世紀になっても変わらなかったってことか。

とか何とか言ったが、バリー先生、監督だけでなく、製作や脚本もこなすなど、けっして「進歩のない監督さん」なだけではない、香港映画の大立者。だからやっぱり、ジム・ウィノースキーなんかといっしょにしちゃいけないし、本来ならば500円映画とは「格」の違う作品であるべきでしょう。

まあ、今回はたまたま外しただけだったということにしておこう。

ホントかよ(笑)

ちなみに同じ2005年中に、早くも続編の「雀聖2 自摸天后」が、そして翌年には「雀聖3 自摸三百番」が作られている。そしてどちらも、当然ながら日本では完全未公開。いつの日か、国内発売されるだろうか。まあ、ぜひ見たいわけでもないがね。

  500円映画劇場 目次

【追記】

本文をアップしたあとでつらつらと調べていたら、ビックリ。

カンフーママさんを演じたユン・チウ(元秋)、なんと「007/黄金銃を持つ男」で、ロジャー・ムーアのジェイムズ・ボンドを空手スクールで助ける二人のカンフー・ガールの片割れを演じていたんだって。

あわてて動画を見てみたら、うんまあ確かにそうらしい。なにしろ30年からの時間が経過しているから(そのころは、ママさんもまだ少女だった)、絶対に間違いなしとはいえないが。ちなみにIMDBでは「クレジットなし」になってるね。

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