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気持ちのよい色合わせと形を即興でつくる【enoguシリーズ #1】

モレスキンのスケッチブックを買った。特に目的はなく、文房具好きのコレクションの感覚で買ったこのスケッチブックに何を描こうかと、家に帰ってから考えた。

せっかく紙もしっかりしていて裏写りもしにくいのだから、と、えのぐを使いたいなと思った。透明水彩は日頃使っているしな、そしたらアクリルガッシュだろうか。と考えていたら、大学入りたての時に課題として出された色彩構成と平面構成を思い出した。

物凄い時間をかけて、コンパスや定規を使って平面構成を考え、色をどう乗せようか夜中にコツコツ仕上げた作品。翌日に、講評でみんなでいっせいに並べた時に、色が気持ち悪いことに今更気づいた。実際、評価もあまりよくなく、私って色彩感覚よくないんだなと思い知った思い出の課題。

その時からなんとなく「色」に苦手意識があったのだけれど、それ以降イラストを透明水彩絵具で描くようになったり、いろんな作品を見たり作ったりしているうちにどうやら克服したらしい。というのも、卒業制作の講評で作品の「色づかい」をとても褒めてもらえたのだった。それで、4年の時を経てようやく克服できたと胸を張っていいのかなと思えた。

そんなことを思い出しながら、あの課題へのリベンジに燃えつつ、このかっこいいモレスキンのスケッチブックに、アクリルガッシュで色彩・平面構成をやろうと決めた。

adobeなどのソフトをはじめとしてデジタルにすっかり慣れてしまうと、たまにコマンド+Zで「元に戻す」ができないことに恐怖を覚えたりする。特に、油彩と違って、水彩は基本的に大胆な修正が効かない。このスケッチブックでは、下図は描かず、えのぐを感覚だけで乗せて即興で図案を制作することをルールにした。

この即興性がとても面白い。一色一色乗せながら、次は何色が欲しいだろうか、とか。この色は少なめ、この色は多めに使ってみよう、とか。感覚だけで描いていく。

そうして出来上がった図案がenoguシリーズのもとになっている。

元々、この図案から何かを作ろうなんて考えていなかった。けれど、ロンドン芸術大学の留学中にどんな小さな発見やどうでも良さげなスケッチでも、立派なアイデアの種になることを学んだこともあって、Hi, thereの1作品目を考えている時にふとあのモレスキンの図案を思い出したのだ。

アクセサリーになることを意図していない図案が、アクセサリーになったとき、どんな表情をもつのだろうと気になった。

アクセサリーを作ろうと思って作った試作のアクセサリーはどれもどこかで見たことのある形だし、シリーズ化させるにも限度を感じた。けれど、意図せず描いた、しかも一発描きでもう2度と同じ色も作れないし同じ形にもならない偶然性の塊のようなこの図案をどうにかしてアクセサリーにしたら、自分の脳みそでは思いつかない面白い作品になる予感がした。

しかも、この図案は無限に作れる。よって結構なボリュームのシリーズが生まれるだろうし、いつの日かズラッと全シリーズのアクセサリーを並べて展示なんてしてみたらカッコいいんじゃないだろうか。各シリーズごとに図案の原画を額装して飾ったりして。あ、いいじゃないか、面白そう!と、ピンときて、enoguシリーズの構想が固まった。

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