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そうして小さなモビールのピアスになった【enoguシリーズ #2】

モレスキンに描いた図案を眺めながら、これを立体にしてみようと思いついた。

ドイツで生まれた「ポリマークレイ」という樹脂で作られた粘土を素材として使いたいと色彩構成の図案を思い出す前から決めていたので、すんなりとこの粘土を使ってあの図案の色と形をひとつひとつ再現してみようとなった。

粘土にはいろんな色があるのだが、もちろんえのぐで作った色がそのままドンピシャで在ることはない。そういうわけで、はかり一色一色粘土の重さを測って比率をメモしながら、いろんな色の粘土を混ぜて限りなくえのぐで作った色に近い色の粘土を作ることから始まった。

色が出来上がったら次はどう成形していくかを考える。パスタマシンのような機械でくるくるハンドルを回してのばした粘土を成形する。この成形方法はいろいろ試した結果、オリジナルの型で抜くことに決定した。

そういうわけで、薄いアルミ板を切り分けて、ペンチを駆使してひとつひとつ型まで手作りしている。こうして出来上がったたくさんのオリジナル型は並べるとなんともかわいい。

そこから、図案の配置をもとにパーツをどう組み合わせていくか考えていく中で、モビールを参考にしてみようとなった。粘土のパーツがいくつかモビールのように耳の下で浮いて揺れているのって素敵で面白そうじゃないか。さすがに本物のモビールのようにテグスなどの細い糸は、髪や手、服によく触れるピアスには向いていないので真鍮のピンでつなぎ合わせた。

そこから、粘土で作られているという痕跡が残らないくらいに丁寧に磨き上げ、最後にはコーティングをして水に濡れても痛まないよう仕上げている。こうして、enoguシリーズ第一弾の小さなモビールのようなアクセサリーが完成した。

enoguシリーズのピアス/イヤリングはこうしたストーリを辿って、作り上げられている。手仕事で制作するからこそ、細部まで丁寧に気持ちを込めて作りたい。

やすりの時間を削ったり、型をわざわざ作らず既製品の正円のクッキー型を使って商品の値段を低くすることももちろんできる。色だってわざわざ図案通りの色にしなくたって、2色を1:1で混ぜるとか、もっと簡素化しちゃえばいい。けれど、Hi, thereでは、小さなスタジオでじっくり時間をかけて丁寧に手作りできるからこそ生まれる美しさや価値を大事にしたい。

エキナカのアクセサリーショップに売っている3000円くらいのアクセサリーでも見た目が可愛けりゃいいのだけれど、「えのぐで色と形を吟味して描いた図案が小さなモビールとなって耳もとを彩る」というストーリーごと楽しめるアクセサリーなら、モノを買うことによって得られる心の豊かさが全然違うんじゃないだろうか。

だから、値段という単なる数字だけではなく、こうしてモノの生まれた背景・物語も一緒に知ってもらいたい。そして、こんな想いに共鳴してくれる人がいたら嬉しいし、そんな人にちゃんと届けたいと思う。


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