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#11. 『トリセツ』 (by Matt Cab) 和訳


つい最近活動を休止した西野カナが結婚したそうだ。

彼女や曲にとくべつ愛着があるわけではないけれども、英語オタクとしては、彼女の代表曲である『トリセツ』の英語カバーがあることはぜひ紹介しておきたい。

歌っているのはサンフランシスコ出身の Matt Cab (マット・キャブ) という男性。

彼は西野カナが歌った「彼女から彼氏へ」の『トリセツ』を受けて、それにいわば応えるような「彼氏から彼女へ」の歌詞をつづっている。

「原曲で次々に繰り出された彼女からの要望に、どのように彼氏が応えるのか」...... そこが歌詞の聞きどころである。



■ 歌詞と和訳


Girl, I just wanna thank you for choosing me.
(このぼくを選んでくれてどうもありがとう)
No, I'm not gonna let you down.
(君を悲しませたりはしない)
And I know you might be worried about a couple of things.
(君がいくつかのことを心配してるのはわかってる)
But I never wanna make you frown.
(でも悲しい顔はさせない)
Always, respect you.
(いつも、尊敬してる)
I never wanna see you cry.
(君が泣いているのは絶対に見たくない)
Even though I know I'm nothing close to perfect,
(ぼくが完璧なんかにほど遠いってわかってるけど、)
Baby, I promise I can be your guy.
(君にふさわしい男になるって約束する)

I'll try my best to understand when you're in a bad mood,
(君の機嫌が悪いときには理解しようと努めるよ、)
Even if you're acting rude.
(たとえ反抗してきてもね)
And, you know, I really hate it when we have a stupid fight,
(それから、ぼくはつまらないケンカをするのが嫌いなんだ、)
Right before we say good night.
(もうおやすみっていうときにさ)
But I'll always forgive you cuz you'd do the same.
(でもいつでも君を許すよ、だって君もそうするでしょ)
Girl, you know, I will always be right here for you.
(ぼくはいつでも君のためここにいるよ)

Even when your hair is starting to turn a little grey,
(もしも君の髪がすこし白くなってきても、)
I promise my eyes won't stray.
(誓ってぼくは目移りしたりなんかしない)
I won't forget the first time I saw your face.
(初めて君の顔を見たときのことを忘れない)
Baby, my love for you will never change.
(ベイビー、ぼくの愛はずっと変わらないよ)

Girl, I promise I will always treat you right.
(約束するよ、いつも君を大切にする)
I know I'm not perfect,
(わかってる、ぼくは完璧じゃない、)
Yeah, I can be a handful at times.
(手に負えなくなっちゃうときもある)
But girl, I swear I'll always treasure you.
(でも誓う、君をいつまでも大切にする)
So, if you just say the word,
(だから君があの言葉を言ってくれたら、)
I'll love you till the end.
(最後まで愛し続けるよ)

I might not be able to show you the world.
(世界旅行には行けないかもしれない)
No, I can't afford fancy diamonds and pearls.
(それにダイヤモンドや真珠だって買えない)
But I can be the one you need.
(でも君が必要とする男にはなれる)
Girl, you can put your trust in me.
(ぼくを信頼していいからね)
All of my heart is yours.
(ぼくの心は君のもの)
No, you don't gotta worry.
(だから心配しなくていい)
I'll give you all the best of me.
(ぼくのすべてを君にささげるから)

Girl, I promise I will always treat you right.
(約束するよ、いつも君を大切にする)
I know I'm not perfect,
(わかってる、ぼくは完璧じゃない、)
Yeah, I can be a handful at times.
(手に負えなくなっちゃうときもある)
But girl, I swear I'll always treasure you.
(でも誓う、君をいつまでも大切にする)
So, if you just say the word,
(だから君があの言葉を言ってくれたら、)
I'll love you till the end.
(最後まで愛し続けるよ)


■ 原曲との対応ポイント


西野カナの原曲では、彼女が「急に不機嫌になることがあります」と歌っている部分で、カバー版の男性が "I'll try my best to understand when you're in a bad mood" (きみの機嫌が悪いときには理解しようと努めるよ) と優しく応えていたり、

原曲が「たまには旅行にも連れてって/記念日にはオシャレなディナーを」とねだっているところで、"I might not be able to show you the world / No, I can't afford fancy diamonds and pearls" (世界旅行には行けないかもしれない/それにダイヤモンドや真珠だって買えない) と穏やかに断りを入れていたりなど、

このカバーには原曲歌詞との対応ポイントがいくつかあるのだが、そのうち特に気に入った部分を 2 箇所、取り上げてみる。


1. 1 番 B メロ

(原)もしもすこし古くなってきて
目移りするときは


(英)Even when your hair is starting to turn a little grey,
I promise my eyes won't stray
もしも君の髪がすこし白くなってきても、
誓ってぼくは目移りしたりなんかしない

ここでの stray というのは、「1. コースから外れる,道に迷う;2.(教えから)外れる;3.(話題などが本筋から)外れる,脱線する」など、「(本来あるべきところから外れて)さまよう」というような意味の動詞なので、"my eyes won't stray" というのは、「ぼくの目は決してさまよわない」ということ。

つまり、「歳をとって彼が目移りしちゃったらどうしよう」と不安がる彼女に対して、「君の髪がすこし白髪まじりになったとしても、誓ってぼくの目は(君を離れて)さまよったりしないよ」と約束しているわけである。

言い切る彼氏の男らしさもさることながら、「目移りしない」という日本語を「目がさまよわない」と表現する英語らしさも相まって、とてもお洒落なフレーズとなっている。


2. サビ

そしてサビの最も重要な部分には、次のような対応が見られる:

(原)ずっと大切にしてね

(英)But girl, I swear
I'll always treasure you

でも誓う、君をいつまでも大切にする

日本語の歌詞と和訳だけを見ると、とくになんということないようにも思えるが、「(君を)大切にする」という意味の動詞として treasure が使われているところに注目したい。

この treasure という単語は、本来「宝物」の意味で使われる名詞で、日本語でも「トレジャー」というカタカナでおなじみである。

しかし、人はたいてい宝物を苦労して手に入れた暁には、それを大事に扱い、大切にしまっておくもの。

そういった理由から、この treasure は転じて「~を大切にする」という意味の動詞としても使えるようになった(日本語で言うところの「宝物扱い」である)。

つまり、あれこれ自分の扱い方を説明して「ずっと大切にしてね」とお願いしてくる彼女に対して、「誓って君を(宝物のように)大切にするよ」(I swear I'll always treasure you) と宣言しているわけだ。

「誓う」の swear も英語の歌詞によく出てくる決め台詞チックな単語だが、それに加え、こんな風に treasure が使えると、なかなかカッコいい。


■ おわりに


英語で歌われる曲の歌詞には、このような(日本語にすれば)カッコつけ過ぎたような表現があちこちに散らばっている。

「恋の予感」などの(英語にできない)奥ゆかしさをもつ日本語を学ぶのも愉しいが、たまにはこんな風に直情的でキザな英語の表現を学ぶのもまた一興である。

『トリセツ』がリリースされたときには、「わがまま過ぎ」などといった意見がとくに男性側から出たものだが、こういった女性に対する英語でのスマートな対応・切り返しを学ぶには、この『トリセツ』の英語カバーは打ってつけかもしれない。


※ YouTube のチャンネルをつくってみました。今後こちらでも曲の和訳を動画形式であげていこうと思います。


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