#6. 翻訳のできない日本語「恋の予感」
英語にうまく訳すことのできない日本語はたくさんあるが、そのうちの一つに「恋の予感」がある。
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今年の初めにイギリスの公共放送局 BBC が、"The 'untranslatable' Japanese phrase that predicts love"(恋を予見する「翻訳不可能」な日本語)というタイトルで約 2 分の動画付き記事を公開した。
動画の中では、日本にルーツを持つと思われる何名かが、英語を使って以下のように「恋の予感」を説明しようとしている:
I would define Koi No Yokan as the premonition of love.
「恋の予感」はつまり、恋の予兆とでも言いましょうか。
It's not fully a crush yet, but the feeling that it will come.
まだ完全に恋ではないんだけれど、それがやって来るという感覚。
We have the word for love at first sight—Hitomebore.
So Koi No Yokan is definitely different.
日本語には「一目惚れ」という(英語の)"love at first sight" にあたる言葉もあります。ですから「恋の予感」というのは、それとはまったく別のものなんです。
英語に翻訳できないからか、はたまた日本語ですら説明しがたい曖昧な概念だからなのか、やはりどれも感覚的な表現となってはいるが、いずれにしても興味深い説明である。
とくに「恋の予感」と「一目惚れ」が明らかに違うというのは、そう言われるまで考えたことさえなかった。
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記事の中では、「恋の予感」が最終的に次のように定義される:
The feeling upon first meeting someone that you will inevitably fall in love with them.
初めて誰かに会ったときの、その人と間違いなく恋に落ちるであろうという感覚。
どうだろう。"inevitably"(間違いなく)とまで言われるとやや断定し過ぎな感じがするし、「恋の予感」は "first meeting" に限った話だとも思えない(むしろそれは "love at first sight" だろう)。
「恋の予感」がしただけで、実際はなにも起きなかったなんていうのは十分あり得る話だろうし、最初はなんとも思わなかった人に、しばらくしてからだんだん「恋の予感」を感じるということも、やはりあるのではないか。
翻訳できない "Koi No Yokan" を定義しようと試みて、結局 "love at first sight" を説明しただけのようになってしまったあたり、この BBC の記事は「恋の予感」の "untranslatability" をうまく表現したと言えるかもしれない。
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そもそも「恋」と「愛」すら love の一語で表現して分けない英語である。
「恋」は「愛」の前に芽生える感情だとよく言われるが、その「恋」よりもさらに前の繊細な感覚である「恋の予感」というのは、さぞ英語話者には理解しづらいものであるに違いない。
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※ 「恋」の英訳についてはこちら(「『恋』を英訳するとして」)を参照。
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