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リムブレーキとディスクブレーキ

今回は、ブレーキの違いがもたらす走りの違いについてお話ししたいと思います。

リムブレーキこぼれ話

リムブレーキは、リムとブレーキシューの摩擦抵抗が天候等によって変化するため、雨天などで塗れた場合は制動力が低下します。長い時間制動をかけると、ブレーキシューとリムの摩擦熱がタイヤに及ぶ場合もあります。かなり特殊な事例ではありますが、この摩擦熱がどれくらいになるかということで一つ。菊池仁志、競輪選手時代の話です。

競輪で使用する自転車(ピストレーサー)にはブレーキがありません。これを公道で使用するためにはブレーキを装着して走るのですが、当時はリヤブレーキだけつけておけばよかったため、そのようにして公道練習をすることがありました。この公道練習で、かなり傾斜のキツイ坂をブレーキをかけ続けたとき・・・ブレーキシューの摩擦熱でリムセメントが溶け、チューブラーがリムからズレて、バルブが曲がりそうになったことがあります…(;^ω^)(菊池仁志談)

このお話はリヤブレーキのみを酷使したことによる極々稀な事例で、ここまでブレーキをかけ続けるというシチュエーションは少ないと思います(;^ω^)タイヤに熱が伝わって、こんなになったこともありました…というお話でした(*´ω`*)

ブレーキの違いが走りを変える

前回の記事で、構造の違うディスクブレーキとリムブレーキについて、ディスクブレーキは車輪中心軸に、リムブレーキはリム部分が強化されているとお話ししました。

ディスクブレーキは、スルーアクスルを使用することなどから車輪中心軸の強度が高いため車輪自体のねじれが少なく、リムブレーキは、ディスクブレーキ構造と比べると車輪中心軸は強度が低いためねじれやすいということになります。

車輪中心軸のねじれが少ないほうが走りの性能が上がる

自転車は、車輪中心軸のねじれが少ないほうが走りの性能が上がります。ねじれによって、力が逃げないからです。そのねじれを軽減させるものが、ナカガワ エンドワッシャーであったり、GOKISOハブだったりします。

・車輪中心軸のねじれが少ないほうが路面抵抗が下がる

また、車輪中心軸のねじれが少ないほうが路面抵抗が下がります。そのため、ホイールの性能もフルに発揮されるのがディスクブレーキの特徴です。

・リムの重さが走りの軽さに影響する

さらに、リム部分の重さは走りに影響します(ホイールの総重量というのとは違います)。リムブレーキは、リム部分を強化するため、リム部分が重くなります。ディスクブレーキはリム部分を強化する必要がないため、リムブレーキに比べると走りが軽くなるという特徴があります。

メリット・デメリット

ブレーキの制動面、路面抵抗、タイヤ・ホイール…と、こうして書いていると、ディスクブレーキが断然優位に感じますが、使用用途によってどちらもメリット・デメリットがあります。

・保守・メンテナンス・トラブル対応

この視点でみると、ディスクブレーキは部品点数が多く機構が複雑なため専門性が必要になります。レース時の輪行など自転車の移動を考えると、輸送時のトラブルも気にしなくてはいけません。フレームの設計時に苦労があったお話しをしましたが(参 )、ディスクは寸法規格が厳しいのです。その厳しい精度を維持するには、より繊細な調整が必要になり、専門性が高くなります。シンプルな機構のリムブレーキのようにちょっと調整すれば…という風にいきません。その点では、リムブレーキが扱いやすいとも言えます。

現状では難しい選択

自転車業界的な流れとしてはディスクブレーキに移行していくと思われますが、現状では、ディスクブレーキ・リムブレーキのどちらにもメリット・デメリットがあります。どういうシーンで使用するか、使用する自転車・機材に対してどういう対応が必要か、といったことを考慮して選ぶのが良いと思います。

おまけ:前回の続きより

YONEX CARBONEX HRもディスクブレーキが出ましたが、前回の続きとしてYONEX CARBONEX HR(リムブレーキ)と、YONEX CARBONEX DISCを比べてどうか、という事についてのおまけです(*´ω`*)。

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・重量
全体の重量ではDISCよりHR(リム)が軽いため、軽量化が求められるヒルクライムなどは、HR(リム)のほうが向いています。

・乗り味
乗り味については前項でお伝えしたように、ねじれが少ないため、ディスクブレーキの方が数々のメリットがあります。走行性能を引き出すという面では、DISCがよいと思われます。

・ポジションの出しやすさ
ポジションの面から言うと、DISCのほうがポジションに幅が持てます。HRはここだ!というポジションの幅が狭いため、ご自身でポジション出しをする場合は難航するかもしれません。