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世界設定資料集 4.1 期待


 心の苦しみの原因として第一に挙げられるのは「期待」である。

 当たり前に手に入ると思っていたものを手にできなかった。まだまだ元気でいられると思っていたのに病気になってしまった。愛してほしかった人に愛してもらえなかった。ずっと一緒だと思っていたのに失ってしまった。未来に対するポジティブな予想が裏切られた時、耐え難い苦しみがやってくる。そして未来予測はたいてい当てにならないものである。

 そうした苦しみを和らげるためには、まず当たり前のことなど何一つないのだと認識することである。暑さ寒さをしのげる家があることも、乾きや飢えを感じずに済むことも、暴力に怯えずに暮らせることも、自分や大切な存在が生きていることも、少しの愛を与えてくれる人がいたことも、得難い恵みであり幸運である。そして全ては移り変わり流れてゆくものであり、いま手元にある幸福も決して永遠ではない。

 それでも何かを得たいと願うなら、自分の外側の何かに叶えてもらうことを期待するのではなく、自ら叶えに行けば良い。

 叶わないことを願ってしまう場合には期待することをやめるしかないが、諦めようとしても諦めきれないから苦しいのである。自分がどんなに切望しても得られないものを易々と手にしている誰かを目にし、自分もそちら側であった可能性を見てしまうのである。

 諦めるための具体的な方法はきっと本人にしかわからないが、期待が裏切られた怒りや悲しみを押し潰して消し去ろうとするのではなく、そっと拾い上げて供養してやることは必要と言えるだろう。

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