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カンボジア航空搭乗記(カンボジア・ベトナム徘徊編①)

 日本でじっとしているということができない性分なのでまた海外旅行に出かけることにした。今度の行先はカンボジアとベトナムである。どこで何をやったかというのはこれから記事にしていくことにして(なお完結の見込みは薄い)、この記事ではカンボジア航空に乗るとどうなるかということを記しておきたい。プノンペン~シェムリアップというメジャーな路線を飛ばしている会社なので乗る人も多いはずなのだが、どうもあまり情報が出ていないのである。
 カンボジア航空は正式名称をカンボジア・アンコール航空と言い、株式の51%をカンボジア政府が、49%をベトナム航空が持っているカンボジアのフラッグシップキャリアである。フラッグシップキャリアと言えば聞こえはいいがそれはあくまで「カンボジアの」であって日本航空のような会社を想像して乗ると予想とだいぶ違う体験をすることになる。何せ保有機材はA321が1機、A320が2機、ATR72が2機という超コンパクト仕様である。そのせいでとんでもない事件が起きるのだが、まずはその話からしていこう。PCは「その話から指定校」などと意味不明なことを言っているが放っておくことにする。

便名が独特。

予約、そして事件

 カンボジア航空を予約するのはいたって簡単である。この点だけ取り出してみれば他の航空会社と変わらない。ちなみに日本語版のサイトもあるので楽勝である。チケットを買うまでは、であるが。
 事件はフライトの3日前に起こった。何やら不穏なメールが来たのである。そのタイトルは「Inform new schedule change on(搭乗日)」だった。New scheduleとは穏やかではない。本文を見てみると驚きである。「…will be delayed 07hour and 00minute due to commercial reasons」と書いてあった。要するに「機材繰りがつかないからフライトが7時間遅れるで、すまんな」というわけである。ちなみにこのフライトの機材は1機しかないA321だったのでやはり保有機材が少ないというのは大きなリスクになるようだ。某トキ○アも機材繰りで欠航していたが、航空会社を選ぶときには保有機材数にも目を向けるべきであるらしい。
 メールを読んでみると、7時間遅れを受け入れて飛行機に乗るか、全額返金するか選べと書いてあった。会社都合で3時間以上の遅延が発生した場合、チケットの全額が手数料なしで返金されるようだ。ちなみに返金を選んだ場合、チケット購入時よりも円安が進んでいたのでおそらく為替差益が出たはずである。とは言うものの、プノンペンからシェムリアップまで飛行機以外の手段で移動しようとすると5, 6時間くらいかかるバスを利用するか、同じくらい時間のかかる船を利用するかしか方法がない。帰りは船で帰ってこようと計画していたので、行きはバスでもいいのだがあまり良い選択とは思えなかった。しかも、このフライトの翌日は朝四時起きでアンコールワットの朝日を見に行く予定になっているのでフライトが夜10時に着くのでは翌日に差し障りが出る。さらに、カンボジアを悪く言うつもりはないがカンボジアの地方都市に夜遅く着くというのは色々と不安である(シェムリアップ国際空港は近年移転し、市内から車で40分くらいという素晴らしい場所に立地している。バスがあるが終バスが22時、タクシーは色々と面倒なので乗りたくないのである)。というわけで、交渉を開始することにした。
 時刻表を見てみると、プノンペン~シェムリアップ便は一日二便飛んでいるということが分かった。朝10時くらいにプノンペンを出る便と、今回私が予約した14時くらいにプノンペンを出る便である。ということは、一便前に振り替えてもらえばバスが走っている時間にシェムリアップに着くことができるし、何より早寝が実現できる。そんなわけで、カンボジア航空にメールを送ってみることにした。
 さて、読者諸兄はこのメールに返信が返ってくると思うだろうか。私は正直なところ全く期待していなかった。メールは返ってこないだろうからプノンペンに着いた後にカンボジア航空のカウンターに突撃して交渉することになるかな、というのがこの時点での私の予想である。
 しかし、私の予想は華麗に、しかも良い方向に裏切られることになった。何と翌日にはメールが返ってきたのである。そしてその内容はと言うと無事に私のリクエストが受け入れられ、一本前のフライトへの変更に成功した。この時点で、カンボジア航空への期待値はとても高い状態である。某鶴丸の航空会社のサポートデスクに電話すると30分くらい「明日の翼」を聞かされることを考えるとどちらがサービスを売りにしている航空会社なのかよくわからなくなってくる。さすがは親会社にベトナム航空が入っているだけのことはある。

至って綺麗な空港である。

いざ、空港へ

 さて、ここからが搭乗記本番である。カンボジア航空の国内線チェックインは出発時刻の1時間半前から開始されるので、それに間に合うように空港に向かった。チェックイン自体は出発の30分だか40分前までできるのだが、座席が指定されていなかったので窓側を抑えるために早めに向かうことにしたのである。列に並んでチェックインし、手荷物の預け入れをし、無事に搭乗手続きが完了した。とっても大変非常にスムーズで、感覚としてはJALに乗るときと全く変わらない。さすが、フラッグシップキャリアである。
 朝食としてクロワッサンを食べながら、予想の3倍大きく、予想の3倍甘く、しかしよく見たら氷ばかりのカフェラテを飲み、ゲートに向かうことにした。ちなみにセキュリティチェックはガラガラで、待ち時間0秒で通過することができた。元々ATR72は小さな飛行機だし、カンボジアの国内線はほとんど飛んでいないので空港が混むということもないのである。国際線の混み具合がどうなっているかは知らないが、私が行ったときにはシンガポール航空やタイ国際航空、ベトジェットエアなどがいた。また、珍しいところではエチオピア航空、ミャンマー航空などの飛行機を見ることができた。
 搭乗時刻10分前になっても飛行機がゲートに来ないのでサイレント遅延でもしているのかと思ったら、実は今日の飛行機は沖止めだった。よく考えてみたらATRにボーディングブリッジはつけられなさそうである。函館かどこかの空港でANAのボンバルディアに乗った時はボーディングブリッジで搭乗したが、人生2回目か3回目の沖止め経験となった。バス1台で乗り切れるくらいの乗客しかいなかった。バス停から飛行機まで100メートルもなかったので歩いて行っても良さそうなものだが、一応バスで連れて行ってくれるらしい。

わちゃわちゃと乗り込んでいく。乗客は欧米人が多い。

 飛行機に乗り込むと、CAが両手を合わせて出迎えてくれた。このポーズはタイだけのものかと思っていたら隣国カンボジアでも同じらしい。クメール語の「こんにちは」がいつになっても覚えられないのだが、まあとにかく挨拶をして乗り込み、荷物を格納し、自分の座席についた。座席はいたって普通である。特別良いということも悪いということもない。どうせ1時間も乗らないのだから何だって構わないのだが、とにかく安住の地を手に入れた。機内はほぼ満席である。おそらく私と同じように午後便から振り替えてきた人もいたのだろう。さっさとリクエストのメールを送っておいたのが幸いしたのかもしれない。
 この機材はコクピットの後ろに荷物室があり、その後ろが客室になっているという面白い構造をしている。私の座席は2Dだったが、少し体をひねるとエンジンを眺めることができる位置だった。どうしてもエンジンを間近で見たいという人は3、4列後ろの席を希望すると良いかもしれない。チェックインの時に「6Dか6A空いてない?」と聞けば、そこにアサインしてくれると思う。
 この機材はモニターがないので安全ビデオはCAの実演である。ちなみに自動音声もないので二人いるCAの片方がアナウンスをし、もう片方が実演するという方式だった。このあたりはかなりアナログである。内容は至極単純で、シートベルトと救命胴衣の説明だけだった。おそらく低高度しか飛ばないので酸素マスクが必要になる局面は想定されていないのだろう。もしかしたら搭載すらされていないかもしれない。
 飛行機は定刻にゲートを離れ、滑走路端のターニングパッドでぐるりと向きを変え、離陸した。首都の空港なのにこれでいいのか、と思わなくもないがそういうことらしい。眼下にプノンペンの街並みを眺めつつ空の旅が始まったと言いたいところだが、一面に靄がかかっていてあまりはっきりと地上が見えるわけではなかった。東南アジアではよくあることだがやはり大気汚染が深刻であるらしい。

窓も空気も汚い。

 機内サービスはものすごく簡素で、コップ一杯の水が配られただけである。シンガポール航空は水かオレンジジュースか選べたが、今回は一切の選択肢がなく水だけだった。フライトの距離と時間を考えたら水が出てきただけ感謝すべきかもしれない。ただ、CAの接客態度は大変すばらしく、この点についてはシンガポール航空とほとんど変わらないレベルだった。
 ベルトサインが消えていたのは20分ほどで、飛行機はすぐに降下を開始し、あっという間にシェムリアップ国際空港に着陸した。ここまで40分ほどの空の旅だったが、(フライト中には)何のトラブルもなく快適な移動をすることができた。シェムリアップに行きたいという人にはオススメの航空会社である。ちなみにシンガポール航空はシェムリアップ国際空港に就航しているので、こちらを利用するのもいいかもしれない。私が調べたときは新空港のSAIではなく旧空港のREPを調べていたのでフライトの存在を知らなかった。これから行く人の参考になれば幸いである。

新しいだけあって綺麗な空港。

新空港の様子

 シェムリアップの新空港は当たり前だがとてもきれいである。荷物が出てくるのも(海外にしては)早かったし、スーツケースも綺麗に並べられていた。国内線なので入国審査もないし、ゲート到着から空港の外に出るまで15分か20分くらいである。外に出るとタクシードライバーが声をかけてくるが、新空港から市内までタクシーで行くと40ドルくらいはかかるのでバスを利用することにした。バスなら8ドルである。その代わり本数が少ないので私は1時間半くらい待つことになった。ま、時給20ドルと考えたらそれほど悪い話ではない。ちなみにGrabだと15ドルくらいで行けるようだが車両が捕まるか定かではないし、40分もトゥクトゥクに乗るというのは勘弁してほしいので止めておくことにした。
 待っている間に暇だから出発ロビーを見に行こうと思ったのだが、入り口で出発便のチケットを見せないと建物に入ることすらできなかった。このあたりの運用はなかなか厳格である。プノンペン国際空港も同じ運用だった。ちなみに昼ご飯を食べたいなら店はあるが、ホットドッグが3ドルだか4ドルくらいするので、市内に出てからその辺の屋台で食べた方がお得である。と思ったら意外とその辺に屋台があるわけではなかったのだが。場所によるようである。

どうも日本から来たバスらしく、「シートベルトをしてください」という日本語の掲示があった。しかし、ハンドルとドアの位置が日本と逆なので詳細は謎である。

 バスの乗客は必ずしも多くないようだ。大きな観光バスが用意されていたのだが、小さなマイクロバス(大きなマイクロバスというのは存在しないが)に変わってしまい、乗客も私を入れて7、8人しかいなかった。バスはプノンペン市内のCDFというショッピングモールまで行くので、そこからはGrabを捕まえるなりホテルの送迎サービスを使うなりすれば良い。トゥクトゥクのドライバーが待ち構えているのだが、私は華麗にスルーを決めてホテルが用意してくれた迎えのリキシャに乗り込んだ。トゥクトゥクよりも足元が広くて快適だった。東南アジアに出かけると話しかけてくるドライバーをスルーする技術がやたらと磨かれていく。Grabがあるのに流しのトゥクトゥクに乗る意味はないので「No」と言って相手にしないのが得策である。トゥクトゥクのドライバーには悪いヤツもいるから要注意だ。そういえば、タイに悪いヤツがいたのを思い出したので記事を下に貼っておこう。弊noteで最も人気の記事である。

 そんなわけで(どんなわけで?)カンボジア航空搭乗記は完結である。次回はシンガポール航空に乗るとどうなるかをお届け予定だが、次回があるかも含めて定かではない。


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