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スターラックス搭乗記:往路編:A350-900(台湾ぐるっと一周記①)

 「カンボジア・ベトナム徘徊記」が完結していないのに次の旅行に出かけることになったので旅行記を執筆することにする。もはやうまくいっていないニュートン算なのだが、おそらくこの旅行記も完結する前に次の旅行に出かけてしまうのでオーバーフローは間違いなしである。社会人になるから旅行の頻度が下がるのではないかという淡い期待を持っているのだが、おそらく忙しいのを理由に執筆をサボるので新しく水が入ることもないが水が出ていくこともない、ため池的な状況が発生するのだろう。まあ、私が書く旅行記はそういうものである。
 途中で断念することを前提に書いているから、書きたいことを先に書かなければいけないのである。私の場合、最も書きたいのはフライトの搭乗記だから、まずは搭乗記から書いていくことにする。あとは、今回は台北、花蓮、台東、高雄と台湾をぐるっと回るのに加えて澎湖諸島を訪問する予定なのでそれらの場所で印象に残ったものがあれば書いておこうと思っている。優先順位としてはスターラックス搭乗記、マンダリン航空搭乗記、台湾新幹線乗車記、その他のローカル線乗車記、それぞれの都市滞在記ということになるのだろうか。それはさておき、今日はスターラックスの搭乗記をお送りする。いい航空会社なのに日本での知名度が低いので勝手に宣伝しようというわけである。
 台湾旅行は準備段階からして国内旅行とほとんど同じである。航空会社のHPが日本語で見られるのは当然として、鉄道、ホテル、有名観光地などの多くの場所の公式情報を日本語で入手することができる。どうやら現地では一周回って英語よりも日本語の方が通じるらしいのだが、私は大体裏路地と屋台を徘徊しているのでどうなるかはわからない。キラキラ旅行をしている人たちは情報発信にも熱心でよく情報が出てくるのだが、私はキラキラ旅行の対局にいるのでどうなるか楽しみである。

会社が新しいので機材も新しい。

そもそもスターラックスとは何ぞや

 スターラックスは2020年に運航開始した、台湾の航空会社である。エバー・グリーンの後継者争いをきっかけにしてエバー航空の社長をクビになった人が作った会社だ。台湾の航空会社と言えば、ベトナムの帰りに乗りそうになった(※下記参照)エバー航空やCHINA AIRLINESが有名だが、スターラックスは新興FSCとして「台湾のエミレーツ」となるべく営業している。エミレーツにも乗ったことがあるので、果たしてスターラックスがエミレーツと戦えるのかという点も念頭に置きながら記事を執筆していくことにしよう。ちなみに保有機材はA350-900、A330-900neo、A321である。エミレーツを自称するのにA380は持っていないのかと思わなくもないが、機内の写真を見る限りは確かにエミレーツと言えなくもなさそうだ。ちなみにA350にはファーストクラスも装備されている。おお、エミレーツである。
 台湾はやたらと大学生が出かけているイメージがあるが、彼らはどうもLCCを使うらしい。確かに台湾行きのLCCはたくさん飛んでいて、ピーチやタイガーエアが有名だが、手荷物料金だの機内食だのを頼んでいたら気づいたときにはFSCと大差ない、という事態も結構な頻度で発生している。今回の私のチケットはエコノミーの下から2番目のグレードで6万円くらいだった。前に妹がタイガーエアで台湾に行っていた時に払った金額とほとんど同じである。ま、リサーチが大事だということだろう。私の場合は航空券のリサーチは熱心なくせに目的地のリサーチを現地に着くまでしないというのが困ったところなのだが。

まずは空港へ

 さて、旅の始まりは空港である。残念ながら海の港から始まる旅をできる財力も精神性も持ち合わせていないのだ。世界一周するなら豪華客船ではなくてファーストクラスの世界一周航空券の方が良いと思う。世界一周の船旅は150万円でいろいろな会社のファーストクラスに乗れると考えたらこちらの方がよほど魅力的である。普通に150万円払ってファーストクラスに乗ろうとしたら東京からロンドンまで片道しか乗れないが、世界一周チケットなら何回も乗れるのだからそうしない手はない。
 そんなことはさておき、3月某日、私は成田空港に向かった。そう、スターラックスは今のところ東京の空港の中では成田にしか就航していないのだ。羽田に来て欲しいのだが何かそうできない事情があるのかもしれない。私は成田エクスプレスに乗り、成田空港へ向かうことにした。成田エクスプレスが高級な乗り物だったのはもう過去の話で、品川から成田空港まで特急料金は1120円しかかからない。乗車券込みで3000円と少しくらいである。成田エクスプレスならスーツケース置き場もあるし、乗り心地もいいし、席も広いしこれ一択だと思う。LCCに乗って節約した気になって成田エクスプレスに乗っている人の考えは一生理解できる気がしないが、私は栄光あるスターラックスの乗客なので成田エクスプレスに乗ることにした。

新しい塗装のE259系が来た。

 空港に着いた頃にはチェックインカウンターがオープンしていた。3時間前にオープンするらしい。ちなみにグランドスタッフはJALの人が担当だったが、一部にスターラックスの制服の人も混ざっていた。列は搭乗クラスごとに分かれていて、あとはオンラインチェックインを済ませた人の列もあった。オンラインチェックインをしている人はあまりいないようで普通のエコノミーの方は長蛇の列になっていたが、オンラインチェックインの列はガラガラだった。乗客は見たところ台湾人が大半で、日本人は少数派だった。その日本人もツアー客がほとんどで、個人手配の人はほとんどいなかったと思う。スターラックスはまだまだ日本では知名度が低いようだ。

やはり窓側は良い。

 私は今回座席指定が有料のチケットを買っていたのとフライト時間がそれほど長いわけではなかったことから事前座席指定をしていなかったので、出発48時間前にオンラインチェックインがオープンしたのとほぼ同時にチェックインをして座席を確定させておいた。普段だったら通路側を指定するフライトタイムだが、何となく窓から景色を眺めたい気分だったので窓側を指定することにした。ちなみにチェックインのタイミングではフォワードシートも無料で指定できるようになっていて、エクストラレッグルームシートなる舌を噛みそうになる長い名前の席だけは有料らしい。要するにバルクヘッドのことである。私はフラップとスポイラーの動きを眺められるように53Aを指定しておいた。本当はエンジンの横が良かったのだが、エンジン横はプレミアムエコノミーになっていたので断念せざるを得なかった。帰りのA330-900neoではエコノミーの前3列くらいならエンジンの真横あたりに座れそうなので、気合を入れてチェックインすることにしたい。チェックインに気合を入れている人は世界広しと言えども私くらいのものだろう。

シートは薄いがしっかりした作りだった。色使いも良い。

いざ、搭乗

 前回カンボジアに行くために羽田から出国したときは出国審査が鬼のように並んでいたので今回はどうかなと思いながら早めに出国審査に向かったら、何と一瞬で通過できてしまった。羽田の第三ターミナルと関空の出国審査のひどさは外国人にまで知れ渡ってしまっているようだが、成田は意外とスムーズなのかもしれない。今回の出発が昼過ぎだったので出発便が少ない時間帯だったというだけの可能性もあるのだが、羽田の出国審査の混雑具合は早急に解消してほしいと思っている。訪日外国人にとっては日本を旅立つ最後の瞬間なのだから、ここでストレスを感じさせているというのはどう考えても速やかに解消すべき問題である。
 どうせ待たされるだろうという読みで出国審査に行ってしまったのに予想外に早く行けてしまったわけだが、それはそれで困ったことになる。要するに暇つぶしする場所がないのである。カードラウンジがあるだろうと思っていたらセキュリティエリア内にはないとのことで、その辺のベンチで暇つぶしするしかなくなってしまった。しかも、この時間は出発便が少ないのでゲートにいる飛行機を眺めているわけにもいかないのである。この時いた飛行機で目新しいのはAIR PREMIAの787くらいで、あとはJALの787くらいしか飛行機がいなかった。仕方ないので搭乗までおよそ1時間、ゲート近くのベンチで読書したり旅行記を書いたりしていると搭乗時刻になった。
 機材はA350-900の、しかもB-58505だった。搭乗時点で運航開始後数日という超最新の機材である。機内はもちろん綺麗で、全くと言っていいほどくたびれていないシートに傷のない窓と個人用モニター、トイレも綺麗で文句のつけようがない状態だった。エミレーツと比べるとどうかというのは本稿における最重要テーマだが、A380と比べるならエミレーツの勝ち、777と比べるならスターラックスの勝ちだと思う。エミレーツの777は3-4-3配列の奴隷船仕様なので、どうあがいてもスターラックスに勝つことはできないだろう。しかし、A380と比べてしまうとやはり圧倒的な機内空間と四発機というロマンを前にして、いくら最新鋭機材と言えども太刀打ちできないというのが正直な感想である。

九十九里浜を眺めながら上昇。

 特に機内モニターの操作性には驚かされた。飛行機のタッチパネルと言うと大体反応が悪いものと相場が決まっているが、この機材のモニターはほとんどスマホだった。ヌルヌル動くのでストレスフリーで、画質も良かったのでミッション・インポッシブル(初代)を快適に鑑賞することができた。日本語字幕が出せる点も高評価である。帰りはトップガンを見ようと思っている。
 隣の人は日本人の夫婦だった。搭乗したときにはすでに座っていたので窓側に入れてもらったのだが、物腰柔らかな人で一安心である。いつぞやのムスリム(※下記参照)のように窓側に詰められたらどうしようと思っていたが、日本人はやはりこう言うところはきちんとしている。どこでスターラックスを知ったのかと思ったらツアー客とのことで、どうやらスターラックスで行くことを売りにしたツアーが販売されているらしい。言われてみれば、祖母の家で見た旅行社のチラシにそんなことが書いてあったような気がする。

 飛行機は20分遅れくらいで動き出し、離陸した。やはりA350は快適である。気圧の変化をそれほど感じさせることもなく、ぐんぐん上昇していった。窓側なので外の景色も眺められてとても楽しかった。機外カメラがなかったので窓側に座れてよかったと思う。

機内食。チーズケーキ付き。

 ベルトサインが消えるとすぐに機内食の準備が始まり、配達されてきた。CAがいきなり中国語で話しかけてきたので英語で言ってくれと言ったら「あれ、日本人だったか」という感じで英語で説明してくれた。現地人と勘違いされるのにはもはや慣れっこなのだが、まさか現地に着く前にこの事態に遭遇するとは驚きである。いつも通りの早口で焼きそばとパエリアのどちらがいいかと聞かれたので焼きそばを頼んで、隣の人は大丈夫かと思って見ていたらゆっくりした口調で「fish or chicken?」と聞いていた。機内食の注文は飛行機に乗る中で一番難しいと思っているのだが、これなら安心だ。キャセイパシフィックに乗ったらメニューをCAにまくし立てられた隣の日本人が小さな声で「隣の人と同じでいいです…」と言っていたが、このあたりのホスピタリティは確かにエミレーツかもしれない。
 そういえば、エミレーツに乗ったら頼んだ覚えのないカップラーメンを出されたことがある。所謂エコノミーファーストの状態を手に入れてドバイから成田までほとんどずっと寝続けていたら、最後の機内食を配るときにたたき起こされて「何か食え」と言われて「何もいらんからリンゴジュースだけ欲しい」と言ったらリンゴジュースが出てきて、そのあとしばらくしてからカップラーメンを持ったCAが遠くから歩いてきた。ああ、誰かがカップラーメンを頼んだんだなと思っていたら私のところまで来たCAがニコニコしながらカップラーメンを差し出してきたのである。頼んでないよ?と言ってもいいから食べと、もう作ったんだからと言ってニコニコしている。勝手に作っておいて何を言っているんだと思わなくもないが、おそらくこれを食べないと麻薬密輸の疑いをかけられると思ったのでやむを得ず具のないカップラーメンを食べることにした。機内で何も食べないと、麻薬を飲み込んでいる疑いをかけられることがあるので、この局面では食べざるを得ないと判断したのである。
 映画を見て、昼寝して、そうこうしているうちに飛行機は高度を下げていき桃園国際空港に着陸した。そういえばA350でほとんど衝撃のない着陸というのを経験したことがないのだが、何か操作性に違いがあるのだろうか。A380や777ではほとんど接地したことに気づかないような着陸を何度か経験しているのだが、A350では今まで相当な回数乗っているのに一度も経験したことがない。

桃園国際空港に向けて降下。

台湾入国(入境?)

 そのあとは入国審査だが、例によって質問を一つもされることなく通過することができた。まあ台湾からしたら日本人は一番警戒しなくていい相手だろうから当然と言えば当然である。ただ、この時はとんでもなく並んでいた。同時に到着した便があったのか何なのか知らないがここで30分以上並ばされて空港から出たころにはもう着陸してから1時間くらいが経過していた。この混雑具合は何とかしてほしいものである。e-Gateもあるようだったが使える条件がよくわからなかった。どうも登録すれば使えるらしい。そして、何と驚きなことに、イミグレのスタッフには日本語ができる人がいて「あの机で入国カードを書いてください」などと流暢な日本語で案内していた。それはいいのだが、いきなり台湾人に日本語で話しかける日本人には感心しない。せめて中国語で挨拶くらいはしてからにした方が良いだろう。外国人に英語で話しかけられてブチギレている不思議な人がたまにTwitterにいるが、そういう人に限ってこういうことをしていそうである。相手の国と文化に対するリスペクトを忘れた人は海外に出ない方が良いだろう。
 入国した後は悠遊卡をゲットして、さっそく台北市内に向かった。桃園から台北は意外と遠くて、メトロで2,30分かけて三重なる駅に到着し、そこからバスに乗ろうと思ったら目の前でバスが発車してしまった。次のバスは40分後だというので調べてみたらホテルがMRTの駅から近いことが分かったのでMRTに乗って、二度乗り間違えた後にやっとホテルに到着することができた。何はともあれ、めでたく台湾に到着できたので今日の旅行記はここまでということにしておこう。そろそろ字数も6000字、読む方も書く方も疲れたことである。

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