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220820 青春18きっぷで1500km大移動③(会津若松→只見)

 さて、夏期講習もたけなわです。夏期講習に対して「たけなわ」という表現が適切なのかは知りませんが、まあいいことにしておきます。なお「たけなわ」は漢字で書くと「酣」なのであって、「物事の盛り」という意味を持つ言葉です。しかし「宴もたけなわではございますが」と言うのは大体もう宴会のピークが過ぎてしゃべることもなくなったというくらいのタイミングで使う言葉であると考えると盛りなのか盛りじゃないのかよくわからなくなってきます。
 ま、それはどちらでも良いのですが夏期講習もお盆休みが終わり、後半に差し掛かってきました。ぼくはこの後半を乗り切ればそのあとは心待ちにしている北海道一周旅行です。今のところふわっとした予定しか経っていませんが、それでもなんでも出発が迫ってきています。しかし、こちらの旅は移動手段が車であることから多少の無理は効くし、泊まることがないということにはならないわけです。実は昨日の会津若松のホテルはおそらく会津若松内で最後の一部屋だったのですが、今度の旅ではもし宿がないという状況になっても車中泊すれば良いのでその意味で気楽ではあります。

高そうな船

 大体の場合において18きっぷで貧乏旅行をするような大学生は「快活クラブ」なるネットカフェに泊まると相場が決まっているものですが、会津若松の快活クラブは駅から徒歩45分ほどという一体だれが使う想定で作ったのかさっぱりわからない立地にあり、当然ながら選択肢からは外れました。会津若松着が午後8時、翌日出発が7時半過ぎと考えると往復に90分歩くのは勘弁願いたいものです。さらにぼくは寝る環境にはこだわっているのでできればビジネスホテルの、それも名前がある程度通ったような大外れのリスクがないホテルに泊まることにしています。今回、会津若松では東横インに、長岡ではホテルメッツに、名古屋ではコンフォートホテルに泊まりましたが今回のホテルはすべてアタリでした。特にコンフォートホテルは良かったですね。
 ちょっと前までの観光客がそれほどいなかった頃にはどこもホテルが格安で、稚内のサフィールホテル稚内や札幌、金沢、富山のANAクラウンプラザホテル、那覇のハイアットリージェンシー、札幌のプリンスホテルなど、大学生が泊まるにしては高級なホテルによく宿泊していましたが、観光需要の回復に伴ってこれらのホテルの価格が上昇したために、さすがに気楽に泊まれるホテルではなくなりました。今思うとあの頃はいい時代で(時代というほどでもないか)、旅行者は旅慣れた人しかいないしどこに行っても観光地が空いていました。もちろん受け入れる側にとってはたまったものではありませんが、観光する側に立ってみると良かったなと思います。と思って今調べてみたら今度泊まろうと思っている日のサフィールホテル稚内は5600円でした。うにゃにゃ。「ハイクラス」って何なんでしょうね。

只見線は新型車両で運行されていた

越後川口へ向かう

 なお、ここまでの前振りに1000字以上を費やしていますが何度も説明している通りこのnoteはそういうものなのであって、写真をたくさん貼って「こんなところ行きました~!」みたいな軟弱な旅行記を書くつもりはありません。どうも他の筆者(もはや筆を執ってすらいない)の記事を見てみるとそういう記事が望ましいようですが、このサービスの事業規模を考えればこのような奇妙な旅行記を好む人もどこかにはいるだろうということでこのスタイルは継続することにします。ま、もし仮に好む人がいなかったとしても、この記事は個人的な記録を補助的にインターネット空間に放出しているだけなので特に問題はないと考えています。
 それはさておき、今日は只見線に乗ってまずは小出へと向かいます。しかしこの路線は10年くらい前の豪雨で線路が寸断されたため途中の一部区間でバスによる代行輸送が行われているため途中の只見駅で4時間くらいの待ち時間が発生するのです。もっとも、只見町としてはこれをチャンスととらえているようで駅前にはレンタサイクルが整備され、列車の待ち時間で回るためのモデルコースまで準備されているという気合の入れようでした。ぼくも最初は「4時間待ちか~」と思っていましたが、少し調べただけでも見るものが全くないわけではないということがわかり少しの期待とともに列車に乗り込みました。

絶景が広がる

 ここは非電化区間ですから当然車両はディーゼルカーです。もうぼくは鉄オタをやめて長い(だったらなぜこんな旅行をしているのかはさておき)のであまり詳しくないのですが、どうも見たところ新型車両らしき車両がやってきました。車内は2+1のボックスシートが配置されており、ローカル線感が漂っています。しかし新しい車両なので座席は東海道線の車両などに装備されている座面の硬いシートが使用されており、その点は原点ポイントであると言えそうです。
 車内にいるのはほぼ100%が旅行者でした。先日、JRが路線ごとの収支を公表していましたがここ只見線はもちろん全線にわたって赤字路線で、100円稼ぐのに4000円くらいかかるような路線です。しかもこの旅行者はおそらく全員が18きっぱーなのでJRの利益にはそれほど貢献していないと言えます。ぼく自身、18きっぷの値段の倍以上の区間を移動していますから、人のことを言えた義理ではありませんが。
 列車は会津若松駅を出て、しばらくは住宅地を、そのあとは田んぼの中を快調に走り続けます。だんだん山が迫ってきて、ついに坂を上り始めました。ディーゼルエンジンの音が高まり、一生懸命坂を上っているのが伝わってきます。なお、この路線は進行方向右側の車窓が優れており、山と川を同時に眺めることができました。途中の駅で何度か列車行き違いのため停車し、そのたびに列車を降りて体を動かし、そうこうしているうちに会津川口駅に到着。ここから只見駅までが不通区間です。しかし10月には全線での運行再開が予定されており、運転士の慣熟のためか会津川口に到着した列車はしばらくして只見駅方向へ出発していきました。

会津川口に到着

 この駅はホームからの眺めが良い一方で駅前にはほとんど見るべきものが何もないのですが、バスの乗り継ぎに時間があったので駅前を散策します。「何もない」とは言っても何もないところを散策するというのも意外と面白いものであって、スズメバチが飛んでいるのを眺めたり、オニヤンマの機動飛行を眺めたり、水路に落ちてしまったバッタを救出したり、それなりにやることはありました。特にオニヤンマは田舎に行かないとみることができないトンボですから、なかなかいいものを見たと思います。あとで只見をウロウロしていた時にもオニヤンマを目撃しましたし、会津坂下かどこかで行き違いをしているときにもオニヤンマを目撃しましたが、遠くから見てもそれとわかる大きな体とトンボらしくない大きな羽音はとてもかっこいいものです。なお、一橋でギンヤンマを見たことはありますが、オニヤンマはありません。

会津川口駅②

クビキリギス事件

 バッタで思い出しましたが、より正確に言えばこのバッタはクビキリギスでした。幼虫成虫合わせて3匹くらい、それとオンブバッタの幼虫も救出しました。近くで草刈りをやっていたのでそれに驚いて飛び跳ねたら用水路に落ちてしまったようです。
 そしてこのクビキリギスを巡ってはかつて事件が起こったことがあります。それはぼくが小学校1年生の時のことでしたが、小学校の教科書に「クビキリギリス」と書いてありました。ぼくは小学校の授業は聞かなくても全部わかっていたので授業中は教科書を眺めることにしていたのですが、「生活」(理科と社会が一緒になったような科目)の教科書に載っていた生き物が冬越しする姿を描いたイラストの中に「クビキリギリス」と書いてあったのです。ぼくはそれを見た瞬間「あれ?」と思いました。「クビキリギリス」ではなく「クビキリギス」のはずだからです。そこでぼくは家に帰ってお母さんに図鑑と教科書を並べて「ねえ、教科書が間違ってたよ。クビキリギスがクビキリギリスって書いてあった」と報告しました。そうしたら「じゃあ明日先生にそう言いなさい」と言われたので翌日先生に同じことを説明したら「教科書が間違ってるわけないでしょ」と言われたのです。ここから事態は大きく動き出し、家に帰ったぼくの話を聞いてお父さんが教科書会社に問い合わせのメールを送ってくれました。その返信には「わかりやすさを優先してこのような記述にしたが、厳密な話をすれば息子さんの言うことが正しいです」というようなことが書いてあったそうです(わかりやすさって何じゃ、そのためなら嘘を書いていいのかと思わなくもありませんが)。顛末を担任の先生に伝えたところ先生は「まさか本当に教科書が間違っているとは思わなかった」と言って謝罪してくれ、教科書も翌年から修正されていました。
 ぼくは小学校の教科書は算国理社はもちろん、道徳の「こころのノート」に至るまですべての教科書という教科書を読破(教科書を読破というのも変な話ですが)しましたが、まさかそれがこんな成果につながるとは思ってもいませんでした。さすが、朝5時から起きて昆虫図鑑を眺めまわしていただけありますね。今、図鑑を見返してみると、「昆虫」「カブトムシ・クワガタムシ」「乗り物」「魚」のあたりは損傷が激しい一方で「星座」「宇宙」のあたりは割ときれいなまま保存されています。要するに前者の図鑑は熱心に読んでいて、後者はそれほどでもなかったという話なのですが、当時のぼくの興味が如実に反映されていてとても興味深いです。ぼくは街を走っている車はたいていの車種はわかるし、その辺にいる虫は大体の種類が、種類がわからなくても何の仲間かということくらいはわかりますがそれは幼稚園に通っていた頃に図鑑から得た知識がもとになっています。中学受験はこの知識で乗り越え、大学受験もこの知識の残骸で乗り切ったような気がしますね。

代行バス

気を取り直して只見へ

 さて、例によって盛大に話が脱線していますが代行バスがやってきたのでそれに乗り込んで只見へ向かいます。「代行バスが来ました。ご利用のお客様は外へ」と案内されて外に出てみたら運転手が熱心に車内の消毒を行っており5分待ち。ここまで数人しか乗っていなかったような車内をいちいち消毒することに意味があるとは思えませんが、この国ではSDGsと感染症対策はファッションなので仕方ありません。直射日光を浴びると山間でも意外と暑いもの。車内がバカ丁寧に拭きあげられたことで、やっと車内に入ることができました。
 列車からの車窓もいいものですが、バスからの車窓もなかなかに良いものです。何と言ってもその景色がより近くに見えるのが魅力なのであって、川も人家も畑も近くに見えます。どうやらこの辺りはかぼちゃが名産らしく、地面から斜めに立てかけた棚のような設備にかぼちゃの実がなっているのが見えました。ずいぶん濃いオレンジ色でしたが、そういう品種のようです。
 バスで40分くらいの道中、開いている窓からハチが乗車してきましたが、車内の誰も(と言っても乗客はぼくを入れて5人くらいなのですが)微動だにしませんでした。こんな旅行をしているような人というのは列車に乗るなり窓を全開にするような人たちなので虫くらいは慣れっこです。しかもハチはこちらが何かしない限りいきなり刺してくることはほとんどありません。そのうち車内を飛び回るのも飽きたようでハチは自発的に下車していきました。とは言っても勝手に乗ってきて勝手に降りて行ったわけですから有り体に言えば「無賃乗車」です。府中本町では鳩がしばしば無賃乗車していますが、こちらではハチが無賃乗車するようですね。しかし、虫の立場からしてみたら何の気なしに飛んで行った先が高速で移動する物体で、気づいたときにはここがどこか見当もつかない場所に運ばれてしまっているのですからそれはそれでなかなかの恐怖だろうなとも思います。
 さて、ハチの気持ちを想像しているうちに字数が5000字に迫ろうとしているので今日の旅行記はこの辺で終わりにしておきましょう。次回は只見駅で自転車を借りて田子倉ダムまで自転車で山登りをしたところから旅行記を再開することにします。

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