8月が終わった。ひと段落した感のある今年に、遠くから聞こえてくる喧騒に気を取られたのは、わたしだけじゃないだろう。 事務所がある御徒町では、公園や小学校で盆踊りが開催され、大勢の人々でにぎわっていた。櫓が紅白に組み上げられ、四方から提灯が吊されて、その周りを人々が踊っている。 わたしが育った横浜の新興住宅街の公園にも、同じ風景があった。約40年前のことだ。 当時も「炭坑節」や「ドラえもん音頭」といった楽曲で、人々は輪になって踊っていた。振り付けはさっぱり覚えていないが、
タグチヒトシと申します。体験をつくる仕事をしています。肩書は演出家です。 体験とはなにか。誰かによって考えられたそれを受け取る伝達の循環を体験という。伝達の循環の先には感動があり、受け手は感動を求める。 感動とは、いったいなんなのか。わたしの心は動かされたのか、それともわたしが心を動かしたのか。人間の「こころが動く」仕組みを探し求めて、ふりかえると10余年近くたった。 演出とは、体験に発見を与える営みである。目的に答えるそれと目的を探すそれの、演出には2つの責務がある。