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CSQLの存在と、その可能性についての考察

カスタマーマーケティングアドベントカレンダーの最終日の担当を拝命したので、僭越ながら書かせていただきます。

何を書こうかと考えましたが、最近私の中でホットな、CSQLについて自分なりの考えを書いてみたいと思います。なお、私自身もまだ考えがまとまりきっておらず、かつ急いで書いたこともあり(笑)、ややゆるい論理展開と締りのない結論になっていることはご容赦くださいm(_ _)m

CSQLをご存知ですか?

皆さんは「CSQL」をご存知でしょうか?CSQLは「Customer Success Qualify Lead」のことで、日本語に直すと「カスタマーサクセス活動によって生み出され、精査されたリード」とでも訳すべきでしょうか。

CSQLはもともとマーケティング用語のMQL(Marketing Qualify Lead)「マーケティング活動によって生み出され、精査されたリード」から派生した単語で、カスタマーサクセスのExpansion活動における手法の一つになっています。

ただ、日本での認知は低く、試しに "CSQL カスタマーサクセス" で検索しても、Googleから「"CS カスタマーサクセス"で検索しています」と直されるし、「Customer Success Qualify Lead」で検索したら、日本語の記事が1件もヒットしません。

ネット上でのCSQLの定義を見てみると、

CSQL is a vetted lead that CSMs introduce to AEs on the Sales team.(CSQLはCSMが営業チームのAEに紹介する精査されたリードです)

となっており、コンバージョン率の高いリードとして紹介されているようです。

CSQLとカスタマーマーケティングの関係

本記事の根幹にあるテーマは「カスタマーマーケティング」です。わたし的にはカスタマーマーケティングは、「既存顧客に向けた、CSMによって行われるスケール可能なマーケティング活動」と定義しています。要は「冷静と情熱のあいだ」ですね。(わからない人は↓の記事をどうぞ)

カスタマーマーケティングを行う上でポイントとなるのは「スケール可能な」という部分ですが、スケールを手に入れる前提条件には「仕組み化」があります。そもそもマーケティング活動は定性的な効果が見えづらいため、極めて定量的な成果を求められます。その前提として「仕組み化」「見える化」は非常に重要であり、逆に言うとこれがないとスケールできません。

 カスタマーマーケティングもマーケティングと言うからには「仕組み化」「見える化」が重要になるのですが、これを強力に後押ししてくれるのがCSQLなのです。

カスタマーサクセスとExpansionの関係

ここでちょっと話がそれますが、私がカスタマーサクセスのイベント登壇をした時によく聞かれる質問の1つに「どうやったらCSがExpansionを発生させられますか?」というものがあります。カスタマーサクセスをプロフィットセンターと位置づけた場合、Net Retention Rate(NRR)をKPIにすることが多く、ExpansionはNRRのいち要素であるため、自然とその数値の達成が求められます。

Expansion(以降、Exp.)を構成するのはいわゆる、アップセル/クロスセルなので、上記の質問をわかりやすく変換すると「どうやってCSがアップセル/クロスセルを生み出すのか?」と言い換えることができます。これは結構深い問いであり、この問いを更に言い換えると「カスタマーサクセス活動を行ったその先に、顧客のアップセル/クロスセルは生まれるのか?」と言うこともできます。

カスタマーサクセスの主な活動は利用の進化・拡大であるため、お題目としては上記の問いに「Yes」と答えるべきでしょう。しかしながら、顧客のプロダクト/サービス利用状況の向上と提供側のLTVの最大化は必ずしも一致せず、顧客側からしたら「サクセスしたのでこれでもう十分」と思うことも多いようです。

私の知っているSaaSベンダーにも「アップセル/クロスセル提案をしているものの、なかなか成果が出ない」と仰っている会社が少なくありません。

カスタマーサクセスにおいてExpansionを生み出す方法

カスタマーサクセス活動でExp.を生み出すためのコツは、「いきなりExp.を目指さない」ということだと思います。ここはマーケティングのノウハウそままなのですが、まずは中間KPIとして、「リードの創出」や「商談」を作ることを目標とすることで、最終目的に一歩ずつ近づくことを目指します。 これは新規顧客の獲得プロセスと全く同じであり、具体的には下記のリードファネルを一つずつ進行させることを指します。

マルケトBlogより引用

そしてここで、CSQLの概念が有効になってきます。マーケティング活動では、まずはLead Generation(上述の「見込み顧客獲得」)を行い、それをMQLに上げること(上述の「見込み顧客育成」)を目指しますが、カスタマーサクセス活動においても全く同じことをします。そしてこの活動をカスタマーサクセス担当が行うので、それがCSQLと呼ばれるだけのことです。

CSQLを生み出すには、まずはLead Generationをしなければなりませんが、既存顧客に対してこれを行う方法は、新規顧客と比較して極めて限定的になります。例えば新規顧客向けであれば、 広告掲載、記事広告、SNS広告などの幅広い広告手法を使って、自社のメディアに見込み顧客を誘導し、コンバージョンさせることもできますが、「既存顧客向けに広告を打つ」ことは非常にターゲティングしにくいため、簡単には実施を決断できないでしょう。

そうなると、Lead Generationの選択肢は絞られてくるので、自然と以下のような限定的な方法なります。

- 既存ユーザーへのメール配信
- 既存ユーザー向けのセミナー

CSQLのCSQLたる所以

しかし、考えてみればこれらは非常にマーケ的な発想です。マーケ的な発想で作られたリードはMQLにはなり得ますが、CSQLにはなりません。MQLもCSQLも「精査されたリード」という意味では同じですが、CSQLは「既存顧客に向けた、CSMによって行われる~」という条件がついています。つまりは、カスタマーサクセス的な発想をもってリードを創出しなければならないと言うことです。ここの部分を十分に検討せず マーケティングの発想をもってカスタマーマーケティングを行うと、間違いなくリード化しませんし、ましてや商談に近いリードになることもありません。

では「カスタマーサクセス的な発想」とは何でしょうか?ここはまだ世の中的にも答えが出きっていないようですが、私としては「顧客の課題感の具体性・個別化」だと考えています。

カスタマーサクセスは顧客理解が重要だと言われていますが、それは言い換えると、「顧客特有の事情をいかに把握するか」とも言えます。同一のプロダクト/サービスを提供したとしても、顧客の置かれた事情、つまりはその組織の成り立ち、歴史、在籍している人物層、業種・業態などによって、そのプロダクト/サービスの利用方法やワークフローはかなり変化します。カスタマーサクセス業務の本質はここを理解すると言っても過言では無いかも知れません。つまり究極的にはそうとう個別化します。

一方で、カスタマーマーケティングはスケールを求められるので、その訴求ポイントは抽象化・表層化する傾向があります。そしてそれが極まると、新規顧客向けのメッセージと同一になります。そして、世の中のカスタマーマーケティングが一筋縄では行かない理由がどうやらここあるようです。

上述した、「カスタマーサクセス的な発想でリードを生み出し、CSQL化させる」と言った場合、極めて具体的に顧客の業務のあり方を想像することが求められます。一方でそれらの活動をスケールさせることが求められるので抽象化も必要となり、カスタマーマーケティングにおいては、この抽象と具体が良い感じにせめぎ合ったポイントを求められることになります。

CSQLの具体的な創出例

上記でいろいろと抽象論を展開しましたが、では具体的にどうやってCSQLを生み出すのかというと、最もわかりやすいのは、カスタマーサクセスマネジャーが顧客に拡大提案をして、先方がそれを真剣に検討してくれた時でしょう。このような活動は、ほとんどの場合シームレスな会話の中で行われるので、リードが生まれたこともそれがCSQL化したことも意識することはありませんが、これは立派なLead Generationです。 そのリードが生み出される背景には、

- 深い顧客理解とそれに寄り添った支援
- 顧客との信頼関係が構築されている前提
- ベストなタイミングでの提案

など多くの必要十分条件が満たされています。ただし、同時に極めて個別化しており、非常にスケールしにくいという性質があるため、カスタマーカーケティングの理想からは遠く離れていることも否めません。

CSQLの創出とは、これを可視化する営みとも言えます。上述したような、カスタマーサクセスマネジャーが意識せず行っている活動を数値に落とし込み、かつスケールさせること、それがカスタマーマーケティングを成り立たせる前提条件になるはずだというのが私の見解です。

CSQLを計測し、それをスケールさせる方法は?

私をはじめ、皆さんが最も興味があるのはここでしょう。これについての上手い方法を考え出せれば、カスタマーマーケティングをプラクティス化することができるかも知れません。しかしながら、この部分はまだ私も模索中であり、「いくつか良手が見つかったかも…」という段階に過ぎません。あと半年~1年トライすれば、もっと具体的に系統立った理論を語ることができそうですが、今はまだ暗中模索の日々です。

中途半端で恐縮ですが、半年~1年後のカスタマーマーケティング勉強会で、これらのプラクティスを公開したいと考えており、必ずそれをまっとうすることを宣言しつつ、この記事を締めさせていただきます。楽しみにお待ちください。 

それは皆さん、良いお年を! 

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