『闇鍋は、何を煮るのか、わからない』。
本記事では言葉の違いの観点から、
ビジネス上の「相談」についての
考察をしていきたい。
前回の記事で私は
『有料相談論』と題して
有料相談についての色々を書いてみた↓
そこでは「〇〇相談」をいくつか挙げ、
それと対比する形で
「有料のキャリア相談」について
主に考えてみたのだが、
そもそも日本ではまだ
「相談」という行為自体が未成熟、
現在進行形の部分がある、とも書いた。
本記事では「相談」にまつわる認識の違いを
日本語と英語の対比から、書いてみる。
(と、仰々しく書き出しましたが、
私は現在、相談を生業としている者でも、
相談業界にずっといた者でもありません。
業界外の素人目線で書くことを、
どうぞお許しください)
◆1:『相談』という日本語
「相談」という日本語は、昔から使われている。
試しに「相談」というワードでググってみよう。
『精選版日本国語大辞典』では、
以下のような結果が出てきた。
『〘名〙 どうするかを決めるために
話し合うこと。話し合い。談合(だんごう)。
※九暦‐逸文・天暦一〇年(956)二月一三日
「二献以後行罸酒、弁二進退相談事一」
※太平記(14C後)四
「其間に具行卿相談して、綸旨を申し下だし」
[補注]「万葉‐六六七」の左注に見える「相談」は
「あひかたらふ」で互いに語り合う意』
…「あひかたらふ」=互いに語り合う。
どうするか決めるために話し合う。談合。
主にそんな意味で、使われてきたようだ。
◆2:『相談』を英語で言うと?
では、この古来からの日本語「相談」と、
英語での「相談する」という単語は、
イコールなのだろうか?
再び、ググってみる。
「相談 英語 何と訳す」などの検索ワードで。
以下のような内容が、出てきた。
『「話し合う、意見を聞く」といった意味である
日本語の「相談」とは、
少々意味がずれてきてしまう場合があります。
状況に合わせて、適切な表現を使い分けましょう』
そう前置きして、4つの単語が書いてあった。
①talk(トーク)
②advice(アドバイス)
③counseling(カウンセリング)
④consultation(コンサルテーション)
この4つは、すべて日本語では
「相談(する)」と訳す、というのだ!
違いをあえて日本語で表現してみると、こうだ
(カウンセリングやコンサルは多種多様ですが)。
①トーク:話し合うこと
②アドバイス:忠告・助言をすること
③カウンセリング:話を聞き、心を平安にする
④コンサル:専門家からの意見や方策の提案
…もともとの日本語で言う「相談」は、
「①talk」に近いだろう。
このあたりの英語と国語の『ずれ』、
『全部一緒くたに「相談」という言葉で訳す』
というところに、ちょっと問題がありそうだ。
つまり、①トークの意味や
古来の「あひかたらふ」の意味だけで
『相談』という言葉を認識している人は、
「ただ話すだけなのに、なぜお金が必要なの?」
と思いやすい、ということだ。
一方、③カウンセリング や ④コンサル の意味で
『相談』という言葉を認識している人は、
「そりゃお金が必要だよな…」と納得しやすい、
と思われる。
2つにまとめると、こうだ。
【1】相談=トーク(素人の話し合い)等→ 無料?
【2】相談=コンサル(専門家の助言)等→ 有料?
「相談」という日本語に含まれる
2つの意味の重複、混ざり合い、ごっちゃ煮。
このなあなあな感じの訳こそが、
「有料相談」サービスが、日本で未成熟である
一つの要因、なのではないだろうか?
◆3:あえての細分化
ここまで「相談」という日本語の持つ、
ごっちゃ煮の性格を炙り出してきた。
「キャリア相談」を、例に出そう。
この言葉だけだと、
◎キャリアについて、ただトークするのか?
◎キャリアアドバイス(アドバイザー)?
◎キャリアカウンセリング(カウンセラー)?
◎キャリアコンサルティング(コンサルタント)?
よく、わからないのだ。
ここに、問題がある。
また「無料/有料」なのか、
「個人/集団対象」なのか、にも分けられよう。
2×2×4=16通りだ。列挙してみる。
①無料・個人・キャリアトーク
②無料・個人・キャリアアドバイス
③無料・個人・キャリアカウンセリング
④無料・個人・キャリアコンサルティング
⑤無料・集団・キャリアトーク
⑥無料・集団・キャリアアドバイス
⑦無料・集団・キャリアカウンセリング
⑧無料・集団・キャリアコンサルティング
⑨有料・個人・キャリアトーク
⑩有料・個人・キャリアアドバイス
⑪有料・個人・キャリアカウンセリング
⑫有料・個人・キャリアコンサルティング
⑬有料・集団・キャリアトーク
⑭有料・集団・キャリアアドバイス
⑮有料・集団・キャリアカウンセリング
⑯有料・集団・キャリアコンサルティング
「コーチング」「応援」「指導」
「対面/非対面」「直接/リモート」
なども分けると、さらに増えるだろう。
…もし「キャリア相談」をしたい場合には、
①~⑯のどれを主に行いたいのか?
そこを事前に、はっきりさせたい。
ただ、「有料」サービスだけで
事業を成り立たせるのはとても難しいので、
まずは体験をしてもらうため
「無料」のサービスを提供する、
ということは、おおいに考えられる。
「有料」へと持っていくために。
①~⑧の施策によって、
⑨~⑯の対象を増やし、選んでもらうために。
また、実際には
こんなにはっきりとは分けられず、
「無料と有料」「個人と集団」を
組み合わせたりすることも多いと思う。
そもそも、
トーク・アドバイス・
カウンセリング・コンサルは
はっきりとは線引きできない、かもしれない。
ただ、それにしても
「分けた上で、あえて混ぜる」のと
「最初から分けずに、ごちゃ混ぜ」のとでは
かなり違う、だろう。
ゆえに、誰かの「キャリア相談」に乗る人は、
「どこまで対象に働きかけていくのか」
聞くだけ? 助言する? 心をほぐす? 提案する?
それを、意識的に行ったほうがいい。
認識のすり合わせを、事前に行ったほうがいい。
仮に①を求めている人に、
いきなり⑯を提供したりすると、
不幸な食い違いが起こるから…。
◆4:まとめ
以上、「相談」について考察してみた。
いずれにしても「相談」によって、
悩みを持ち相談してきた本人自身の内心が、
無視されて食い物にされたり、
訳が分からないまま終わったりするのは
よろしくないな、と思う。
それでは「相談」ではなく、
『談合』だろう。
鍋料理で言えば『闇鍋』である。
「肉団子鍋」なら美味しいが、
「談合鍋」はちょっと、怪しい。
…読者の皆様は、いかがでしょうか?
「相談」という言葉のごっちゃ煮を、
分けた上で、調理して(されて)いますか?
あなたの相談は、何鍋ですか?
かく書いた私も、こうやって調べるまでは、
ごっちゃ煮、闇鍋状態で
「相談」という言葉を使っていました。
自戒して気を付けます。
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