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シンドバッド、マルコ、ヴェルヌ ~海と陸の交錯~

イスラーム、モンゴル、西欧列強!
世界に君臨した大帝国です。
それぞれが隆盛したのは、以下の頃。

◆イスラーム:610年頃~
◆モンゴル:1206年頃~
◆西欧列強:1800年頃~


600年、1200年、1800年。

だいたい600年くらいで
「全世界的に大きく影響を及ぼす」勢力が
この世界に生まれています。

彼らの文化がどんどん広がっていった…。
しかし、これらは特徴も性質も違う。
生育環境、育まれた風土の違いにも
影響されている…。

そこで本記事では、この3つの文化を
3人の人物を取り上げながら
比較して表現しよう、と思います。

◆イスラーム:610年頃~

預言者ムハンマドは
610年にイスラーム教を創始した。
彼の出身は「商人」です。
メッカのクライシュ族の大商人!

ビジネスは世界共通の部分があります。
アラビア半島の枠を越え、
アフリカ、イラン(ペルシャ)、
東南アジアなどにおおいに広がっていく。
…創始者が商人のため、商売のネットワークが
つながりやすいところで広がります。
つまり「貿易路」「海」です。

陸路で東に進むには、インドが防いでいた。
ヒンドゥー教徒の多い国です。
西にはビザンツ帝国(東ローマ帝国)という
キリスト教国があった。
その東西の防波堤を「海で」越えていく。
迂回して北アフリカや東南アジアに広がる…。
(北アフリカ経由でイベリア半島にも)

さて、イスラーム世界における物語では
『千夜一夜物語』が有名です。

俗に言う『アラビアン・ナイト』!
これはイラン(ペルシャ)のササン朝時代に
各地の民話が集大成されてできたもの。
ペルシャはイスラームに征服され、
イラクのバグダードが
東西に広がったイスラーム世界の
中心都市として栄えた。
アラビア語にも翻訳されたんです。

毎晩、娘を召し出しては殺す、という
残虐なペルシャの王に対し、
シェヘラザードという娘が
毎晩毎晩、物語を話して聞かせる。
続きが聴きたいがために、王は1000夜、
彼女を生かし続け、ついに悪習を止める。

シンドバッドは、この物語に出てくる
船乗りの冒険商人。架空の人物。
しかし「船乗り」ということが
イスラームの特徴を大きく表しています。


ユーラシア大陸の中東を中心に押さえた
イスラームは「海」を経由して広がった。
その科学力は、当時、随一でした。
アルカリ・アルコール・アルジェブラ。
「アル」がついている言葉は
ほぼイスラーム起源なのです。

◆モンゴル:1206年頃~

この「海」のイスラームに対してモンゴルは、
「陸」から広がります。

1206年、モンゴル高原を統一したテムジンは、
「ジンギス・カン」と名乗り、
周辺諸国の征服に乗り出す。

中国、中央アジア、イラン…。
果ては東ヨーロッパ、日本、
東南アジアにまで、
モンゴル帝国の勢力が伸びる。

その権力は「独裁」
圧倒的トップダウンです。
力でねじふせ、まとめ上げる!
…このモンゴル・スタイルが、
各国へと広がる。

中国は「元」の後に「明」「清」王朝。
いずれも皇帝独裁の圧倒的トップダウンです。
ロシアはモンゴルの支配から脱し、
「皇帝」(ツァーリ)と呼ばれる
皇帝が圧倒的な権力を持つ国になります。
インドは「ムガル帝国」が栄えますが、
ムガルとはモンゴルがなまった言葉。
中央アジアやイランでも
権力を持つ国王に力が集中していく。
『オスマン帝国(オスマン・トルコ)』
そのうちの一つ。

色んな民族が交錯する大陸。
それをまとめて支配するためには、
「圧倒的な権力者」が必要なのでした。

マルコ・ポーロはヴェネツィアの商人。
教皇から手紙をあずかって、
元の都にて権力者クビライに渡します。
クビライは、元寇で日本を攻めた皇帝。

彼はクビライに気に入れられ、
元の役人として登用されます。
各地で「見聞」を深める。
この24年にわたる旅をまとめたのが
『東方見聞録』でした。

◆西欧列強:1800年頃~

このようにユーラシア大陸の内陸部では、
『明・清』『ムガル帝国』『オスマン帝国』など、
強い帝国が生まれていきます。
これらに対して西欧が取ったのが、
「海からのルート」です。

内陸では、彼らにかなわない。
海から行こう。
いわゆる『大航海時代』

ポルトガル・スペイン。
スペインから独立したオランダ。
イギリス、フランス…。

彼らは主に「海」から勢力を伸ばしました。
戦国時代の日本にまでやってくる。
スペインなどは「新大陸」メキシコを経て、
太平洋を越えてフィリピンまで獲得!

1800年頃からは特に、
イギリスの「大英帝国」が幅を利かせます。
1840年には「アヘン戦争」で清に勝つ。
1858年には「インド帝国」を設立する。
陸にまで入り込みます。
アフリカやオセアニアまで力を伸ばし、
イギリスの言葉「英語」は世界語になる。

…そんな19世紀に活躍したのが、
ジュール・ヴェルヌ、フランスの作家でした。
1828~1905年。「SFの父」。

彼はナントという
フランスの西部、大西洋の玄関口の
港町に生まれました。
冒険商人たちの話を聞くことも多かった。
想像を膨らませて、物語をつくる!

『気球に乗って五週間』『地底旅行』
『海底二万里』『月世界に行く』
『八十日間世界一周』
など、
読者を空想の旅へと掻き立てるのです。
サイエンス・フィクション。

最後に、まとめていきましょう。

本記事では3つの文化を
3人の人物に仮託して比較しました。

◆イスラーム:610年頃~「海」から広がる
◆モンゴル:1206年頃~「陸」から広がる
◆西欧列強:1800年頃~「海」から広がる

シンドバッドは船乗りで冒険商人。
マルコ・ポーロはヨーロッパ~元を往復した。
ヴェルヌは物語内で読者を各地へ旅行させる。

現在でも、3つの文化は広がっています。

現在、イスラームの人口は非常に多く、
世界宗教の一つになっている。
中東の国王の一族には大富豪も多い。

現在、中国やロシアはトップダウン。
その強権で国内を支配しています。
中東やインドもその傾向がある。
「海」の日本、調和を重んずる日本とは、
根本的に異なるところがありますよね。

現在、イギリスや後継者のアメリカは、
科学力をどんどん伸ばして、
アポロ計画では月に行く。宇宙を開発。
海底ケーブルをつくる。深海にも到達。

シンドバッド、マルコ・ポーロ、
そしてジュール・ヴェルヌが現した世界は、
今なお広がり続けているのです。


日本とは、根本的に、風土や文化が違う!

「だからこそ」世界の歴史を学び、
異なる文化を積極的に
「知る」必要があるのでは…と
私は強く思っています。

さて、未来の「2400年」には、
どんな文化が栄えているのでしょう?

ヴェルヌがSF『月世界旅行』を書いたら
本当に月にまで行けたように、

もしかしたら『異世界転生』が実現している…
かもしれませんね!

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