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就業体験プログラム。COOP教育とも。
Cooperative Education。


「インターンシップ」と似ていますが、
似て非なるものです。どこが違うのか?

インターンシップ…企業主体でカリキュラム作成
→業務内容と専門分野の関連性が低いケースあり
→大学の単位として認められない・短期は無償が多い
コーオプ教育…大学主体でカリキュラム作成
→自らの専門分野と関係が深い業務を体験する
→大学の単位として認められる・原則、学生に給与

これが、大きな違いです。

インターンは「企業」、コーオプは「大学」が主体。
したがってコーオプの場合、学生は
大学に単位として認められ、給与までもらえる。

本記事では、この「コーオプ教育」について
あれこれ書いてみます。

そもそもいつ、コーオプ教育が生まれたのか?

1906年、アメリカ・シンシナティ大学の
ハーマン・シュナイダー教授が
「大学のカリキュラム(理論)と、
就業体験(実践)とが
強く結びついた教育システム」
を考案しました。
…まあ、いかにもプラグマティック(実用的)な
アメリカっぽい考えですよね。

1960年代、アメリカ政府は
このコーオプ教育に対する財政支援を実施。
その結果、コーオプ教育は飛躍的に発展します。
1986年には、米国内の全高等教育機関の
約3分の1に当たる1,012校もの学校で
「コーオプ教育プログラム」が開講されたそうです。

この流れから、現在でも、
アメリカでは年間約20万人が
「コーオプ教育プログラム」を受講しています。

…では、日本ではどうでしょう?
こういうプログラム、受講しましたか?

ほとんど、発展してこなかったんですよ。
その理由はいろいろありますが、

「大学の教員は『研究』を本分としており
学生の『就業支援』はメインではなかった」
大学は大学、就業は就業であり、
それぞれ別物だ、ととらえられてきた」
就業は学生個々人のプライベートなことで、
大学はノータッチ、という姿勢があった」

ことが、主な理由ではないか、と思われます。

つまり「業務に必要な実務経験は、
企業に入ってから企業内で積めばいい」
「学生のうちからわざわざ企業に入り込んで
働かなくてもいいのでは?」
「学生は、大学ならではの学問こそを
やるべきでは?」という考えですね。

企業側も、「いや、そんなことしなくても
ウチはウチで、自分たちに合った研修や
インターンシップをしますから」と、
思っていた。

「壁」があったんです。
大学は「象牙の塔」だったんです。

しかし、近年、この「壁」「塔」が
崩れてきている
こともまた事実です。
「インターンシップ」は、今では
普通に行われています。
多くの学生が参加していますよね?

ですが先述したように、インターンは
あくまで「企業が主体」です。
単位としては認められないのが、ネック。
これに対して、コーオプ教育は
「大学が主体」なのですから、
単位として認められる。給与も、出る。

学生側から考えれば「大学公認だ!
お金ももらえるってよ!
おおっぴらに就業体験ができるぜ!」

というところでしょうか。

さて、数多ある日本の大学の中で、
この「コーオプ教育」の構築に
積極的に取り組んできたのが、
京都にあります「京都産業大学」です↓

1999年に「大学コンソーシアム京都」が行う
インターンシップ・プログラムに参加。
2003年には、「サンドイッチ方式」という
オン・キャンパス
(授業による学習と経験の振り返り)と
オフ・キャンパス
(インターンシップによる体験と気づき)を
1年次から4年次まで交互に繰り返す方法を採用。
2009年からは、オフ・キャンパスの部分を
企業等から提供された課題の解決を
目指す方式に変えました。

…要は、ああでもない、こうでもないと
試行錯誤してきた大学なのです。
何しろ、日本ではあまり行われていなかった
コーオプ教育ですから、手探りだったのです。

2014年からは「日本型コーオプ教育」として
「むすびわざコーオプ」をつくりました。
これは「世界標準の新たなプログラム」と言われ、
1~2週間程度のインターンシップではなく、
世界で標準的な「3か月から半年」の
長期有償インターンシップを組み込んだプログラム。
大学が主体となって、
このような仕組みを積極的に作ってきた↓

https://www.kyoto-su.ac.jp/features/career/s1gk4u0000007mrq-att/2015_co-op.pdf

さあ、この「コーオプ教育」。
今後は、日本でも広がっていくのでしょうか?

2022年7月14日、
茨城大学の太田寛行学長は記者会見で、
この「コーオプ教育」を1年生から必修とする
全国の国立大学でも初めての教育課程を、
再来年、つまり2024年に開設することを
発表しました↓

「全国の国立大学で初めて」

…つまり、国立大学ではまだあまり、
行われてきていなかったんですね。
京都産業大学では、20年以上も前から
少しずつ取り組んできていた
のですが。
他の私立大学(立命館大学など)でも
採用されていたのですが。
アメリカでは、さらに何十年も前から
やっていた
のですが。

若干、遅きに失している感じもある。

しかし国立大学でも開設されること自体は、
画期的なニュースである
ように思えます。
今後は、各国立大学でもこのコーオプ教育が
広がっていくのではないでしょうか?

まとめます。

就業体験、と言えば、
「キャリア教育」「インターンシップ」などが
まず思い浮かべられますよね。

大学としては「学生の就業支援」という
側面が、大きく取り上げられていました。

しかし、あくまで「支援」であって、
大学側が主体となって
「一から学生のキャリア形成に働きかける」
という感じでは、なかった。


いわば、「こういう仕事が世の中にあるから
『社会見学』してきて、自分のことは自分で
よく考えて、自由に決めましょうね」
というスタンス。
一部の先進的な大学を除いて、
学生個人と企業との間には、そこまで
大学は大胆には踏み込んでこなかったのです。

コーオプ教育は、そうじゃないんだ。
大学が、主体です。

でも大学がこういう動きをすると、ともすれば
「大学がやることなのか?」
「大学の本分は学問・研究だろ?」
「そういうのは学生個人に任せろよ!」
「大学の就職予備校化じゃないか!」
という批判が出やすいものです。しかし、

このような批判の結果、世間との「壁」ができ、
キャリア意識をしっかり形成しないまま
(できないまま)
多くの学生が世の中に放り出され、
色々な軋轢が生み出されてきた
こともまた事実
(恥ずかしながら私も、その一人でしたが…)。

これからは大学も
「象牙の塔」を気取るのではなく、
いかに、企業や社会と連携して「壁」を壊し、
「実用的な」キャリア教育を充実させていくか?


これが大事であり、生き残る道かと思います。
その一つの鍵が、本記事で取り上げた
「コーオプ教育」ではないでしょうか。

さあ、読者の皆様は、どう考えますか?
あなたの会社は、
この大学主体のコーオプ教育に
積極的に協力しますか?
それとも、独自のインターンシップだけを
行っていきますか?

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