自分のイライラは他人のワクワク?
1、ストレスと喜びと性格
何にストレスを感じて、何に喜びを感じるかは、まさに千差万別、個人によって違うもの。
「あー、イライラするぜ!」
「おー、ワクワクするぜ!」
人間は感情の動物ですから、そのような内なる気持ちは必ず持っています。何となくイライラする、何となくワクワクする。この気持ちのブレを「言語化」して「見える化」できないか…。多くの人がこの難題に挑戦してきました。
しかし難しいのは、ある人にとって「イライラ」することが、他のある人にとっては「ワクワク」することがある。同じ出来事に対しても、人によって感じ方が違う。これまた当然のことです。当然だからこそ、その理由が見えにくい。「個性」「性格」の違いだよ、と一言で片づければ早いのですが、ではその「個性」「性格」って何ですか?という難題に突き当たります。
この記事では、ストレス、喜び、性格、そのあたりを書いていきます。
2、ロジカルモンスターの憂鬱
物事を明確にするためには、極端なキャラを例として挙げたほうがいい。なぜなら、突出しているキャラを眺めることで、突出していないことが逆にあぶりだせるからです。
ということで「ロジカルモンスター」を例に挙げましょう↓。
ロジカルモンスター=論理的な怪物。
つまり、物事を白黒はっきりつける。そのためには他人の心理がどうなろうと知ったこっちゃない。人を傷つけても論理を貫く。AだからB。合理的。ズバズバ斬る。こういう人を想定してください。
こういう人は、どのような時にストレスを感じるのでしょうか?
「白黒はっきりしない、曖昧な、単純に論理で考えれば馬鹿らしい、理にかなわないことを平気でやっている状態」。こういう状態にイライラするのではないでしょうか?
では逆に、どのような時に喜びを感じるのでしょうか?
「白黒はっきりしている、明快で、単純に論理で考えて、理にかなっていることだけをやっている状態」。こういう状態になれば喜びを感じるのではないでしょうか?
ここまで考えて、私にはある人物のイメージが生まれました。「チーム・バチスタの栄光」の白鳥圭輔…は、さんざん例として取り上げましたので他の人物を。それは、司馬遼太郎さんの小説「花神」の主人公、村田蔵六。またの名を大村益次郎です↓。
NHKの大河ドラマにもなりましたね↓。
小説の概要はこの紹介文より↓。
周防の村医から一転して討幕軍の総司令官となり、維新の渦中で非業の死をとげたわが国近代兵制の創始者大村益次郎の波瀾の生涯を描く長編。動乱への胎動をはじめた時世をよそに、緒方洪庵の適塾で蘭学の修養を積んでいた村田蔵六(のちの大村益次郎)は、時代の求めるままに蘭学の才能を買われ、宇和島藩から幕府、そして郷里の長州藩へととりたてられ、歴史の激流にのめりこんでゆく。
幕末の蘭学者・村医者→討幕軍の総司令官。学者ですから論理的。というか「ロジカルモンスター」そのものです。司馬遼太郎さんは、そのキャラを余すことなく描き出しています。このエピソードが一番わかりやすい↓。
夏の暑い日。村人とすれ違ったときに「暑いですね」と挨拶される。よくある挨拶。すると蔵六はこう答える。「夏は暑いものです」。真顔で返す。堅物というか人間味がない。村で蘭学の病院を開業しても、村人は寄ってこない。でも本人は、そんなこと全く気にしない。
ふつう、「いやあ、ほんとに暑いですね」とでも返すでしょう。挨拶ですから。そこに「夏は暑いものです」と返されたら、言った村人もムッとします。でもお構いなし。正しいけれど反感を買う。こういう人にとっては、白黒はっきりしているほうがいいでしょう。はっきりしないと嫌でしょう。
3、エモールリバイバーの憂鬱
では逆に、論理的でない人、感情的な人はどうか?
私は先日の記事で、ロジカルモンスターの反対を考えてみました↓。
そこで提唱したのが「エモールリバイバー」という言葉。
エモール=エモーショナルの略=感情的。
リバイバー=再興する人。
もう一度図で示すと、こんな感じですね↓。
つまり、物事を白黒はっきりつけない。他人の心理がどうなるかが気になる。人を傷つけるくらいなら、論理を無視する。AだからBなんて言えないでしょ、人間だもの。感情的。斬らない。こういう人を想定してください。
こういう人は、どのような時にストレスを感じるのでしょうか?
「白黒はっきりしている、明快で、単純に論理で考えて、理にかなっていることだけを、コンピュータのごとく黙々とやっている状態」。こういう状態には、人間味が感じられず、何となくイライラするのではないでしょうか?
では逆に、どのような時に喜びを感じるのでしょうか?
「白黒はっきりしない、曖昧な、単純に論理で考えれば理にかなっていないけれど、何となく居心地が良い、人の気持ちを尊重し合っている状態」。こういう状態になれば喜びを感じるのではないでしょうか?
ここまで考えて、私にはある人物(キャラ?)のイメージが生まれました。「レンタルなんにもしない人」…は、記事の中で例として取り上げましたので他の例を。それはこちら!↓
「リラックマ」さんです(笑)。
…リラックマは、どう考えても論理的ではなさそうですよね。そこにいるだけ。感情的にじわじわくる。癒し系。何か自分をそのまま肯定されているような感じ。そもそも名前が「リラックス+クマ」ですよ? 「みんな、そのままでいいんだよ!」「もっと肩肘張らずに生きていこうよ!」そんな心のメッセージすら聞こえて、ただのキャラクターの域を飛び越えて、もはや「概念」になっているのではないか、と思うほどです。
(↓概念に昇華するくらい偉大な人物やキャラはこの世に存在します。参考までに、最所あさみさんのnote記事のリンクを貼ります↓)
たぶん、ロジカルモンスターにとっては不倶戴天の敵、ずたずたに剃刀で斬り裂かれる…と思いきや、ロジカルモンスターも自室ではリラックマに癒されているかもしれない(笑)。そこまでの魅力を持ったキャラだと思います。クマなのに。一言もしゃべらず、その存在だけで人を癒す。
4、FFS理論
ここまでは、ロジカルモンスターとエモールリバイバーという(極端な)例を挙げて、人によって何にストレスや喜びを感じるかは違う、ということを述べてきました。
ここで、1つの理論を紹介しましょう。FFS理論です。
詳細はこちらの記事がとてもよくまとまっていたので、ぜひ↓。
要するに、5つの因子とストレスを調べることで、その人の個性がわかるという理論です↓。
FFSは、組織の生産性を上げるために研究された「人の思考行動の特性を客観的に分析する理論」です。Five Factors & Stressの名の通り、5つの因子とストレス(何に対してストレスを感じるのか)の状態によって、あなたの個別的特性(個性)を表します。
このFFS理論は、国際基督教大学、ウィーン大学を経て、モントリオール大学国際ストレス研究所で専門研究員などをつとめた小林惠智博士(経済学博士、教育学博士、組織心理学者)が提唱したものです。
FFS理論は、企業の組織生産性を高めるために人材の特性や組織の分析に使われています。株式会社ヒューマンロジック研究所が推進しており、これまで国内外約800社で導入されています。
この理論で特筆すべきは、スキル・経験といったよくある要素ではなく、ストレスと個性に着目して、人を分析して、強いチーム作りを目指すところ。つまり、いくらスキルや経験があっても、ストレスと個性の組み合わせが合わなければ、強いチームにはならないということです。
同じような人が集まっても居心地がいいかもしれないけど発展性がない、違う人が集まるとぶつかるかもしれないけどお互いに刺激し合って補って発展する、かもしれない。これは、チームスポーツをしたり組織で働いたりした経験がある方なら、肌で感じられることかと思います。そのあたりの「曖昧なよくわからない部分」を、見事に言語化して見える化する理論です。
5つの因子は、以下の通り↓。
A 凝縮性・B 受容性・C 弁別性・D 拡散性・E 保全性
※「凝縮性と受容性」「拡散性と保全性」がそれぞれ対になっている。
A 凝縮性:自らを固定・強化しようとする力の源泉となる因子。
※こだわりの強さ、信念の強さ
※キーワード:正義、権威性、責任感、義務感、批判的、偏執固執
B 受容性:外部の状況を受け入れようとする力の源泉となる因子
※受容的になんでも受け入れる、相手を見る、周りの雰囲気、環境の変化を見る。相手が嬉しいことが自分の嬉しさになり、人を育成するマインド
※キーワード:貢献、保護的、共感、愛情、過保護
C 弁別性:自らの内部・外部の状況を相反分別しようとする力の源泉となる因子
※キーワード:合理的、理論的、具体的、データ、因果関係
D 拡散性:自らを拡張・発展させようとする力の源泉となる因子
※拡散的に自由に動き回って色々なものを見たいという知的好奇心、飽き性※キーワード:とりあえず、まあいいか、面白い、適当、アバウト
E 保全性:自らを保全・維持しようとする力の源泉となる因子
キーワード:このまま様子を見ましょう、無難、安全、確実にできることから、他はどうなのか
さて、あなたはどのような個性をお持ちで、どのようなことにストレスを感じるでしょうか? こだわりがある? 受け入れる? 白黒はっきり? いろいろやろうぜ? いのちをだいじに?
村田蔵六(大村益次郎)は、弁別性が高そう。きっちり線を引く。うまくいけば「天才軍略家」で、いかなければ「冷血漢」と批判される。一方、リラックマは、弁別性が低そう。線を引かずになあなあ。うまくいけば「癒し系」で、いかなければ「能天気すぎる」と批判される。
ヒューマンロジック研究所のホームページでは、さまざまなタイプが例として挙げられ、動画での説明もあります。良ければぜひ↓。
5、表裏一体
いかがでしたでしょうか? この記事では、ストレス、喜び、性格の話から、対照的な人物(キャラ)を例として挙げた上で、FFS理論を紹介してみました。
自分が何にストレスを感じるか、正しく把握し、他人が何にストレスを感じるか、しっかり推察することは、お互いが快適に過ごすために欠かせないことかなと思います。
自分のイライラは、もしかしたら、他人にとってはワクワクなのかもしれません。ストレスは表裏一体。強すぎればマイナスに働き、適度なストレスはプラスに働くかもしれません。決して、一面的、片面的だけで判断できるものではないと思います。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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