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五輪の入場行進は、
世界各国のイメージをつかむ
格好の歴史&地理教材でもある。

この記事では「カザフスタン」
取り上げてみたい。

中央アジアは日本から
なかなかに遠い場所である。
物理的にも、精神的にも。

カザフスタンは、そんな
中央アジア諸国の一つだ。
ロシアより南、モンゴルより西、
ヨーロッパより東、イランより北。
…そのあたりである。

場所的に東西を結ぶ
重要な交易路でもあった。
「シルクロード」のイメージ。

現に『西遊記』では、三蔵法師こと
玄奘三蔵というお坊さんが
中国から天竺(インド)に
向けて旅をするのだが、
この中央アジアを通って
南のインドへと向かったという。
その時にはカザフスタンのお隣の国、
ウズベキスタンの「サマルカンド」
「青の都」にも立ち寄ったそうだ。

…世界史が好きな方なら、
『タラス河畔の戦い』という
東西超大国の一大決戦を
知っているかもしれない。

751年、東の『唐王朝』と
西の『アッバース朝』の軍勢が
カザフスタン~キルギスあたりの
タラス地方で激突した。

この時に負けた唐からは、
製紙職人たちがサマルカンドに
連行され、紙の作り方が
中国から西方へと伝わった、という。
もしここで紙が伝わらなければ
後の西欧の成長もなかったかもしれない。
なお、アッバース朝はイスラームの国。
中央アジアはその後、イスラームの影響を
大きく受けることになった。

つらつらと述べてきたが、要は
「東と西とを結び付けている場所」
中央アジア諸国、カザフスタンは
位置している。

2020東京五輪の開会式において
カザフスタンの国名を
一躍トレンドに押し上げたのは、
ファイナルファンタジーのテーマの
タイミングで旗手として現れた
オルガ・リパコワ(オリガ・ルイパコワ)
選手だろう。

そのお姫様然とした姿に、ネット上では
「FFⅣのローザ」「リアルゼルダ姫」
「リアルアナ雪」
などの
ワードが飛び交い、騒然となった。

彼女は、2児のお母さんだ。
陸上三段跳びの金メダリストにして
4大会連続出場のベテラン選手。
その名声は国内でも圧倒的で
2013年には「切手」にも
採用されたほど有名な方でもある。

白い彼女の衣装は
カザフスタンの民族衣装を
モチーフにしつつ、
有名デザイナーである
ヴィオレッタ・イワノワさんが
デザインしたという。
「二羽の白鳥、幸福の鳥」
イメージして作られたそうだ。

白のシルク。跳躍。
東西文化融合。そして、独立。

カザフスタンの「カザフ」には、
「独立不羈の者」という意味がある。
白鳥と言えば、若山牧水の短歌、
『白鳥はかなしからずや空の青
海のあをにも染まずただよふ』

という一首も思い浮かぶ
(白鳥は「しらとり」と読みます)。

東西の文化を吸収・橋渡ししつつも
凛とした独自の文化を持ち
飛び立つ白鳥…。

カザフスタンは、
そんなイメージを開会式で
鮮やかに示した、といっていい。

読者の皆さんは、
五輪の入場行進で
各国にどんなイメージを持ちましたか?

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