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野分のまたの日こそ、いみじうあはれにをかしけれ。
と書いたのは枕草子の作者、清少納言です。

『台風の翌日はたいそうしみじみと趣深い』。
現代語訳すると、こう。

「ざっけんなよ、セイショウナゴン!
各地で被害が出ているのだから、
をかしけれ、も何もないだろうよ!」と
言いたい人もいるかもしれませんが、

「雅な平安貴族」の女性の目から見れば、
下の身分の者たちがきっちり
後片付けをしてくれるので、
自分が大変なわけではないのです。

「むべ山風を…」などとたおやかに、
しみじみと言えば、良い。

日本は「台風列島」とも呼ばれます。
太古の昔から、慣れっこになっている。
だからこのような「文化」に「昇華」できる。

…ただし、これが「人災」となれば?
本記事は、未知の人災に備えよう、という記事。

いわゆる『ブラック企業』
危険な組織において、人災は日常茶飯事です。

◆「上司の怒号が毎日飛び交う」
◆「度を過ぎた人格否定の叱責」
◆「灰皿が飛んできた」

などなど、暴風雨ともみまがうばかりの
パワハラ、〇〇ハラが起こる、と言います。

…ただ、人間には適応力がある。
住んでいる環境に「慣れてしまう」。

台風列島に住む人々が
「また台風が来たか…」と思ってしまうように、

ブラック企業に住む人々は
「むべ山風を…」と慣れっこに
なってしまっている可能性があるのです。

よく、雪国出身の人が東京に来た時、
「東京では二センチの積雪が見込まれます。
最大限に注意して通勤・通学してください」
などのニュースを聞いて、

「二センチ…!(失笑)」

という気分になる、と言いますよね。
それにも似ています。

人間、厳しい環境を経験している場合は、
災害を災害とは認識しない、のです。


客観的に見れば「災害」。しかし、
「どこが災害なの? いとをかし」と
思ってしまうことがある、ということ。
常識が、違う。

…ここが、怖いところ、ですよね。

雪国にとっては「たったの二センチ」。

ですが、東京に住む人にとってみれば
「普段慣れていない」ので、
「雪に対する常識」がなく、

雪の際の歩き方にも慣れておらず、
雪用タイヤなども装備しておらず、
事故につながる危険性が高い、のです。

もう少し、自然災害にかこつけて、
例を挙げましょう。

例えばウズベキスタンには、台風が来ない。
ゆえに、日本に来たウズベキスタンの人は、
「すごい風? ちょっと経験したい!」
と、軽く考えてしまうかもしれません。


(ここから引用)

『「強い風って、どれぐらい強いのかしら?」

台風が最接近したとき、カミラさんの母は
外に出てみたいと言い出しました。

ウズベキスタンにはない「台風」。
どういうものか、予想がつきませんでした。


(中略)

外に一歩出ると、
足元をとられるような激しい風。
自動ドアが風で開きそうになるのを、
必死で押さえる人たちも見ました。

予想以上の危険を感じ、カミラさんと母が
部屋に帰ろうとしたとき、
高層階用のエレベーターが止まりました。
「こんな影響が台風で出るなんて」
と驚きました。

カミラさんたちの部屋は42階。
40階までのエレベーターが動いていましたが、
強風のため、乗っている最中でも、
中で揺れを感じ、
「死ぬかもしれない」と恐怖でした。』

(引用終わり)

この記事は、
『〝台風のない国〟の父娘が実感
「災害大国」の恐怖 日本人にも気づき
「大丈夫だろうが通じない」』
という記事の一節です↓

台風の恐ろしさを「そもそも知らない」ため、
好奇心から、カミラさんの母親は
「経験してみたい」と言い出して、
経験し、死の恐怖を感じてしまいました。

記事の最後には、こんなまとめが。

(ここから引用)

『台風がない国から来た人は、台風のときに
どんな行動をしたらいいかわかりません。

「土砂災害」「特別警報」などの言葉では、
イメージがつかないかもしれません。

「強い雨がたくさん降ると、山がこわれます」
「ここはとても危ないです。
一緒に避難所へ行きましょう。
避難所は安全な場所です」

もし、近くに困っている人がいたら、
これから起こりえることを、やさしい表現で
伝えてあげてください。

日頃から、ハザードマップを見たり、
住んでいる地域のリスクを
一緒に考えられるといいと思います。』

(引用終わり)

…さて、私が述べたいことが
予想できましたか?

私は、この引用文の
「台風」という言葉を
「人災」「ハラスメント」などに
置き換えたい
、と思うのです。

(ここから置き換え引用)

『人災がない会社から来た人は、人災のときに
どんな行動をしたらいいかわかりません。

「パワハラ部長」「鬼社長出社特別警報」
などの言葉では、
イメージがつかないかもしれません。

「強い叱責をたくさん受けると、
精神がこわれます
「ここはとても危ないです。
一緒に人事労務、弁護士事務所、
労働基準監督署などへ行きましょう」

もし、近くに困っている人がいたら、
これから起こりえることを、やさしい表現で
伝えてあげてください。


日頃から、ハザードマップを見たり、
ハラスメントのリスクを
一緒に考えられるといい
と思います。』

(置き換え引用終わり)

最後に、まとめます。

組織における人災、ハラスメントが
これほどまでに世間に知られてきたのに
まだ無くならない、ということは、

「感覚」や「基準」が、人によって
千差万別である、という証左だと思います。


自然環境も労働環境も似ています。

過酷な環境で育ってきた人にとって
ちょっとした苦難は
そもそも災害とは認識しない、

ということがありえる。

こういうところから
「違和感」「世代間格差」
「ミスマッチ」「意図せぬ退職・悲劇」
「そんなつもりではなかったのに訴訟」

生まれてしまう、と思うのです。

ちょっと立ち止まって、

「これはもしかしたら、
相手にとっては災害、人災ではないのか?」

そういう想像力を働かせたり、

「相手の認識、常識はどうなのだろう?」

意識をすり合わせたりしておくことが
必要なのではないか、と思います。

特に、新卒社員、転職してきた人、
異なる国から来た人など、
「社内の常識」に慣れていない人には、
それは必須ではないでしょうか。

「社内の常識」は、
「非常識」なのかもしれない。


「たった二センチ」と慣れている人は思っても
慣れていない人にとっては
死の恐怖かもしれないのですから…。

もちろん、それがあまりにも行き過ぎると、
「あつものに懲りてなますを吹く」状態にも
なってしまいます。

大事なことは、
「相互理解」「想像力」「すり合わせ」
そしてそのシステムやカルチャー。

そんなことを、台風のニュースを見ながら
考えました。

読者の皆様や、皆様の組織は、いかがですか?
「台風列島」になっていませんか?
「ハザードマップ」は、共有していますか?
「未知の人災」に、常日頃から、
お互いに、備えていますでしょうか?

※手前味噌ですが、同じ記事を引用して、
『台風がこない国、未知の災害』
という記事も書きました↓

『労働基準監督署にパワハラについて
相談して解決できる事とは』という
「労働問題弁護士ナビ」の記事はこちらです↓

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