見出し画像

パリっとした皮に餡が入っている「もなか」
もなかって『最中』と書きますよね。
さいちゅう。もなか。…さいちゅう?

なぜ、と思ったりしませんか?

本記事では、最中、もなかについて
つらつらと書いてみました。

◆最中:さいちゅう、何かが進行している状態。
◆最中:もなか、和菓子の一種。

…うん、どうにも結びつかない。
なのに、文字は一緒…?

結論から、ずばり申し上げましょう。
和菓子の「もなか」は、
「何かが進行している状態」の「さいちゅう」
という言葉が由来
だそうです。

「ほう、そのまんまですね。
では、何の『さいちゅう』だったんですか?」

ええ、軽く「もなか 由来」などで
検索してみますと、出てきますよ。
ChatGPTで聞いてみてもいいかもしれない。

◆池の面に照る月なみを数ふれば
 今宵ぞ秋のもなかなりける

という和歌が由来、という説が有力です。
つまり、秋の最中、さいちゅう。

「月? 秋のもなか…?」

ええ、この和歌は『拾遺和歌集』にある和歌。
源順(みなもとのしたごう)という貴族が
詠んだものだ、と言われています。

拾遺和歌集は、古今和歌集、後撰和歌集に次ぐ
第三番目、いわばサードの勅撰和歌集。
奈良時代、平安時代の頃には、
「言葉の力」が今よりもずっと信じられていて
「和歌」をまとめるのは国家プロジェクトだった。

この源順さんは、見事な月を見て
「ああ、今夜の月は秋の真っ最中だなあ…」
かなりストレートに詠んだわけですけれども、

その和歌を知っていた公家さんたちが、
宮中で行われた月見の宴において、
「白くて丸い餅菓子」が出た時に
この和歌で詠まれた
「秋の真っ最中のお月様」に見立てて、

◆「もなかの月」

と、この餅菓子のことを読んだ。
…というのが由来だそうです。

「俺、和歌、知ってるぜ。知らないの?」
「う、うん、知ってる、知ってる!」と
ゲームの知識を競い合う中2男子のような
ちょっと微笑ましいエピソード。

和歌の教養があるかないかが、
平安貴族にとっては、かなり大事
なのです。
(異性を口説く時にも必須スキルですし…)

〇「丸い餅菓子」
=満月、秋の「最中」の月
=もなかの月

ただ、じきに「丸くない」もなかが
流通し始めた時に、
「月じゃないじゃん!」ということで
単に「もなか」と呼び始めた、とのこと。
確かに、現在では「アイスモナカ」を見ても
丸くありませんよね。四角です。

ま、呼び名など、こんなものです。

ちなみに、お月様にちなんだお菓子には
「月餅」(げっぺい)もありますよね。
これは古代中国からの由来。
今でも中国では「中秋節」、
旧暦の八月十五日頃(今だと九月や十月)の
お月見の時に食べる習慣があります。

バレンタインデーのチョコレートのように
中秋節には月餅を贈答するので、
この季節にはすごく売れるそうです。

◆月餅=基本、丸いまま
◆最中=月で丸かったが、四角なども出てきた

…私などは、何となくこの対比に、
「どんどんアレンジしていく日本文化」を感じ、
趣深く思ったりするのです。

さて、平安時代には「餅菓子」だったのに、
なんで今、「パリっとした皮」のもなかに
なっているのか
、これを書いてみましょう。

現在のお菓子の「もなか」の源流は、
江戸時代中期に
吉原のお煎餅屋さんにて販売されていた
「最中の月」というお菓子だそうです。

これは、もち米粉に水を入れてこねて蒸して、
薄く伸ばして丸い形に切ったものを焼いて、
(クレープみたいですね)
仕上げに砂糖をまぶしたお菓子、でした。
「丸い煎餅」にも似た「干菓子」。

しかし次第にこの「煎餅型の最中の月」に、
餡を挟んで売り出したものが出てきた。
餡のサンドイッチ、ですね。
より豪華なスイーツになっていく。

ただ、サンドイッチはうまく食べないと
餡がはみ出て、手も汚れてしまうものです。
どっちみち餡を入れるのならば、
はみ出ないほうが食べやすくないか?
ポータブルな持ち運びも、贈答用にも便利だし…。

はい、ということで生まれたのが
「餡をパリっとした皮の中に入れたお菓子」
明治時代以降に定着していった。

…つまり、もなかの本体は餡ではなく、
皮のほう、だったんですよ。煎餅のほう。
それを「餡サンド」にした。
それが「餡がイン」になり、今の最中になった!

平安時代に名前の由来を持つ「最中」。
本当は「月」の「餅」だったのが
江戸時代に「煎餅」になり、
次第に餡とセットになっていき、
明治時代に「もなか」になっていった…。

これぞ、もなかのキャリア。
今では、全国各地で千差万別、ご当地的な
「もなか」がたくさんありますよね!

東京港区では忠臣蔵の赤穂四十七士にちなんだ
「切腹最中」があります。
銀座では「空也最中」
とらやの「最中弥栄」も忘れちゃいけない。
東京と言えば「都電」ですが、
その都電をかたどった「都電もなか」も重要。

仙台なら「白松がモナカ」です。
千葉県ならご当地食材ピーナッツを使った
「ぴーなっつ最中」がありますよね。
栃木県の足利市には、足利学校の
「古印」をかたどった「古印最中」が。
伊豆には、かわいい猪の形の「猪最中」

滋賀県の近江八幡市なら「ふくや天平」
長崎に行けば、好きなだけ餡を詰められる
「てづくり最中」があるそうです。

「…ちょっと! うちの地元にも
有名な最中、あるんですけど! 書いてよ!」

すみません、書ききれなくて…。
これら以外の「ご当地もなか」の紹介は
読者の皆様にお任せするとして、
そろそろまとめていきましょう。

本記事では「最中」さいちゅう・もなかの
名前から疑問を持ってみて、調べて、
お菓子の「もなか」について書いてみました。

「パリっとした皮」で「挟む」。

「丸い月」という由来に囚われすぎず、
このポータブルなスタイルが抜き出されたことから、
各地でアレンジされ、様々なもなかが
百花繚乱の如くに生み出されていったのです。

どこか、この「キャリア大航海時代」において
自分なりにキャリアの花を咲かせるべき
現代人に通じるものがあります
。たぶん。

ちなみに私の一押しは、
栃木県のいちごを使った「おとめサンド」

もなかの皮に、求肥(ぎゅうひ)とアイス。
センターには、栃木が誇るいちご、
「とちおとめ」が、ででんと鎮座する。
それを自分でぎゅうっと挟んで
もなか型にして一口食べれば、
「こんなん、美味しいに決まってるやん!」と
思わず叫んでしまいそうな逸品!
(季節限定商品です)

さて、次は読者の皆様のターン。

イチオシの「もなか」は何ですか?
また、あなたは何に取り組んでいる
「最中」なのでしょうか?

良ければ、教えてください!

よろしければサポートいただけますと、とても嬉しいです。クリエイター活動のために使わせていただきます!