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ずっと「その後」が気になっていた選手。

プロ野球は、華やかなスポットライトの「光」と
人知れずそっと退場していく「闇」とが
交錯している世界です。

記録樹立、監督就任、名球会入り…。

そこまでたどりつく「スター」
一握り、いや、指でつまむほどしかいない。
試合にすら出られず、いつの間にか
プロの舞台から去っていく選手のほうが多い。

闇があるからこそ「星」の光が輝くのです。

本記事では、そんな闇の中から、
次の光へと進む、ある選手を紹介します。

秋。レギュラーシーズンが終わって
クライマックスシリーズ・日本シリーズが
始まっていくその横で、

各球団は「ドラフト」などで
新戦力を獲得します。一方、
「戦力外」としてプロ野球の世界を
去っていく選手たちも、います↓

寒くなっていく時期。いわゆる
「ストーブリーグ」が過熱するのです。

新陳代謝・入社退社…。
それは一般の会社でも、
プロ野球チームでも同じことです。
ただしそれが、わずか二年で
「戦力外」とされるケースは、あまりない。


なぜなら、何か光るものがあるからこそ
プロ野球のスタートラインに立てたのだから。
そこに至れるだけでも、凄い。
それをさらに輝かせるための試行錯誤を、
本人も球団も、行っていくもの。

それが「二年」…!

そんな短いプロ生活を過ごした選手の一人に、
元広島東洋カープの
鈴木寛人(すずきひろと)さんがいます。

茨城県の霞ヶ浦高校出身。
2001年生まれ。

この高校は、毎年、
素晴らしい投手が続出することで有名です。
監督の高橋祐二さんは、
特に「投手育成」には定評のある方です↓

鈴木投手は、正統派の右投手。

身長186センチのしなやかな体。
バランスのいい投球フォーム。
伸びのあるストレートは最速148キロを記録し、
チームを甲子園出場へと導きます。

2019年秋、彼はカープに
ドラフト三位で指名され、入団しました↓

2学年上の先輩には、同校の出身の
遠藤淳志投手がいます。
未来のカープ投手陣を
引っ張る逸材として期待されたのです。

…しかし。

彼は2021年秋に戦力外通告を受けました。
わずか、二年。


私はこのニュースを聞いた時、
心から驚きました。信じられない。
何かの事故か、とまで思いました。

カープは「育成のカープ」とも言われます。
これからの逸材を掘り起こし、スターにする。
そんなカラーの球団です。

その代表的な存在が、新監督となる
新井貴浩さんでしょう。
ドラフト六位で入団した彼は、
猛練習を重ねてレギュラーをつかみ、
阪神でも実績を積んで古巣にカムバック、
監督にまで就任する「雑草からのスター」。

新人を、育てるチームなのです。
それが二年。よほどのことがあったのか?
調べると、記事が出てきました。
「イップス」という単語とともに…↓

(ここから引用)

『キャンプが始まるとすぐ、
鈴木の内面にある変化が芽生えた。

「周りの選手がすごいので、
『このなかでやっていけるのかな?』という
プレッシャーを感じ始めていました」

同期のドラフト1位は森下暢仁。
名門・明治大のエースで、
同年10勝を挙げて新人王を
受賞してしまうような大物である。

鈴木は横目に飛び込んでくる
森下のボールに気圧され、
さらにキャッチボール相手の
ボールにも衝撃を覚えた。
ドラフト6位入団の左腕・玉村昇悟である。

球速は140キロ前後でも、
「手元で球威が死ぬ球がない」と
強烈なキレを感じた。

年上の森下だけでなく、同年齢で
下位指名でもある玉村もレベルが高い。
鈴木の脳裏に、
ネガティブなイメージが広がった。

「1年目は体づくりがメインだ
と考えていましたけど、
早い段階で結果を残さないと
クビになるとも聞いていました。
新人や先輩のレベルの高さを見て、
『結果を残さないと』と感じていました」


キャンプ中盤に入ると、キャッチボールの
段階からボールが指にかからなくなっていた。

「普通にスーッと伸びていく球じゃなくて、
最初から山なりで。ボールが抜けちゃうので、
指にかかる感じがなかったです」

ボールが抜けないよう、
早め早めに動作をつくっていこうと意識すると、
さらにバランスが崩れていった。
いつしか元の美しいフォームとはかけ離れた、
バラバラの投げ方になっていた。

もはや自分がイップスであることを
認めないわけにはいかなかった。

(引用終わり)

イップス。
動作に支障をきたし、
思い通りに体が動かせない症状。

野球だけでなく、
ゴルフやテニス、卓球やダーツなどでも
見られる症状です。
「局所性ジストニア(職業性ジストニア)」
とも呼ばれます。

特に野球は、反復動作が多く、また
一つのエラーで勝敗が決まることもあるために、
イップスになる選手も多いと聞きます。
田口壮選手や荒木雅博選手などの「名手」も
これに苦しんだそうです。

鈴木投手も、苦しみました。

(ここから引用)

『「自分のなかで腕を振ることが
どんどん怖くなっていきました。

意識して強く振ってみても、
キャッチボールから暴投することもあって…」

テレビの向こうでは、
躍動する同期たちの姿があった。』

(引用終わり)

彼は、入団二年後、戦力外通告を受けました。
では今、彼はどうしているのか?
私は、その後が気になっていました。

…彼は今、母校の霞ヶ浦高校の寮に住みこみ、
練習を続けているそうです。

高橋監督の厚意もあり、改めて自分に向き直り、
自分のペースで、次を模索しているのです。

(ここから引用)

『今の状態を聞くと、
鈴木は「イップスで0になったとしたら」と
前置きして、こう続けた。

「40〜50くらいまではきています。
いっても60くらいかなと。
日によって変わる部分もありますが、
ダメな周期が少なくなってきた実感があります」』

(引用終わり)

最後に、まとめます。

組織の運営に当たる方々はぜひ、
「イップス」に心配りを
していただければ、と思います。

…皆様の組織には、
心理的・肉体的に「見えないイップス」に
陥っている方はいないでしょうか?

鈴木投手の例からもわかるように、
同僚との比較、プレッシャーやネガティブ思考、
静かに、それは進行してしまうものです。

鈴木投手については、私はこう思います。

2001年の生まれ、2022年には21歳。
仮に大学に進学していたとしても、
まだ三年生。
むしろ、これからが始まりなのでは?

一人ひとりの人生から見れば
戦力外通告とは「終わり」だけではなく

次の自分の「戦力」とは何なのか、
自分はどうやって生きていくのかを
模索する「始まり」でもある
のですから。

スターでなくても、再スタートはできる。
闇が濃かった人であればこそ、
その次の光が、輝く…。

このニュースで、私はそう思いました。

読者の皆様は、どう思うでしょう?

◆こちらの記事もぜひ。

『広島東洋カープの新監督、新井貴浩さん』↓

『佐々岡監督の辞任報道とキャリア』↓

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