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仮に「弁護士」「建築士」のように、
「実用地歴士」という資格があると夢想しましょう。

実用、とついているがゆえに、
実際に使用できる、使える地理歴史サービスを
提供する人でないといけませんよね。

これに対する概念は、「無用地歴士」
すなわち、何にも用いられない地理歴史サービス。
使えない地歴。
「使えぬなら、殺してしまえ、地理歴史」
とばかりにバッサリ斬られるような地歴。

では、学校現場で教えられる地理歴史は、
無用の地歴、なのでしょうか?

…いや、そんなことはありませんよね。

ある程度「強制的に」学ばせられる、
四十七都道府県の名前と県庁所在地やら、
〇〇時代と名付けられた時代区分により、
私たちはある程度、
地理的・歴史的なものの見方や知識の
「土台」を得ることができます。

国語で言えばひらがなカタカナ漢字、
算数で言えば加減乗除、
そういったものに当たるでしょう。

また、進学試験のための地理歴史、
受験地理とか受験日本史・世界史とか、
これも広い捉え方からすれば、
「実用」と言えなくもありません。
なぜなら「進学する」という
目的には使える、実用できるから
です。

では、無用と実用の間を隔てるものは、
いったい何なのか?
どんなものでも使えれば「実用」、
使えないと考えれば「無用」ではないか?
…そう考えれば、実用/無用の区分など
それこそ不要なのでは?

…まさに、その問いこそが
「実用地歴士」という架空の資格を
仮に考えてみる意義、と言えます。

つまり、「自分自身」にとって、
「使えるようなオーダーメイドの地歴」とは
いったい何なのか?

それを問題提起するような名前だと思うのです。

先に述べたように、
「都道府県の名前」やら「〇〇時代」やら、
これらの「土台となる知識」は、
多くの人にとって実用できるもの、
と考えられます。

例えば仕事上で「鹿児島県に出張する」
となった場合を思い浮かべて下さい。
「で、鹿児島県ってどこでしたっけ?」
となりますと、ちょっと困る。
出張先に対しても、失礼でしょう。

ですが、これが細かい知識になると
どうでしょう?

もし、世界中に出張する商社に
勤めていたとするならば、急に
「バルバドスに出張する」となった場合、
「で、バルバドスってどこでしたっけ?」
となると、困る。
ただ、世界各国とビジネス等はしていない
大多数の人にとっては、
バルバドスがどこだかわからなくても
何の支障にもなりません。

すなわち、実用/無用を分ける基準は
人によって違う、千差万別。

学校の教育内容で言えば、
小学~中学~高校~大学に進むにつれて
万人に必要と思われる「土台」から離れる。
言い方を変えれば、
「万人に必要と思われる知識」から
「個人的なオーダーメイド」へと変わる。

大学の授業がつまらなかった、という人は、
「そこの研究者自身のオーダーメイドの服が
自分には合わなかった」というのと
同じではないでしょうか?
逆に、大学の授業が面白かった、という人は
「そこの研究者自身のオーダーメイドの服が
自分にはぴったりだった」というのと
同じように思います。

…ちょっと「実用地歴士」から離れ、
学校における知識の話になってしまいました。
元の話に戻します。視点を変えて。

「実用地歴士」のニーズは
今後増えていくのかどうか?

私は、増えていくと思います。
なぜならば、ネットやSNSの発達により、
「他の地理」「他の歴史」を持つ人と
接する機会が増えるからです。


逆に考えましょう。
ネットやSNSが無かった時代。
人間は、狭い地域で狭い情報の下で
暮らしていました。
自分の接する範囲で情報を得られれば、
それで十分だった。
地理や歴史に関して言えば
「おらが村の地理、歴史」や
それに付随する人間関係、家族史、
そういったものを知っていれば十分。
それこそが、身に付けるべき実用地歴でした。

ところが今はどうでしょう?
日本国内だけをとっても、
自分とはまるで異なる地理や歴史を
背景に持っている人は、たくさんいます。
例えば、周りは山と川と田んぼ、
大自然の中で暮らしている人もいれば、
東京砂漠、摩天楼、大都会で
暮らしている人もいるわけです。
そういう人たちが、SNSを通して
ふつうにやり取りをしていく、
ビジネスをしていく、そんな時代です。

ましてや世界的なビジネスなら、
まるで違う地理的条件、歴史的条件、
そんなものを背負っている人たちと
接していくことになる。

バルバドスの人とSNSでやり取りした場合、
「で、バルバドスってどこでしたっけ?」
と言ってしまうと、相手は失望する。
それは「で、日本ってどこ?」と言われると
「えっ、そんなことも知らないの?」と
私たちが思うのと、同じです。
「スシとゲイシャとニンジャですよね?」と
言われると、「うん、それは偏った
ほんの一部の情報だよね」と思うのと
一緒ではないでしょうか。

繰り返しになりますが、実用地歴、
自分が「使う」オーダーメイドの地歴は、
これからますます、必要になります。

どんどん世界を広げる人にとっては。

ですが同時に必要にならない人も、いる。
既製品の地歴では「使えない」こともある。
これもまた、事実です。

最後にまとめていきます。

私は本記事で「実用地歴士」という
架空の資格を夢想することにより、
「実用」地歴とは何なのか、
書いてみました。

地歴大好きな私にとっては、
「あれもこれも使えますよ?!」と
言いたいところなのですが、
「いや、無用、不要だから」という人も
多いのだろうな、と思っているところです。
「無用とまでは言わないけれど、
至急必要、すぐ使える、そのレベルじゃない。
余裕があったら知ったほうがいいレベルの、
まあ、趣味? 娯楽? それぐらいです」
そういう人も多いのではないでしょうか。

でも私は、それでもいい、と思っています。
趣味でも娯楽でも、スタートは何でも。
それが何かしらの折に役に立てば…。

そんな思いから、
私は『イバーランドの県道』という
茨城県の市町村を擬人化した
ゲームブックを作ったり、
トランプを作ったりしてみました。
どうせなら「楽しく使える」ようにした
ほうがいいかなと
(桃太郎電鉄、桃鉄のように
楽しく地理が分かるというご感想を
いただいたりしました)。

またヘッドラインに書いておりますように、
『人事屋シリーズ』の小説を書いて
ココナラ上で閲覧用PDFを
販売したりもしております。
これは「街に生きる人事」を
地理歴史もからめて書いている作品です
(2022年5月現在、六作目執筆中ですが
四作目までは販売しております)。

ちょっと宣伝でした。
(興味のある方はリンクへ)。

最後に、読者の皆様におうかがいします。

あなたの知識や技能、キャリアをもし
「〇〇士」という架空の資格にするとしたら
(既存の資格の名前ではなく)
どんな名前になりますか?

あなたの「実用地歴」と「無用地歴」の
境目は、どうですか?
…「実用」と「無用」の境目は?

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